獣人母娘がマーサに指導を受けている間、シーズは書斎で執務を行っていた。
ちょうど一段落したところで、椅子に座りながら凝った肩を伸ばしていると、書斎の重厚な扉からノック音が響いた。
シーズが返事をすると、静かに開かれた扉からアルテラが入ってきたのだが、その姿に思わず目を見開いてしまう。
アルテラの服装がメイド服に着替えられていたのだ。
ふわりと膨らんだスリーブのワンピースは胸元が大きく開かれて、アルテラの豊満な乳房が作る谷間がしっかりと見えており、脚にはロングスカートを揺らめかせ、レースのあしらわれた純白のエプロンとカチューシャが清楚な彼女の雰囲気にぴったりと合っていた。
体のラインにぴったりと合ったメイド服によって、アルテラの見事なスタイルが強調されいる。
「旦那様、お茶をお持ちしました」
アルテラの持つ銀のトレイには白磁のティーセットが載せられており、彼女は手馴れた様子でカップに紅茶を注ぐ。
しかしシーズは、温かい湯気と一緒に茶葉の香りが立ちのぼらせる紅茶よりも、目の前に立つメイド姿のアルテラに目が釘付けにされていた。
心そこにあらずといった様子で、彼はカップの取っ手に指を掛け、紅茶を一口飲み込む。
「いかがでしょうか、旦那様」
「ちょっと胸元が見えすぎじゃないかな、いや、すごく似合ってるとは思うんだけどさ」
「いえっ、紅茶のお味についてなんですが……」
「んぐっ!?」
アルテラのメイド服姿に釘付けで紅茶を味わうどころではなかったシーズは、はずみで熱い紅茶を飲み込んでしまいむせ返る。
「ごほっ、あっ、ああ、紅茶ね──うん、凄く美味しいよ?」
彼女のメイド服には驚かされたが、それとは別にシーズの心を大きく揺さぶった要因がもう一つある。
そう「旦那様」だ。
アルテラがメイドになったことで、シーズは彼女の「旦那様」になったのだ。
(旦那様……いいじゃないか……)
思えばこの屋敷でシーズが呼ばれるとき、ドイル老には「若」と呼ばれ、マーサなんか未だに「坊ちゃん」である。いい加減に恥ずかしいからやめてくれと何度も頼んでいるのに、老婆は呼び方を変えてくれないのだ。
そんな彼が、淑やかさと妖艶な色香を併せ持つアルテラから「旦那様」と呼ばれた日には、自尊心がくすぐられてしまうのも無理ないだろう。
そしてアルテラは今、旦那様に奉仕するための衣装を身にまとっているのだ。若い男がこんな扇情的な格好をしたメイドを前にすれば、いったいどんなご奉仕をしてもらえるのかと期待に胸が膨らんでしまうのも仕方がない。
「ところで──そんなメイド服、うちにあったかな?」
「ええ、マーサさんが若い頃に着ていたものを譲っていただいて、少し手直しをしましたの」
「ブッ!?」
思わず紅茶を吹き出しそうになる。
(あの堅物が若い頃はこんなメイド服を着ていたとは──)
若かりし頃のマーサを想像しようとしたが、脳が拒絶して無理だった。
「旦那様はメイド服がお好きなのですか?」
「えッ!?」
そんなことはシーズの反応を見れば一目瞭然なのだが、実のところ彼は今までメイド服にそこまで興味を持ってなかった。
なぜなら、シーズの中では”メイド=マーサ”だったのだから、メイド服に欲情するはずがない。
アルテラがメイド服を着たことで、シーズは今この瞬間、新たな性癖に目覚めたのだ。
超局所的な文明開化である。
実際、この国でメイド服を着た獣人の美女など、どこを探しても見つからないだろう。
けれど、好きかと聞かれて素直に答えるのは、なんだか自分の弱点を晒してしまいような気がして、シーズは無駄な虚勢を張ってしまう。
「いや、ちょっと気になったというか……ほら、君の尻尾とかさ、こちらの衣服だと不都合があるのではないかなと」
「まあっ、旦那様は私の尻尾が、気になるのですか?」
「まあ……そうだね」
シーズが文字通りお茶お濁すかのごとく、紅茶にミルクを注いでかき混ぜていると、アルテラはそっと彼に顔を寄せ、密やかに唇を動かす。
「でしたら……ご覧になりますか……?」
「んんッ!?」
秘め事のような甘いささやき。
彼女の濡れた吐息が頬にかかり、彼の手元で揺れたカップから紅茶が零れそうになる。
それは一体どういうことか。つまり彼女は、尻尾と一緒に乙女の秘密を隠しているスカートの内側を見せてくれるとでもいうのか。
昨夜は彼女の艶やかな半裸を見てしまったものの、シーズにとって女性のスカートの中は未だに秘密の花園だ。
けれど、主人であるのをいいことに、横暴すぎる振る舞いをするのは気が引ける。
「遠慮なさることなんてありませんわ、だってあなたは、私の旦那様……なのですから」
そんなシーズの迷いを察したようにアルテラは、欲望を後押しするように囁きかける。
耳にかかる吐息と甘い芳香により、良識はあっさりと溶けてしまった。
「じゃっ、じゃあ……その、見せてくれ……アルテラ」
命令することに慣れていないシーズは、気恥ずかしそうにお願いするのだが、アルテラは首を横に振った。
「違いますわ、旦那様」
「ええっ?」
「あなた様は私の主人なのですから、もっと尊大に命令なさってください」
「えぇっ……あーっと、見せろ?」
「なにを、でございますか?」
まだ気後れしているシーズに向かって、アルテラは挑発的な笑みを向ける。
あなたは気が小さいのねっ、と小馬鹿されたようでムッとしたシーズは腹を据え鋭い目でアルテラを見つめる。
「アルテラ、スカートを捲り上げて、お前のいやらしい尻を俺に見せろ」
「ふふっ、かしこまりました……旦那様」
シーズの命令に従って、アルテラはくるりとシーズに背を向けると、ヒップを少し突き出すようにしながら、両手でスカートの裾を摘み上げる。
まるで、暗い舞台のショータイムを予感させるように、スカートの裾がゆっくりと引き上げられ、隠れていた綺麗な脚が徐々に露わとなってゆく。
卑猥な命令によって、美女が淫らな姿を晒していく姿を見ながら、シーズは昨夜のことを思いだす。
自分の快楽のために女を無理やり服従させる背徳感。あの時と同様にシーズの胸は湧き上がる支配欲に高鳴りを感じていた。
ストッキングに包まれた彼女の美しい脚の、まあるいふくらはぎが姿を見せると、膝の後ろに位置する窪みを経て、しなやかだがムチッとした太ももがいやらしく伸びる。
フサフサとした獣の尻尾は、ふくらはぎの辺りでシーズを誘うように左右へ揺れ動いているが、まだ付け根には遠い。
「まだ見えないぞ。もっと捲りあげろ」
「あんっ……恥ずかしい……これで……いかがしょう」
そう言いながら、アルテラがさらにスカートを引き上げると、太ももの上から張りのある大きな尻が、いやらしい丸みを帯びて姿を現した。
そして尻の谷間では、レースのついた純白のショーツが、彼女の秘部を頼りなく隠しているのを目撃する。
「いまさら、なにを恥ずかしがる……こんなエロ尻をして!」
こんもりとショーツを盛り上げている恥丘を目の前にして、シーズは我慢できずにアルテラの桃尻に手を伸ばした。
「あっ……んっ! いやぁっ……いけませんわ旦那様ぁ……」
彼が尻肉を両手で鷲掴みにすると、柔らかい弾力を感じさせながら、握った指の隙間からはみ出すように形をプニプニと形を変える。
腰の細さに反して大きな雌尻を、誘うように突き出されては、盛りのついた青年が我慢できるわけもなく。
シーズはショーツの上から彼女の秘部を指で触れると、布越しだが、ふにゃっとした柔らかさを感じる。
「あぁっ、旦那様ぁ……そこは、違いますわ……」
「なんだ、ここがそんなにイイのか?」
アルテラの小さな悲鳴が彼の情欲をさらに煽る。
ただの横暴プレイのはずが次第に調子にのり始めたシーズは、表面を擦るように撫でていた指をくいっと曲げると、シーズの指先はショーツの布地を押し込み、その先にある秘裂の窪みに沈み込んだ。
薄布に邪魔されるせいで、浅いところで止まってしまうが、湿った恥部の入り口にショーツが張り付き、膣口のスジがうっすらと浮き上がった。
「湿ってきたぞアルテラ、お前はなんていやらしい女なんだっ」
「んぅっ、もっ、申し訳ありません……旦那様ぁ……あっああっ……!」
割れ目を隠そうとするように、大陰唇がプニッと盛り上がっているのがわかる。
──アルテラのヴァギナが薄布一枚隔てた指先にある。
そう考えると、シーズは興奮して指の動きが早くなる。
「うっ……ふぅっ、あっ……んんっ!」
堪えるようなアルテラの喘ぎ声が聞こえてくる。
「んっ……んぁっ!!」
シーズがぎこちなくも彼女の恥部を刺激していると、割れ目の上のあたりに指が引っかかったとき、アルテラの体がビクンッと大きく震えた。
クリトリスに指が当たったのだ。
「あぁっ、旦那様、そこは……あぅっ! んんっ……!」
シーズは探るようにアルテラの肉芽を指の腹で擦る。
「アっ、んっ……アァッ、ひぅっ……!」
軽く触れているだけなのに、アルテラは悶えながら大きく腰をくねらせる。
彼女の感じるポイントがわかり、シーズが執拗にクリトリスを刺激していくと、彼女のショーツに愛液の染みが滲む。
アルテラの乱れる様子を見せられ、布越しで触るだけでは我慢できなくなったシーズは彼女を後ろから抱きかかえると、前に回した手をショーツの中に潜りこませた。