あれ以来、アルテラは前にも増して性を求めてくるようになった。
シーズもまた彼女の肉体を求め、そして求められ、肉欲だけがとどまる所を知らない。
日夜繰り返される情熱的なまぐわいにより、寝室のベッドには彼女の匂いが染み付いている。
(まるで蜜に溺れた蟻のようだ……)
淫蕩に耽る己を自嘲しながらも、アルテラを前にすれば色欲を抑えることができるはずもなく――。
(いや、べつに嫌なわけじゃないんだが……)
流石にヤりすぎて脳みそが発酵しそうだと、若干の危機感を覚える。
まとわりつく煩悩を退散させるために清涼な風に吹かれようと、中庭で蝶々を追いかけて楽しそうに走り回っているミリアを、シーズは座りながらぼんやりと眺めていた。
ひらひらと飛んできた蝶が、微動だにしないシーズの頭に止まって羽を休める。
「だんな様ぁ、どうしたんですか?」
主人の様子がおかしいことに気づいたミリアが近づくと、蝶は彼の頭からフワリと飛び去った。
「色々あってなぁ」
きみのお母さんとセックスしすぎてアホになりそうだ――とは、とても言えない。
ぼけーっとするシーズの頭を、ミリアの小さい手がよしよしと撫でる。
「げんきだしてください、だんな様ぁ」
少女の無邪気さが今のシーズには心地よかった。
「うん、なんだか元気が出てきたぞ」
「ほんとぉ?」
ミリアはシーズにしがみつくと、両手を使って体を撫で回す。幼いなりに主人のことを考えてくれているようだ。
(癒されるなぁ)
シーズはミリアを膝の上に抱き上げながら、ふわふわの毛並みをした獣耳に頬ずりをする。
外で遊んでいたミリアの獣耳は暖かく、ひだまりの匂いがした。
幼女の安らぎを堪能していると、不意にミリアの身体が持ち上がり、シーズの手から離れてゆく。
「だめよぉミリアちゃん、そんな発情期男に近づいたら危ないからねぇ」
後ろからミリアを抱き上げたマリーレイアが、蔑むような瞳でシーズを見下す。
「幼女にまで手をだすとは、とんだ変態領主様だな」
「いや違うから! というかキミが言えたことじゃないよな?」
いちどは性行為をした仲になっても、マリーレイアの彼に対する態度はなにも変わらない。
マリーレイアとは初めて身体を重ねて以降、全くその手の行為はしていない。キスはおろか、手をつなぐなんてこともない。
彼女のそっけない態度はもしや照れ隠しなのではと前向きに考えてみたけれど、どうにも自信がもてない。
乙女が酔った勢いだけで純潔を捨てるなんて考え難いが、「けど、マリーレイアだし」と思うと納得してしまいそうになる。
若き領主様にとって、女心は領の統治よりも難題である。
シーズはおもむろにマリーレイアへ手を伸ばすと、ドレスの胸元を持ちげている形の良いおっぱいを一揉みした。
アルテラのおっぱいが全てを包み込む母性だとすれば、マリーレイアのおっぱいは熟す手前の瑞々しい乙女のそれである。
シーズがマリーレイアの食べごろな果実を堪能していると、遠慮のない彼女の手に頭を思いきり叩かれた。
「いてっ!?」
マリーレイアからは冷酷な瞳が向けられている。
「なぁシーズ、おまえは、セックスした女ならいつでもおっぱい触り放題だぜ! とか思ってるバカ野郎なのか?」
「いや、そんなまさか……」
内心では”ちょっと思っていた”ことがバレないように乾いた笑みを浮かべる。
どうやらアルテラの寛容さに慣れてしまったせいで、彼の性に対する感覚はどこかおかしくなっていたらしい。
「ロクな恋愛経験もないくせに、セックスだけで女をわかった気になってる勘違い野郎はタチが悪いなぁ」
「はい、勘違い野郎ですみません……」
おまえこそ恋愛したことがあるのかと言い返したくなったシーズだが、余計な痛手を負いそうなのでやめておいた。
「だんな様はおムネが好きなんですかぁ? ミリアのも触っていいよぉ?」
そう言って、ミリアは胸を反らすけれど、未熟すぎる膨らみは無いも同然であった。
「いや、そういうことは、まだミリアには早いかなぁ……」
シーズの言葉に、ミリアはしょんぼりしてしまう。
「そっかぁ、ミリアのおムネは小さいから……」
「いや、胸の話ではなくて」
隣で聞いていたマリーレイアがシーズの耳元に顔を近づける。
「おいっ、ミリアちゃんが悲しんでるだろっ、フォローしてあげろ」
「えぇ……」
マリーレイアに怒られて、シーズは慰めるようにミリアの頭を優しく撫でる。
「そういうことは、ミリアが大人になったときに、好きな人とすることなんだよ。わかるかい?」
「じゃあ、ミリアが大きくなったら、だんな様はミリアのおムネをさわってくれますか?」
「んっ!? あ〜、そうだな、ミリアが大人になったら……な」
まさかの二択を迫られて、シーズはミリアを傷つけない選択をしたのだが、マリーレイアがそれを黙って見過ごすはずもない。
「おいいぃッ! オマエだけズルいぞコノ野郎ぉォッ!!」
「なんだそのキレかたは!?」
目を血走らせ鬼気迫った顔でシーズの胸ぐらを掴むマリーレイア、そんな彼女の服をミリアがクイッと引っ張る。
「マリーおねえちゃんっ」
ばっと両手を開いたその姿からは、小さな身体で精一杯受け止めようとする少女の気概が伝わってきた。
「おぉっ……ミリアちゃぁぁん!」
マリーレイアはミリアの小さな胸に飛び込むと、真っ平らな丘に顔を擦り付けながら深呼吸をする。
「すぅぅぅっ……はぁぁぁっ……すぅぅぅっ……はぁぁぁっ…………あふぅんっ、ミルクのにおいがしゅるぅっ」
(俺の幼馴染はもうダメかもしれんな……頭が)
シーズが幼馴染の姿にドン引きするさなか、ミリアは慈愛のこもった眼差しでマリーレイアの頭をう優しく撫でつける。
「よしよし、マリーおねえちゃん、イイこイイこですよぉ」
その光景に、シーズは幼いミリアの中に眠る強大な母性の片鱗を垣間見たのだった。
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