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小学生の義妹と先っぽチュッチュを経て、俺という人間は大きく変わった。
由奈が言うには、先っぽだけならセックスじゃないらしいので、脱童貞とはいかなかったけれど、それでも俺の変化を促すには十分すぎる体験だったのだ。
今の俺は常にやる気に満ち溢れ、テストが終わってからも勉強は継続しているし、苦手だった運動だって積極的に取り組んでいる。
どんなことでも、まずは頑張ってみることが大切なのだ────と、こんなこと、少し前の俺なら絶対に言わなかっただろう。
けど今は違う。
だって……頑張ったら由奈からご褒美に、いい子いい子してもらったり、ペロペロしたり、先っぽチュッチュしてもらえるのだから!
アレだよね、よく大人が「今のうちに勉強を頑張っておけば将来役に立つ」みたいに言うけどさ、そんな手の届かない遠い未来に餌を置かれたって、やる気なんて出るはずがないのだ。
けれど、俺の側には由奈がいる。頑張りは妹とのキモチイイ行為に直結しているのだ。約束された先っぽセックス(仮)!
英単語を一つ覚えるたびに、厄介な数式を一つ解くたびに、その努力が快楽となって自分に返ってくるのだと脳ミソにインプットされている。だから頑張れるのだ。
この素晴らしい報酬システムにより、俺のモチベーションは高止まり! もはや勉強してるだけで勃起しそうだぜぇ。
いやぁ、努力って最高だね!
俺は自分が由奈という鳥籠で飼い慣らされていることを自覚しないまま、充実した日々を過ごしていた。
そして、ある日の放課後のこと。
HRが終わり、さっさと家に帰ろうとしていた俺に、いつもあっけらかんとしている佐伯さんが珍しく神妙な面持ちで話しかけてきた。
「あのさ神山、ちょっと、お願いがあるんだけど……」
なんですと? パリピクイーンであらせられる佐伯さんが俺にいったいナニを? 掃除当番を代われとかそういう話ですか?
他の奴ならお断りするが、佐伯さんのお願いなら気前よく承諾せざるを得ないな!
けれど、その内容は俺の予想から大きく外れたものだった。
「勉強、教えてくんない?」
「俺が、佐伯さんに?」
意外すぎるお願い。いつもクラスのギャル系女子たちと遊んでる佐伯さんと勉強が結びつかなかったし、それを俺なんかに頼むということもだ。
「この前のテスト点数ヤバすぎて、お母さんがマジギレしちゃってさぁ。次もヤバかったらバイト辞めさせられそうなんだよねぇ……」
なるほど、そういう理由か、でも────。
「俺もそこまで成績いいってわけじゃないんだけど……」
いくら成績が上がったとはいっても、それは下の上だったのが中の上程度になったぐらいのもので、人に教えられる程の余裕はまだない。
クラスには俺よりも成績のいいやつなんて沢山いるし、そっちに頼んだほうが佐伯さんにとって良いのではないだろうか?
俺が疑問に感じているのを察したのか、佐伯さんは若干気まずそうに笑う。
「ほら、神山って最近、急に成績上がったっしょ? 前は私と同じぐらいだったのに」
「まあ、それなりに勉強やり始めたから」
「あたしバカだからさ、頭いい子に教えてもらっても、よくわかんないんだよねぇ。でもさ、神山ならねっ?」
それはつまり、「お前も同じバカだったんだから、バカにも上手に教えられるでしょ」ということですかねっ?
遠回しにバカにされているような気がしなくもないが、それで怒って佐伯さんのお願いを断るほど、俺はバカじゃない。
「いいけど、俺も人に勉強教えたことなんてないから、上手くできるかわかんないよ?」
「全然いいって! それじゃあ今日からお願い! どこでやろっか、やっぱ図書室? なんか頭いい人って図書室で勉強してるイメージあるもんね〜」
その発想がもう頭悪そうだとは言うまい。俺の返事を聞かずに、いそいそと教科書をカバンに突っ込む佐伯さん。ギャルは行動力高けぇなぁ……。
そんな彼女の様子を見ながら、俺は内心で滅茶苦茶動揺していた。
なんてこった! 学力ステータスを上げたら佐伯さんのイベントが発生しちゃったゾイッ!
と、いかん、興奮のあまり語尾がおかしくなってしまった。
こうして始まった佐伯さんとの勉強会。それから暫くの間、放課後は佐伯さんと図書室で過ごすのが俺の日課となった。
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放課後の図書室は利用者も少なく、壁際の四人がけの机が俺たちの指定席となっていた。
向かい合って座った俺と佐伯さんは、静かな空間でそれぞれ教科書を開き、ノートにペンを走らせている。
基本的に、まずは佐伯さんが自分で解いてみて、わからない箇所があったら質問するという形式で進めている。
俺も彼女の質問に答えられるように、ちゃんと予習しなくてはいけないので、それが理解度を深めることになり、結果的に勉強効果は上がっていた。
チラリと佐伯さんに目を向けると、彼女は難しそうな顔をして数学の教科書と睨めっこしていた。
俺が言えたことではないが、佐伯さんも勉強はかなり苦手である。
けれど自分から言い出したこともあり、彼女は途中で投げ出さずに根気よく机に向かっている。
「佐伯さん、わからないところある?」
「ん〜っ、ここなんだけどさぁ」
佐伯さんが身を乗り出して教科書のページを見せてくるが、それと同時に、彼女の無防備な胸元が視界に飛び込んできた。
第二ボタンまで開いた制服のシャツ、留める意味をなさない緩められたリボン、発育のいい胸の谷間とシャツの隙間から覗く水色のブラ。
由奈の未成熟なおっぱいとは違う、女として発育が進んでいる女子高生の胸に、おもわず目が釘付けになってしまう。
いかん、胸チラ見てるのが佐伯さんにバレたら大変だ。
俺は何食わぬ顔で教科書に視線を戻すと、真面目ぶってフムフムと頷く。
「えっと、この問題の解き方は……」
「ねぇ、神山」
「なに?」
「胸、見過ぎじゃね?」
速攻でバレとるやんけ!
「ごっ、ごごごごごゴメンッ!」
「慌てすぎだし、神山まじウケる」
てっきり怒られるかと思ったが、佐伯さんはからかうように笑うだけで、それ以上は追求しなかった。
さすがギャル。俺に胸チラ見られたところで痛くも痒くもないらしい。だったら堂々と見てもいいんじゃね? ギャルなら許してくれるんじゃね?
「いっとくけど、あんまガン見されると私も恥ずいんだからね」
「はい……すんません」
ならどうしてそんな格好するのさ!? というのは愚問なのだろう。こうして俺はテスト勉強をしながらギャルの生態を学ぶのであった。
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放課後の勉強はせいぜい二時間程度。図書室がオレンジ色の夕陽に染まる頃には閉館時間となり、俺と佐伯さんは帰り支度をする。
下駄箱で靴に履き替え、二人揃って昇降口から出る。もちろん俺には「佐伯さん、一緒に帰ろう!」なんて言う度胸はなく、それじゃあまた明日、さようなら〜。
────となるはずが。
「神山も方向おなじでしょ? 一緒に帰ろうよ」
と言って、肩をトンッとぶつけてきた。細く柔らかな感触にドキッとしてしまう。プライベートゾーンを無視するギャルの距離感すげぇ。
こうして、今では自然な流れで一緒に下校するようになっていた。
最初はギャルとの日常会話なんて何を話したらいいか全然わからなかった俺は、気まずい沈黙にならないか不安だったが、それも杞憂に終わった。
おしゃべり好きな彼女は俺が話を振るまでもなくガンガン喋りまくるし、話題の幅も広い。
「へぇ、佐伯さんもゲームとかするんだ?」
「ふつうにするよ、弟とよく○マブラやってるわ」
どうやら佐伯さんには小学生の弟がいるらしい。知らなかった。
それにしても、俺みたいな陰キャとこんなに楽しそうに会話してくれるとは、ギャルのコミュ力半端ねぇ。
そんなふうに、たわいのない会話をしながら帰り道を歩いていると、途中でコンビニの前を通りがかったとき、佐伯さんが足を止める。
「ちょっと待ってて」
「あっ、うん」
その言葉どおり、コンビニの中に入った佐伯さんは一分も経たずに戻ってきた。
「おまたせ〜」
そう言いながら、手に持っていた小さな袋を開けると、中から取り出したものを半分に折って、その片方を差し出してくる。
「えっ……くれるの?」
「勉強手伝ってくれてるお礼」
俺は受け取ったお礼とやらを呆然と見つめた。薄茶色の氷菓子が封入された容器からヒンヤリとした冷気が手に伝わってくる。
ぱっ、ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱッ……パ○コを半分こだとぉぉぉ!?
おいおいおいおい、マジかよ!? クラスメイトの女子(ギャル)とパ○コを半分こするとか、そんなリア充みたいなことを俺がしていいんですかあぁぁぁぁっ!?
おずおずと、先端部分を咥えてひと噛みすると、冷たくて甘いミルクコーヒーの風味が口の中に広がってゆく。
佐伯さんも同じように咥えながら、こっちを見てニカッと笑う。
夕陽を背にした彼女は驚くほど可愛くて、パ○コは青春の味がしたそうな。
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「それは良かったですね、お兄ちゃん」
「うんっ、これも由奈のおかげだよ」
家に帰った俺は、部屋で由奈に膝枕してもらいながら、今日の出来事を話していた。
勉強を頑張れるのも由奈のおかげだし、女の子と話せるようになったのも由奈のおかげだ。
俺が佐伯さんと上手くいくよう応援もしてくれる。由奈はなんて素晴らしい妹なのだろうか。
「それじゃあ、頑張ってるお兄ちゃんには、ご褒美をあげますね♡」
そう言って、由奈の可愛らしい唇が近づき、柔らかな感触と共に、口の中で舌をクチュクチュと絡みつかせる。
「んっ……お兄ちゃん♡」
口の中に残っていたミルクコーヒーの香りは、由奈の匂いがする甘い唾液によって塗りつぶされていた。