ベッドの上を四つん這いでにじり寄ってくるクレア。香水を付けているのだろう、ほのかに甘い香りが鼻をくすぐった。
「こんなサービスがあるなんて、聞いてなかったな」
「ふふっ、お兄さんは特別よ」
アルテラのような絶世の美女とは比べられないが、クレアも町娘としては十分に可愛い部類に入るだろう。
可愛い女の子そう言われたらシーズも悪い気はしない。
やはり隠しきれない貴族としての気品が彼女を惹きつけたのだろうか――などと思い上がってしまう。
「つまり、俺に惚れたと?」
「ううん、お金持ってそうだったから」
「……なるほど」
一瞬芽生えそうになった自尊心は簡単にへし折られた。
「もしかして、女将さんに言われた?」
金の匂いには鼻がよく利きそうな女将の顔を思い出し、母親の指示で部屋に来たのかと勘ぐったのだが、クレアはすぐに首振った。
「ちがうわ、これはお母さんにも内緒だもの」
どうやらこれはクレア個人の意思によるものらしい。
「なぁに? お説教はいやよ」
「いや、意外だったからちょっと驚いた。君にもなにか事情があるんだろ?」
問われてクレアは少し考えるそぶりをしてから、またニコッと笑った。
「私を買ってくれたら教えてあげる」
事情を詮索するつもりもなかったが、しばらく屋敷を離れていたせいでアルテラとはご無沙汰になっているし、だいぶ性欲が溜まっているのも事実。
シーズは返事の代わりにクレアの細い腰を抱き寄せ、それと同時に張りのある丸いお尻にも触れた。
「やんっ、お兄さんのエッチ……」
口ではそう言ってるけれど、クレアは積極的にシーズの首に手を回してくる。
クレアの身体を抱きしめると、全体的にほっそりとした体つきで、アルテラのような豊満な柔からさはないものの、触れた肌からは若く瑞々しい弾力を感じる。
(体の感触ってのは全然違うもんだな)
シーズは薄い肌着の上から、胸の膨らみに手を伸ばす。
まだまだ発展途上な、手に収まる小ぶりな乳房を優しく撫でると、クレアの鼻からかすかに息が漏れた。
「ぁっ……んっ……っ……」
感じている声を出すのが恥ずかしいのだろう、瞼をキュッとつむる様子は可愛らしかった。
おっぱいの周辺を撫でながら乳首を指先で引っ掻くように擦るたび、クレアは小さく悶える。
相手が感じているのを確かめながら、小さなお尻をさわさわと撫で、今度はその手を太腿の内側に潜らせる。
ショーツで隠れた股の中心、ふっくらと盛り上がっている恥丘に指を這わせて軽く指を押し付けると、布地ごと指が秘裂に沈みこむ。
「ぁっ……! あぁっ……ぅっ……お兄さんの触り方……イヤラしいわ……」
「そうか?」
「慣れてる感じがする……」
つい最近まで童貞だったシーズなのだが、あの獣耳の美女と淫らな行為を繰り返すうちに、どうやら女体の触り方というもの会得していたらしい。
いつもベッドの上ではアルテラの熟練された手管によって主導権を握られっぱなしだが、どうやらクレアは男と寝るのにそこまで慣れてないように見える。
てっきり頻繁にこういう事をやってるのかと思ったのだが、下着姿で誘惑するような仕草からは、頑張って色気を出そうとしてる幼さのようなものを感じるし、触れているときは身をこわばらせて、ただ身を任せているだけだ。
これがアルテラであれば、感じてる仕草ひとつ、喘ぎ声ひとつでシーズを興奮させてしまうだろう。
おそらくクレアも身体を売って稼ぐというよりは「ちょっと良さそうな男を見つけたから一緒に寝てお小遣いも貰っちゃおう」といった軽い気持ちなのだとシーズは予想した。
(うん……こういうのも悪くないな!)
ふつうの町娘を相手にしているようで、アルテラを抱き続けていたシーズには逆にそれが新鮮味を感じさせた。
指の腹を使ってショーツの上から恥丘を念入りに弄っていると、やがて湿り気を帯びているのに気づき、腰の横で結ばれたショーツの紐を解いて、するりと股から抜き取った。
「ぁっ……」
見れば、ねっとりとした愛液が、外気に晒された恥部から透明な糸を伸ばしている。
シーズは指に蜜を絡めながら秘裂の中を浅く搔き回す。
「ぁっ……んっ……ぁっ、あぁっ……!」
じわじわと襲ってくる快感に、クレアは目を閉じて身体を震わせる。
指は秘裂を刺激しながら、乳房の突起に舌を這わせてチロチロと舐めると、クレアは大きく身をよじる。
「んんっ、お兄さん……そんなにしたら……わたし……あぁっ、ぅぅっ、んぅっ……!」
構わず指を動かしながら、伸ばした舌は胸を這うように登ってゆく。首筋をなぞった後は、吐息を漏らす唇の隙間から舌を口内とへ潜り込ませる。
「んっ、むっ……らめっ、おにいひゃん、きすはぁ……らめぇなのぉ……んっ、じゅっ、ちゅぷ……ぇっ、れろっ……んんっ」
ダメと言われたら無性にやりたくなるのが男の性。本気で嫌がっているようなら止めるつもりだが、クレアの抵抗がそこまで強くないことを見てシーズは無理やり舌をねじ込み、口内で縮こまっていたクレアの舌を絡め取った。
「ちゅぶっ、んっ、れろっ、ちゅぷっ、んんっ、あむぅっ……んっ、んむっ……ちゅぷっ……れぇっ……」
唾液を絡ませ合いながら口内を蹂躙されていくうち、クレアも積極的に舌を絡みつかせてくる。
「んっ、ふっ、れろっ、んっ……ちゅぷっ……ちゅっ……んぅ……」
くちゅくちゅと粘液の絡む音を響かせながら、クレアはうっとりとした瞳で淫交に浸っていた。
シーズは手早くズボンを脱ぐと、口付をしながら滾る肉棒を愛液で濡れた膣口へと押しあて一気に奥へねじ込んだ。
「あぁァッ! ひぁっ、あっ、あぅっ……んううっッ!!」
膣の奥を目指して潜り込んだ亀頭が子宮口に当たる。そこが行き止まりとわかると、休む間も無くシーズは腰を振って肉棒を抽送する。
「んぅっ! んっ、あっ……んぶっ、んっ! あぁっ、まっ、まってぇお兄さん……そんな、奥コンコンしちゃだめぇっ……! んっ、んぶっ、ちゅっ、んちゅっ」
悲鳴を上げるクレアの口を塞ぎながら、シーズはさらに激しく腰を打ちつける。
男慣れしていない膣壁が中に入ってきた肉棒をぎゅっと締め付けてくる。
アルテラの肉ヒダが絡みついてくる膣とは違う気持ちの良さだ。
「んんっ、んふぅっ! んぶっ、ちゅぶっ……んうぅっ、んっ……! ふぅぅっ!!」
パチュツパチュッと愛蜜を飛び散らせ、呼吸もするのもままらない程に口内を犯されながら膣肉を掻き分けられるクレアは、身動きできず堪えるようにシーズの腰を脚で挟むが、それが余計に密着を高め深い部分で繋がってしまう。
「んんっ! んっ、うぅ! あっ! あぁっ! んぁっ! んぅっ、んンンッ!!」
子宮口を亀頭で責められる快感に嬌声を止めることができず、クレアはベッドのシーツをぎゅっと掴みながら肉棒の快楽を受け止める。
シーズは吸い付いていた口を離してクレアの耳元に口を寄せる。
「そろそろ、出そうだっ」
「あっ、んっ! ぁっ……お兄さん……膣内には……出さないでね……」
クレアの言葉にシーズは頷き、最後の踏ん張りと激しく腰を振る。
「あぁっ! ひっ、んっ、んんっ! あぁっ! いっ、いちゃうっ、お兄さんっ! もうっ、だめっ、わたしぃっ……!」
「ああっ、俺も……いくっ! ぐううぅっ!」
シーズが肉棒を引き抜くとと同時に、腰を浮かせたクレアの恥部から暖かな飛沫が飛び散り、亀頭から勢いよく放出された精液が少女のお腹を白く汚した。
「あぁっ……んっ、はっ、ふっ……はぁっ……ふぅっ……」
クレアは腹部に熱を感じながら、白いお腹の上にドロリと広がる粘ついた精液を指先でいじりながら、乱れた呼吸を繰り返す。
「はぁっ……お兄さん、優しそうな顔してるのに凄く激しくて、びっくりしちゃった……」
「すまん、乱暴だったか?」
クレアはお腹に付着した精液をふき取ると、シーズに身を寄せてくる。
「ううん、気持ちよかったからいいわ」
どうやらクレアも満足してくれたようだ。シーズはそんな彼女の顔をみながら、ふと思い出したことを口にする。
「そういえば、いくら払えばいい?」
そう尋ねるシーズに、クレアはむすっとした顔で脇腹を小突く。
「いてっ、なんだ?」
「もうっ、お兄さんてエッチは上手だけど、女の子の気持ちはわからないのね」
「ぐっ……」
心に突き刺さる一言だった。
なにを間違えたか分かっていないシーズは、むくれてベッドに横たわるクレアを抱きしめながら、少女の長い金髪を指で優しく梳いていく。
やがて機嫌を直したクレアが振り返ってシーズの顔を覗き込む。
「お兄さん、恋人はいるの?」
「やっぱり惚れた?」
「ううん、聞いただけ」
「――恋人、は居ないな」
「好きな人は?」
そう聞かれて、シーズの頭に真っ先に浮かんだのはアルテラの顔だった。しかし、間違いなく彼女のことは好きなのだが、それは果たして恋や愛と呼べるものなのだろうか。
「いるんだ?」
「いや……よくわからん」
「女の子どころか、自分の気持ちもわからないなんて、お兄さん、きっと苦労するわ」
クレアは悪戯っぽく笑いながら、しかめ面になったシーズの頬を指先でつつく。
どうにもアルテラとは勝手が違いすぎると思いながらも、ふと、この娘に自分の名前を教えていなかったことに気づいた。
「そういえば、俺の名前……」
「聞きたくない」
「えぇ……」
「わかるのよ私、お兄さんはこの町を通り過ぎる人だもの。きっと、もうこの宿にも来ないわ」
「…………」
またいつかこの町に立ち寄る機会はあるだろう。会いに来ることだってできる。
そう言い返そうとしたシーズだったけれど、何故か言葉にはならなかった。
きっと、この少女の言う通りだからだろう。
二人の関係は、たまたま交わっただけの縁なのだ。
「お兄さんが思ってるより、女の子は色々考えてるんだから。ちゃんと気づいてあげなきゃダメよ」
そうしてクレアは反論できずにいるシーズの頬を突き始める。
少女は通りすがりの傍道に咲く野花だった。
そして二度と会うこともなかった。
けれど、この夜から時間が経ってなお、その悪戯な笑みは、シーズの心の片隅で小さく咲き続けることとなった。