蛍光灯の白い光が差し込み目が眩む。
ぼんやりとした視界が徐々に慣れ、部屋の中がはっきりと見えるようになったとき、私はその光景に言葉を失った。
部屋の中にはタカくんと由奈が居た。
二人が仲良くゲームでもしていたのなら早く寝るように注意して、私も寝室に戻り、何事もなく一日を終えることができただろう。
けれど、そうはならなかった。
床の上にはズボンとパンツが無造作に脱ぎ捨てられており、ベッドの上に寝そべっているタカくんは下半身を露出していた。
股間にそそり立つ勃起したペニスの姿に私は思わず息を呑んだ。
内気な性格の彼には似つかわしくない太く逞しい肉棒は漲る性欲によって竿の周りに太い血管を浮き立たせている。
若い性を主張するように反り返った性器は、年齢的にも性欲の落ち着いた夫のモノとは違う、女を悦ばせる形をしていた。
そして、あろうことか、由奈はベッドの上で寄り添うように体を密着させながら、自らの指を兄のペニスに這わせていたのだ。
「お兄ちゃん、キモチイイですか?」
「うっ、うんっ……すごく、キモチイイよ……うぅ……ッ」
ペニスを愛撫されたタカくんは恍惚とした呻きをあげながら、小学生の妹から与えられる快楽を享受していた。
まさか、二人が私に隠れてこんなことをしていたなんて……。
これは母親である自分の責任だ。タカくんが年頃の男子だということをよく考えもせず、二人が一緒にお風呂に入ったりするのを楽観的に捉えていたのがいけなかったのだ。
それでも、まさか自分の子供たちがこんなことをしていたなんて……。
私はあまりのショックで、すぐさま止めに入る事が出来なかった。それに、この事を主人が知ってしまったら、この家庭は壊れてしまうかもしれない。そんな弱気な考えが、私をその場に留まらせた。
そうこうしている間にも、由奈の細い指は膨らんだペニスの付け根から先端を何度も往復し、刺激を受けたペニスは鈴口から透明な汁をトロトロと垂れ流す。
カウパーの絡みついた指が肉棒を擦るたびに、ぬちゅり、ぬちゅりと卑猥な音を立て、いっそう気持ちよさそうに呻き声を漏らすタカくんの顔を由奈はうっとりとした眼差しで見つめていた。そして、由奈はペニスをシゴいていた手を止めると、おもむろにパジャマのボタンを外し、露わになった年相応のなだらかな胸をタカくんの顔に近づけた。
「ほぉら、お兄ちゃん。おっぱいですよぉ」
それはまるで母親が赤ん坊に授乳するように。タカくんは乳房と呼ぶには幼すぎる膨らみに口をつけると、中央にツンと突き出すピンク色の乳首を唇で咥え、チュパチュパと音を立ててしゃぶり始めた。
母乳など出るはずもない小学生の妹の胸を赤ちゃんのように吸う兄の姿は、二人の体格差も相まってあまりにも異常な光景だった。
「んぅっ……ぁっ♡ お兄ちゃん、じょうずぶにおしゃぶりできて、いいこいいこ♡」
由奈はタカくんにおっぱいを吸わせながら、勃起しながらカウパーを垂れ流すペニスを握って上下に擦る。
ぬちゅっ、にちゅっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ。
滑りの良くなったペニスから伝わる摩擦の快感にタカくんは体をビクンッと震わせる。
「あっ、ぁあぁっ! ゆなっ、そんなにしたら……」
「んふっ、好きなときにピュピュッしていいですからねぇ」
由奈は情けない声を出すタカくんに慈愛の眼差しを向けると、その手をさらに早く動かした。
「ほぉら、おっぱいチュウチュウしながら、おちんちんシコシコされるのキモチイイねぇ」
「ぅぁっ、ぁっ、ぁあっぁっっ! ああァッ!!」
びゅるっ! どびゅっ! びゅるるっ! びゅくっ! びゅるるっ!
遠慮のない手淫の快楽に翻弄されるタカくんが、湧き起こる射精感を我慢できずに激しく腰を震わせた瞬間、限界まで膨らんだペニスの先端からドロドロの精液が勢いよく吹き出した。
大量の白濁液で妹の手を汚しながら、タカくんは快感に震えながら射精を続け、その間も由奈はペニスをシゴいて兄の射精を促す。
「じょうずにピュッピュできましたねぇ♡ お兄ちゃんイイコイイコ♡」
尿道に残った精液を絞り出しながら、由奈はうっとりとした顔でタカくんの頬をにキスをした。
子供たちの倒錯した行為の一部始終を目の当たりにした私は、部屋に充満した精液の青臭い匂いが鼻腔に入り込むのを感じながら、ただ呆然とすることしかできなかった。
ああ……いったい、どうしてこんなことに……。
私に見られていることに気づかないまま、由奈がティッシュを使って精液の後始末をする。
射精したことで倦怠感に襲われたのだろう、タカくんが眠そうにノロノロとベッドの中に潜り込むと、由奈もそれに続いてから、リモコンによって部屋の照明が消された。
部屋の明かりが消え、暗闇に包まれた廊下に取り残された私は、母親として子供たちの過ちに気付けなかった後悔に打ちひしがれながらも、それとは別に、胸の内に言い知れないモヤが渦巻いているのを感じていた。
しばらく経っても部屋の中から物音一つしない。どうやら二人は本当に眠ったようだ。
今夜はこれ以上の過ちは起こらないだろうと安堵し、私は足音を忍ばせて寝室へと戻ったのだった。
*
次の日、私は昨夜の出来事を夫に相談しなかった。事を荒立てて家庭が崩壊するような事態は避けたかったのだ。
母親として自分だけで解決するべく、私は由奈が居ないときを見計らってタカくんの部屋をノックした。
中から返事が聞こえてドアを開けると、タカくんは教科書やノートが広げられた机に向かって座っていた。勉強中かと思ったが、手に持ったスマホを見るぶんに、あまり捗ってはいないようだ。
タカくんは私が部屋を訪ねてきた理由がわからず不思議そうにしていたが、私の神妙な面持ちから不穏な気配を察したのか、すぐに表情を引き締めた。
母親であれば、小学生の妹とあのような汚らわしい行為をしたことについて厳しく叱咤すべきなのだろう。
けれど、どうしてか私はタカくんに対して嫌悪や失望といった感情は抱いていなかった。
私にとってタカくんも由奈と同じ大切な子供、大人が正しく諭してあげればきっと理解してくれると信じていた。
けれど、どうやって話を切り出すべきか。
私はベッドに腰掛けると、タカくんも隣に座るよう促した。
おずおずと隣に座ったタカくんに向かって、「最近、なにか困っていることはないかしら?」と尋ねる。
どうしてそんなことを聞かれるのか理解できないようだが、「たとえば、由奈との関係とか……」と、仄かすと目に見えて落ち着きがなくなり、昨夜の出来事を目撃したと告げた瞬間、タカくんの顔色は真っ青になった。
きっと彼にも悪いことをしているという自覚はあったのだろう。根が臆病なタカくんは、もはや私と目を合わせることもできず、俯いて震えていた。
「ごっ、ごめっ、ごめんなさいっ……おれっ、おれっ……」
その怯えようは問い詰めるのが可哀想に思えてしまうほどで、私は宥めるように優しく背中をさすった。
「落ち着いてタカくん。怒っているわけじゃないの、ただちょっとお話を聞かせてほしいの」
「あっ、あのっ、これっ、このこと、父さんは……っ」
「お父さんには秘密にしているわ。大丈夫だから、ね?」
そうして宥めているとタカくんもどうにか落ち着きを取り戻し、「どうしてあんなことをしてしまったの?」という私の質問にぽつりぽつりと答えてくれた。
聞けば驚くことに、先に誘うような真似をしたのは由奈からだったらしい。
最初は小学生の女の子を相手に、あんなことをするのはおかしいと思っていたけど、自分のことを肯定してくれて、好きなだけ甘えさえてくれて、エッチなこともしてくれる、そんな妹の甘やかしに依存していたのだと。
小学生の娘が高校生の兄を誘惑しただなんて、にわかには信じられない。けれど、タカくんが嘘をついてるようには見えなかった。
つまりこれは、娘の早熟すぎる母性が彼を惑わしてしまったということ。由奈……自分の娘ながら、なんて、おそろしい子。
もちろん由奈にだけ問題があった訳ではない。タカくんにしても、母親が不在の幼少期を過ごした弊害というべきか、母親に甘えたいという抑圧された願望を秘めていたのではないだろうか。
二人の相性が良すぎた、いえ、悪すぎた結果、このような結果になってしまったのだろう。
けれど、だからと言って小学生の妹との不健全な行いを許してはいけない。それを止めるのは彼の母親となった私の役目だ。
「でもね、タカくん。小学生の妹に甘えるなんて、それも、性的な行為まで……もしもお父さんがこのことを知ったら、きっとショックを受けてしまうわ」
「はっ、はい……ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい……」
「ええ、だからね、もうしないって約束してくれたら、このことは内緒にしておくわ、私とタカくんの秘密」
タカくんは臆病者だ。ここでしっかりと言い含めておけば、もう二度と由奈に手を出すことはないだろう。
「しっ、しません、絶対、もう二度と、だから……っ」
助けを求めて必死に懇願するタカくんの姿はとても哀れで、弱々しく、世話をしてあげないとすぐに死んでしまう小動物のようで。
あぁ……タカくん、この子は母親である私がちゃんと守ってあげないと……。
みっともなく縋り付く息子の姿を見て、私の胸の中で何かが疼いた。心の中に押し込めていた感情が膨れ上がるのを感じる。
「そっ、そうね……でも、高校生の男の子って、その……性欲がとても強いでしょう?」
「えっ、ぁっ……そのっ」
「いいのよ、年頃なんだもの、仕方がないことだわ。でもね、それが娘に向けられたらって考えると、母親としては、やっぱり不安になってしまうの」
「はい……そうですよね……」
私に信用されてないと思ったのだろう、落ち込んで頭を垂れるタカくん。あぁ……可愛い。
「だから……ね?」
私はおもむろにタカくんの手に自分の手を重ねると、少しゴツゴツとした男の子らしい指に自らの指を絡めた。
「えっ、あのっ……」
「どうしても我慢できなかったら……ママがなんとかしてあげる」
息子の手の温もりを感じながら、私は自分の中に渦巻いていたモヤの正体に気づいた。
そう、私は娘に嫉妬していたのね────と。
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