佐伯さんの言ったことが理解できず、挿入の寸前で俺の体はピタリと停止した。
初めて────とは?
いや、さすがにわかるよ?
これから行おうとしている行為、つまりセックスについて言ってることぐらいさ。
けど、それはおかしい。だって、セックスが初めてってことなら、つまり佐伯さんは処女ってことになってしまうんだもの。
それだと、ギャルという生き物は、もれなく全員非処女だという宇宙の法則が乱れてしまうんだが……?
しかも、クラスのギャルの中でもカーストトップにあらせられるギャルクイーンの佐伯さんだぞ?
マジか? マジなのか?
まさか佐伯さんがゔぁゔぁゔぁヴァージンだなんて!?
驚愕の新事実に混乱する俺を、佐伯さんが少しムッとした顔で見つめてくる。
「そんな意外そうな顔しなくてもいいじゃん」
「いっ、いや、意外っていうか……佐伯さんて男子にもすごく人気があるから、てっきり前の彼氏と経験済みなものかと……」
「付き合うのだって、神山が初めてだし……」
「!?」
驚愕の新事実その二である。
俺はてっきり、佐伯さんは男子と付き合うのにも慣れていて、自分は五人目ぐらいの、お手軽スナック感覚のポジションだと思っていたのに!?
経験豊富な佐伯さんの胸を借りる脱童貞のはずが、まさかの童貞くんと処女ちゃんの、嬉し恥ずかし初めての共同作業となってしまった!
さて困ったぞ、ここで俺が上手くできなかったら、きっと佐伯さんにも「やっぱドーテーはダメだわぁ、使えないわぁ、やっぱヤリチンのフレンズの方がいいわぁ」と三下り半を突きつけられてしまうかもしれない。
くそっ! そう考えたら緊張と不安でチンポが萎えそうだ!
俺はっ、俺はいったいどうすればいんだ!? 教えてくれ、由奈ぁぁっ!
予行演習にはなかった予期せぬ事態でパニックに陥った俺は、心の中で、ここにはいない小学生の義妹に助けを求めた。
そのときだ──。
『とりあえずチンコ挿れればいいんじゃないですか?』
突如として、俺の頭の中に由奈の声が響いてきた(気がした)のだ。しかも親指を立てているビジョンまで見える!(ような気がする)
これは天啓か!? それとも俺の弱い心が生み出した幻聴なのか!?
いや、どっちでもいい。佐伯さんは今、初めての行為に不安を感じて俺に処女だってことを打ち明けたんだ。
だったらここは、彼氏の俺が、ちゃんと男らしくリードしてあげなきゃいけないんじゃあないか!
義妹の励ましに背中を押された(気がする)俺は、緊張で硬くなっている佐伯さんの唇にキスをしてから、しっかりと目を見つめた。
「俺も初めてだけど、できるだけ痛くしないようにするから。大丈夫だよ、俺に任せて」
「うっ、うん……」
気合を入れた普段の五割増しイケメンボイス(当社比)で語りかけたことによって、緊張で強張っていた佐伯さんの体が緩んだの見て、俺は急いで萎えかけたマイサンを自分の手でしごいた。
うぉぉぉっ! 燃え上がれ俺の小宇宙!
高速の手コキで一気にボルテージがMAXになるチンコ。
俺はすかさず勃起した肉棒の先っぽを佐伯さんのマンコにSet!
「それじゃあ、挿れるよ?」
「手……握って」
「うん」
指を絡めてしっかりと佐伯さんの手を握り、正常位の体勢でゆっくりと腰を動かしていく。
コンドームに包まれたチンコの先端がワレメの中に潜り込むと、ぬるりと温かな感触が伝わってくると、すぐに道が狭くなって行き止まりにぶつかってしまう。
「んっ……ッ」
処女膜にペニスが触れたことで、佐伯さんが小さく呻いて眉を潜めた。
いくら濡れていても、最初はどうしても痛いのは避けられなさそうだ。
「佐伯さん、痛いと思うけど、我慢できそう?」
「うっ、ん……だいじょぶだから、このまま……」
彼女の言葉に頷き、あまり痛いのを長引かせないためにも、俺は膣口に狙いを定めると、ひと思いに腰を落として佐伯さんの膣内にチンポを挿入した。
「ひぅぅッ! ぅぅ……ッ!」
佐伯さんの悲鳴が聞こえるのと同時に、入り口を閉ざしていた膜を亀頭がブチッと破った感触。
挿入を拒んでいた膣口の抵抗がなくなり、硬く勃起したペニスが膣肉を掻き分けて、佐伯さんの膣内にずっぷりと埋没した。
「うぅっ! ふぁっ……んんッ! 神山のが……わたしの中に入ってる……っ」
佐伯さんが初めてペニスを受けいれた感覚に悶えながら、ギュッと手を握りしめる。
これが、これが佐伯さんの膣の感触なの……か?
初めて本当のセックスで味わった膣内は熱くて、柔らかい膣のヒダがうねっていて、すごく気持ちがよかった。
「あっ……佐伯さん、全部入ったよ」
「うっ、うん……えへっ、これぐらい、らくしょーだし」
目尻に涙を溜めながら微笑む佐伯さんは、本当に自分の彼女なのかと疑ってしまうぐらい可愛らしかった。
俺は佐伯さんの様子をみながら、ゆっくりと腰を動かして抽送を試みた。
そして、だんだんと膨らんでいく射精感と共に、彼女の膣内で射精した。
これも、気持ちがよかった。
射精を終えたペニスからコンドームを引き抜くと、白い精液がちゃんと出ていた。
気持ちがよかった。
それから俺たちはベッドの中で抱き合いながら、佐伯さんと初めてのセックスの感想を言い合った。
佐伯さんは凄く嬉しそうで、俺もこれで本当の恋人同士になれた気がした。
パリピフレンズ達が羨むような、佐伯さんと心と体を繋ぎ合う幸せなひととき。
なのに。
そのはずなのに。
俺は心の中でこう感じていた。
「え、こんなもんなのか───?」と。
彼女との初セックス。念願だった脱童貞。これで俺もリア充の仲間入り。やったぜわっしょい。
本当なら、そうなるはずなのに、俺の心は信じられないぐらい空虚だった。
おかしいなぁ。変だなぁ。
佐伯さんとのセックスはちゃんと気持ちよかったし、射精だって出来た。
なのに、どうして俺はこんなにも満たされない気持ちなのだろうか?
本当に気持ちよかったんだ。
そう、気持ちよかっただけだったんだ。
俺がセックスに求めていた何かが、佐伯さんとの行為では得られなかった。
親が誕生日プレンゼントを買ってくれだけど、本当に欲しかったのはこれじゃない。みたいな。
だったら、俺はいったい何を求めていたのだろうか?
隣に横たわって幸せそうな顔で俺のことを見つめている佐伯さん。俺とセックスして、そんな嬉しそうな顔をしてくれるなんて……。
俺は無性に申し訳ない気持ちになりながら、それを佐伯さんに悟られないよう、作り笑顔を浮かべながら彼女を抱きしめた。
それからのことはあまり覚えていない。
夕方になった頃に佐伯さんが帰って、俺は家でひとり、ぼんやりと過ごしていた。
しばらくして、友達の家から帰ってきた由奈を玄関で出迎えた。
「おかえり。由奈」
「ただいまです。お兄ちゃん」
髪をポニーテルに結え、可愛いワンピースを着た由奈の姿を見た途端、無性に抱きつきたくなった。
「凛花さんはもう帰ったんですか?」
「うん。ああ、そういえばさ、佐伯さんとセックスしたよ。上手くできた。由奈のおかげだよ」
「そですか、よかったですね」
「うん」
綾乃さんの帰りは夜遅くなると言っていた。それまでは、この家で俺と由奈はふたりきりだ。
俺は我慢できずに、靴を脱いで上がった由奈に抱きついた。
そして、小さな胸に顔を押し付けて、由奈の甘い匂いを鼻いっぱいに吸い込んだ。
いきなりこんなことをしても、由奈は小さな手で俺の頭を抱きしめて、優しくなでなでしてくれる。
「由奈……セックスしよ」
「凛花さんとしたんじゃないんですか?」
「したけど、由奈ともしたい……」
「兄妹はセックスしちゃダメなんですよ?」
「それでも……由奈としたい」
「ふぅ、やれやです。お兄ちゃんはしょうがないですね」
「うん……」
「お部屋に行きましょうか」
そして俺は、小学生の妹に手を引かれながら、自室へ向かうのだった。