さて、シーズには酷なことだが、こうなってしまった以上、アルテラの過去を明かさない訳にはいかなくなった。
あなたも既にお気づきのとおり、アルテラという名前は偽りであり、彼女が教えてくれた過去も真実全てではない。
どうして彼女は素性を隠していたのか?
それを語るためには、彼女がまだ穢れを知らなかった少女の頃まで遡ることになる。
しかし、彼女の過去は悲惨であり、知ってしまえば、彼女への幻想は無残に打ち砕かれてしまうかもしれない。
果たして、何も知らなかった田舎領主様に彼女と向き合うことができるだろうか――?
*
*
*
獣人の国のとある小さな街の、ごく一般的な家庭に彼女は生まれた。
両親は平凡であったが、一人娘の”スフィアナ”は、町中探しても並ぶ者がない程に美しい少女だった。
将来を嘱望させる整った顔立ち、長い睫毛に飾られた優しげな瞳、ゆるやかになびく亜麻色の髪と艶やかな毛並みの耳と尻尾。
恵まれたのは容姿だけではなく、どんな相手にも分け隔てなく接する心根の優しさを持ち合わせた彼女は、老若男女問わず、人を慈しみ、人から愛される存在であった。
同年代の少年たちは皆、スフィアナに恋慕していたが、彼女の未成熟な心に恋が芽生えるにはまだ早く、少年たちも高嶺の花を遠巻きに眺めるだけで満足していたので、スフィアナは浮ついた話とは無縁に過ごしていた。
そんなスフィアナの人生に転機が訪れたのは、なんの前触れもなく迎えたある朝のことだった。
いつもと同じ時間に目を覚ましたスフィアナが、ベッドから起き上がり、身だしなみを整えるために部屋の鏡の前に立ったとき、鏡に映った自分の姿に驚き目を疑った。
昨日までは亜麻色だった髪の毛が白く輝く銀髪に変わっていたのだ。耳や尻尾も同様に銀色の毛並みに変わっている。
いったい自分の身に何が起こったのか分からず、取り乱した様子で部屋を飛び出してきた娘の姿を見た両親も大いに驚いた。
親は得体の知れない病気ではと不安に怯える娘を町中の医者に診せたが、こんな症例は見たことも聞いたこともないと全員が匙を投げた。
幸いなことに、毛の色が変わっただけで健康状態に問題はなく、周囲の人々も驚きはしたが気味悪がるようなことはせず、むしろ「こんな美しい銀色の毛並みは見たことがない」と賞賛するぐらいであった。
そのおかげで、最初は酷く落ち込んでいたスフィアナの顔にも、すぐにまた笑みが戻った。
そうして誰もが銀髪のスフィアナを見慣れた頃、穏やかに見えていた彼女の日常には小さな変化が訪れ始めていた。
まず変わったのは、彼女に想いを寄せていた少年たちの態度である。遠慮がちにスフィアナを見つめるだけだった彼らは、彼女に向けて積極的なアプローチをするようになっていた。
年頃の男子が思春期によって色気付いただけとも思えたが、彼らは競うようにプレゼントを贈り合い、あるものは親の財布から金をくすねてまで彼女に貢ごうとした。
慎しみ深いスフィアナは「こんな高価な品物を受け取ることなんてできないわ」と遠慮するのだが、それでも少年たちの熱は冷めず彼女に夢中になる一方で、他の女の子たちへの態度はぞんざいであった。
そうなってくると、スフィアナの取り巻きだった少女たちも面白くないわけで、本人が望んだことではないというのに、スフィアナは次第に女友達から距離を置かれ、少年たちはしばしば彼女を巡って喧嘩をするようになった。
(どうしてこんな事になってしまったのかしら……)
自分が原因で仲違いが起こっていることにスフィアナは心を痛めた。
気に病んだ娘を心配した父親は「大丈夫、友達とはしばらく距離をおけば、きっと冷静になってくれるはずさ」と相談に乗った。
スフィアナは、いつも優しく自分のことを考えてくれる父親が大好きだ。しかし、最近の父もまた少し様子がおかしいことに彼女は気づいていた。
娘を抱きしめる父の手が頻繁にお尻に触れ、最近になって膨らんできた胸には絡みつくような視線を感じるようになった。
けれど、父親が娘に邪な感情を抱くなんて純真なスフィアナには考えられず、神経質になっているだけだと自分に言い聞かせていたのだが、父親の態度は露骨になる一方だった。
母親には新しい服の一つも買い与えないというのに、スフィアナの服やアクセサリーばかり買ってくる。
とうぜん母親は不満を抱き、以前は仲の良い夫婦だったのに言葉を交わすことも極端に少なくなっていた。
なんとか両親の仲を修復しようと、スフィアナは父に訴えかける。
「お父さん、私はもうじゅうぶんに良くしてもらってるわ。だからもっとお母さんにも優しくしてあげて」
「ああ、スフィアナはなんて良い子なんだ。心配いらないよ。お父さんもお母さんも、おまえが喜んでくれればそれだけで幸せなのだから」
スフィアナがいくら説得しようとしても、父親にはまるで話が通じなかった。
それからさほど時を待たずして、夜にはベッドで眠るスフィアナの耳に両親の罵り合う声が聞こえてくるようになった。
離れていく友人。壊れていく家庭。どうしてこうなってしまったのか……スフィアナは悲しい気持ちで布団をかぶって耳を塞いだ。
そしてある日の夜、最悪の出来事が彼女を襲った。
自室で眠りについていたスフィアナは体にのし掛かる重みによって目を覚ました。
暗い室内で自分に覆いかぶさっている人影。
スフィアナは驚き悲鳴を上げようとしたが、その口は大きくてがっしりとした手によって塞がれる。
恐怖に竦む彼女は、しかしそこにいるのが自分のよく知る相手だと気づいた。
(お父さん……! いったい、なにをしているの……!?)
状況が飲み込めないスフィアナだったが、寝間着の胸元が大きくはだけられ、乳房が露出していることに気づき、父親が自分に何をしようとしていたのか察した。
塞がれた口から少女のくぐもった悲鳴が漏れる。
「静かになさいスフィアナ。お母さんに聞こえてしまうよ」
まるで子供を躾けるように重く静かな父親の言葉に、彼女は息をのんだ。
もしもこんな場面を母親が見てしまったら――。
いまにも壊れようとしている家庭は一瞬で崩壊してしまうだろう。
それに気づいてしまったスフィアナには、大声を出して助けを求めることができなかった。
スフィアナの抵抗がおさまったことで、父親は嫌がる娘の寝間着を無理矢理に脱がすと、彼女の小さな膨らみを愛おしそうに撫でながら、ピンク色の慎ましい乳首に舌を這わせた。
ヌメついた父親の舌に刺激されても、未発達の性感帯には只むず痒いだけだった。成長しきっていない小さな胸に大人が必死に吸い付いている姿が、スフィアナにとはとても滑稽でおぞましく見えた。
(こんなのいや……お願い……はやく終わって……)
健気に耐えるスフィアナの願いは叶わず、父親は彼女のショーツに手を伸ばし、クロッチ部分を横にズラすと誰にも触れられたことのない秘部に口をつけた。
「ひぃっ……ッ!」
得体の知れない感覚に、スフィアナは股に潜った父親の頭を引き剥がそうとするが、少女のか細い腕ではビクともしない。
父親の大きな手がスフィアナの足を無理矢理開かせると、舌がぴったりと閉じたワレメを舐め上げる。
(いやっ! そんなところを舐めるなんて……!)
性知識の乏しかったスフィアナは羞恥に顔を紅潮させながら、悲鳴を上げそうになるのを必死に堪えた。
父親にワレメを舌でまさぐられることには嫌悪感しか生まれない。
(やだっ、いやっ……誰か……助けてっ……)
しかし、スフィアナの願いは誰にも届かない。
父親がズボンを脱ぎ捨て、凶悪にそそり立った男根を間近で見せつけられたスフィアナは恐怖に身を竦ませた。
もっと小さい頃に父親と入浴していときに男性器を見たことはあったけれど、こんな凶悪な形をしていなかった。
性に疎いスフィアナでも、ソレがどのように使われるかぐらいは知っている。
スフィアナは恐ろしくなってベッドから逃げ出そうとするが、ずしりと重たい父親に抱きすくめられてしまう。
「いやっ、いやよっ、やめてお父さん、怖いわっ……どうしてこんな酷いことをするの……!?」
「ちがうんだスフィアナ、お父さんはただ、おまえを愛しているんだけなんだ」
取り乱すスフィアナを父親はなんとか宥めようとする。
「嘘よっ、私を愛しているならこんなことしない……それに、お母さんが可哀想だわ……」
「すまないスフィアナ、私はお母さんよりもお前のことを愛しているんだ。もう、どうしようもないんだよ」
「お父さんがなにを言ってるのかわからないわ……私はただ、父さんとお母さんに仲良くしてほしいだけなのに……」
「ああ……スフィアナ、わかった。お前が言うことを聞いてくれるなら、おまえの言う通りにお母さんとも仲良くするよ。だからスフィアナ、お父さんを受け入れておくれ」
娘の優しにつけこむ鬼畜な所業は、しかし効果的だった。
「私が……お父さんを受け入れれば……元どおりに……?」
「そう、そうだよ、約束するよ。ちゃんとお母さんのことも愛して、今まで通りに過ごせるんだ」
一瞬の儚い希望。娘の抵抗が弱まったのをいいことに、父親は彼女をベッドに押し倒すと、未成熟なワレメに肉棒を無理矢理ねじ込んだ。