マリーレイアとの一件があった次の日から、シーズの禁欲生活は始まった。
いつぞやのように淫らな妄想に取り憑かれ、我を忘れてしまったらと心配していたが、今のところは何事もない。むしろ体調は良くなって頭もすっきりしていた。
この調子なら、しばらくセックスを我慢するぐらい難しいことではないだろうと、シーズが楽観的に考えながら屋敷の廊下を歩いていたとき、ちょうど窓掃除をしていたアルテラの姿を見つけた。
スカート越しでも分かるムッチリと丸みを帯びたお尻を突き出すように揺らすアルテラの後ろ姿に思わず見とれてしまう。
あの柔らかそうな尻たぶを両手で鷲掴みにしながら股間を押し付けたらさぞ気持ちのいいことだろう。
どれ、ひとつ感触を確かめてみようかと、無防備なアルテラの背後に近づこうとしたシーズはそこで我に返る。
(無意識にアルテラの尻を触ろうとしてしまった!)
今のシーズにとって最大の障害となるのは、やはりアルテラだ。彼女の色香の罠は屋敷の至るところに仕組まれている。
あやうく罠に引っかかりそうになったシーズがコッソリその場から離れようとするよりも早く、視線に気づいたアルテラが後ろを振り向いた。
「あら、旦那様」
彼女が動いた弾みに胸の膨らみは上下に揺れ、喋ればぷっくりとした唇が艶かしく動き、立ち姿だけでも男を欲情させる。まさに魔性の女である。
歩く色香とも言えるアルテラは、今のシーズにとって危険きわまりない存在だ。
目の前に美味しそうな肉がぶら下がっている、けれどこれは罠だ、喰い付いたが最後、退路を断たれてしまう。けれど肉は美味しそうだ、食べたい! だめだ! いやしかし……!
シーズは罠の前でウロウロする野犬のようなジレンマに苛まれた。
「旦那様、どうかさないましたか?」
「いやっ、なんでもないよ」
誤魔化そうとするシーズだったが、身を寄せてきたアルテラの手に股間をさすられてしまい思わず腰が引けてしまう。
「アルテラ、なにを……」
「うふふっ、旦那様が何を考えていらっしゃるのか、アルテラにはお見通しですわ」
くっついてくる彼女の柔らかな肢体の感触と体温につられて鼓動が早くなるのを感じる。
マリーレイアとは違う理性を溶かすような甘い芳香によって、抱きつきたくなる衝動にかられながらも、胸に下げた首飾りの存在がシーズを踏み留まらせる。
「すまないアルテラ。最近どうも調子が悪くて、しばらくこういうことは控えようと思うんだ」
やんわりと引き離されながら、アルテラは不安げな瞳でシーズを見つめた。
「まぁ、大変……旦那様にもしものことがあったら、わたくし……」
そう言いいながらシーズの胸にしなだれ掛かるアルテラ。むにゅりと柔らかな乳房が押し付けられる。
(だから、こういうのを止めて欲しいんだが!?)
これ以上アルテラと一緒にいたら我慢できなくなりそうだが、アルテラの好意を無下にするのも躊躇われる。
まごつくシーズに抱きついていたアルテラが、そのとき彼の胸元に光る石の存在に気づいた。
「この首飾りは……」
「ん? ああ、これはマリーから貰ったんだよ。お守りみたいなものでね」
べつに後ろめたい事でもないのでシーズは素直に答えた。
「――そうですか」
「まあ、そういう訳だからさ、しばらくは夜も一人で寝ることにするよ」
アルテラが何か考えている隙にシーズは彼女から離れると、そそくさと逃げてき、残されたアルテラは遠ざかるシーズの背中をじっと見つめていたのだった。
*
数日が経過したが、シーズの禁欲生活はなんとか続いている。
余計なことを考えないよう執務に精を出し、狩りに出かけて体を動かすなど、どうに煩悩を退けてきたものの、溜まりに溜まった性欲を我慢し続けるのも限界だった。
そのことを書庫のマリーレイアに相談してみると、彼女はあっけらかんとこう言った。
「オナニーすればいいじゃん」
盲点である。セックスはダメでも自分の手で処理するのは有りのようだ。
なるほど、ではさっそく自室に戻ってナニをしようとシーズが思い立ったところで、マリーレイアが余計な事を言い出す。
「丁度いいから、ちょっとここで自慰ってみろよ」
「なにが丁度いいんだ!?」
このお嬢様はまた興味本位でおかしなことを言い出したとシーズはげんなりする。たしかに彼女とはセックスまでした仲だが、オナニーを見せるのはまた話が違う。
「そんな恥ずかしいことできるか!」
「いいじゃん減るもんじゃなし」
「俺のプライドが減るんだよっ!」
いくらマリーレイアといえど、そんな恥辱的なことはできない。
シーズは男の矜持を守るため断固拒否をする。
「私がこんなに頭を下げてるのにダメなのか?」
「いくらマリーの頼みでもダメだ、というか頭を下げてないよねキミ」
「しょうがないなぁ、それじゃあ私もオナニー手伝ってやるからさ、ほれっ」
「………………」
マリーレイアは椅子に座ったままスカートの裾をチラリとめくりあげる。白い太ももの間に少女らしからぬセクシーなレースのショーツが垣間見えるや、シーズは躊躇なくズボンを脱ぎ、溜めすぎてガッチガチに勃起したイチモツをぼろりと露出させた。
「こいつ、躊躇いなくプライドを捨てやがった……」
シーズは下半身を露出させた状態でマリーレイアに近づくと彼女の小さな手を掴む。
「マリーの手でするのも自慰の範疇だと思わないか?」
「おいバカやめろっ! 勝手に人の手でオナニーしようとするなこの変態!」
やいのやいのとした結果、シーズは手を後ろで縛られた格好で床に座らされていた。もちろん下半身は露出したままだ。
「おいマリー、どうして俺は縛られているんだ?」
「黙れケダモノ、こうでもしないとお前が飛びかかってくるからだ」
マリーレイアは椅子に座って侮蔑の眼差しでシーズを見下ろしている。
「しかしこれじゃあ自分ですることもできない」
「ふん……だったら望み通りに私が手伝ってやろうじゃないか」
その言葉を聞いて、シーズはマリーレイアが自らの手でイチモツを握ってくれることを想像したのだが、彼女は悪戯な笑みを浮かべながら、あろうことか伸ばした足でシーズの股間をグリグリと踏みつけてきた。
「うぉっ!?」
「誰も手でしてやるとは言ってないぞ、ほれほれ」
ニヤニヤと笑いながらなおも足の指先で勃起した肉棒をさすられると、刺激に敏感になった肉棒はシーズの意思に反してビクビクと反応してしまう。
「おっ、おい! やめろマリー!」
領主である自分がこんな無様な格好で股間を足蹴にされる屈辱にシーズは憤った。
しかしマリーレイアは膨らんだ亀頭から透明な液体が滴っていることに気づいて愉快そうに足裏で亀頭をこねくり回す。
「ふふッ、こんな事をされて感じるなんて……お前は本当に変態ちんこ野郎だなぁシーズ」
「ぐぅっ……!」
抵抗できないシーズを弄ぶ状況に気を良くしたマリーレイアは大胆にスカートを捲り上げると、わざとシーズに見せつけるように、ぱっかりと股を広げた。
マリーレイアの股間を隠すショーツのクロッチが割れ目に食い込んで、うっすらと見える女陰の窪みにシーズの目は否が応でも引き寄せらてしまう。
「ほぉら、美少女のパンツを見ながら足でおちんぽグリグリされて気持ちいいんだろう?」
マリーレイアの綺麗な素足に鈴口から溢れる我慢汁が絡みつき、ヌチャヌチャと音を立てながら滑るように竿をシゴかれると肉棒は更に大きく膨れ上がる。
「んふっ、節操がないシーズの勃起チンポ、このまま足でイカせてやるからな。ほぉらっ、先っぽコネられるのがいいんだろ? ほらっ、ほぉらっ」
シーズを見下しながら足コキするという状況に興奮したのか、マリーレイアはうっすらと頬を紅潮させながら両足で肉棒を挟むとズリュズリュと上下に擦り上げる。
「うっ、あぁっ……っ!」
「ふぅっ、ほんと、お前は変態だなシーズ……まったく、私はどうしてこんな奴に……んっ」
物欲しそうに股間を凝視しているシーズの視線にゾクゾクとしたものを感じながら、マリーレイアは自らの手で股間のショーツをずらして、露出したピンク色の女陰を指で弄りだした。
シーズの痴態に興奮したのか、愛液の染み出した女陰からはクチュリと粘ついた音がしている。
「んっ、ふっ……そんな目で見てもたダメだぞシーズ……んッ、ぁっ……セックスはさせてやらないからな……私のオナニーを見ながら、足でおちんぽシゴかれて、ビュッビュッって精液を出すんだぞ……んっ、んんゥッ!」
膣口に潜り込んだ指を動かすたび、マリーレイアの口から甘い喘ぎ声が漏れ、幼馴染の少女が目の前ではしたなくオナニーをする姿に、シーズはどうしようもなく興奮してしまう。
「マリー、もっと、もっと激しく!」
「ふぁっ……! あっ、ぁっ……! もうっ、変態っ、変態ぃっ……!」
シーズの懇願にマリーレイアは熱く感じ入った声を漏らしながら、より激しく膣をかき回し、足で肉棒をしごいた。
「うぅっ! もっ、もうっ出そうだ、マリー!」
「んっ、ぅっ……! ふっ、ぁっ、わっ、私も……! いっ、イクぅッ……あぁっ!」
ビュルッ! ドビュッ! ビュクッ!! ビュルルッ!!
マリーレイアがビクリと体を仰け反らせれて絶頂を迎えたと同時に、シーズも彼女の足に大量の白濁液を射精した。
甘やかな痺れに身を浸しながら、マリーレイアは体の力が抜けたようにくったりと椅子にもたれ掛かる。
「はぁっ……はぁ……」
漂ってくる精液の青臭い匂いを嗅ぎながら、マリーレイアは足にこびりついた白濁液を指先でネチョネチョと弄ぶ。
「私の足に、こんなにドロドロした精液を射精して……はぁっ……ほんと、お前はしょうがない奴だな……シーズ」
呆れたように呟くマリーレイアだったが、その声はどこか満足げであった。
どうやらシーズの禁欲によって二人の新たな性癖の扉が開かれてしまったようだ。
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