長年の雨風に晒され染みの付いた宿の扉を開けば、今夜も呑んだくれの集う酒場の光景が広がる。
「女将さん、お泊まりのお客様をお連れしました」
スフィアナが男を伴って帰ってきたのを見た叔母は、面白くなさそうに鼻を鳴らした。小娘のくせして男をうまいこと引っ掛けるのが気に食わないのだろう。
しかし、彼女が上客を連れてくるおかげで宿に金が落ちるのも事実。叔母はすぐに接客用の笑みを顔に貼り付けた。
「ようこそいらっしゃいました。うちは料理が自慢の宿ですので、きっとお客様もおきに召しますよ」
女将の話を聞きつつも、男は店内の客層をちらりと見てから押し黙ってしまう。どうやら、今のところおきに召されていないようだが、それを察したスフィアナが、すかさず男の腕をとる。
「女将さん、お客様を奥のお部屋にご案してもいいかしら?」
「ああ、そうしておくれ」
奥の部屋、というのは、この宿では一番豪華な部屋のことである。(他の部屋に比べてマシという程度だが)
「さっ、行きましょう、おじ様」
「あっ、ああ……」
男は戸惑いながらも、スフィアナの笑顔を前にしては不満を言うのも憚られ、そのまま腕を引かれて連れて行かれるのだった。
そして、二人で目的の部屋に入ると、スフィアナは彼の着ていたコートを丁重に脱がしてやり、クローゼットに掛けると、ベッドに腰掛けている男の隣に座わり、微笑みかけて男の大きな手をそっと握る。
「ありがとう、おじ様が来てくれたおかげで、女将さんの機嫌も良くなったみたいだわ」
「きみが困っているようだったのでね」
そう言いながらも、なぜノコノコと彼女について来てしまったのか、男自身もわからないでいた。
「優しい方。ねえ、お礼をしたいのだけど、私にして欲しいことはあるかしら?」
スフィアナが手をさすりながら身体を寄せると、男は困ったように視線を宙に泳がせた。
「いや、私はそんなつもりじゃあ……」
否定をしながらもスフィアナの手を振り解けないでいることから、言い寄られるのはまんざらでもないけれど、子供に手を出すのを彼の倫理観が咎めるのだろう。
男が情と道徳の板挾みになって動けないでいると、スフィアナはベッドに上で膝立ちになって、男の頬にチュッとキスをした。
「ふふっ、おじ様は紳士なのね、素敵だわ」
それから何度も、ついばむように、柔らかな唇を押し当て、甘い吐息を吹き付けながら、可愛く出した舌を頬に這わせる。
「はぁ……んぁっ、ちゅっ……ぺろっ、レロッ……」
子供とは思えないスフィアナの艶やかな声色と妖艶な舌遣い、男は驚きながらも、頬を伝う濡れた感触にぞくぞくとしたものを感じて、身じろぎもできないまま、黙って少女の感謝を受け入れた。
スフィアナは口で愛撫をしながら、だんだんと体を移動させ、いつの間にか男の膝に跨って口の周りに舌を這わせた。
股間に男の勃起したペニスの硬さを感じながらも、気づかないふりをして、お尻をぐりぐりと動かすと、男が小さく呻き声をあげる。
「んはぁっ……れろっ、チュッ、ちゅぷっ……はぁっ……おじ様ぁ……」
甘ったるい声音で呼びかけながら、ピンク色の濡れた唇が、男のガサついた唇に重なろうとしたとき、男の腹から低い地鳴りのような空腹の音が響いて、スフィアナはピタリと動きを止めた。
「あらっ、先にお食事をしたほうがいいみたい」
クスリと笑って男から離れたスフィアナはささっと乱れた服を整える。
「酒場は騒がしいから、お食事はお部屋にお持ちしますわ、少しお待ちになって」
そう言って部屋から出て行ったスフィアナ。男はホッとしたような、けれど少し残念そうな顔でそれを見送ってから、ズボンの下で勃起したままのイチモツをどうにか鎮めようと苦心した。
しばらくして、スフィアナは湯気を立てる料理の載ったトレイを両手に持ち、腕にはパンとチーズ、そしてワインボトルの入ったバスケットを腕に掛けて戻ってきた。
スフィアナによって料理の配膳された机の前に座った男は、空腹を満たすため、さっそく料理に手をつける。
カリッと焼かれた表面にてりのあるソースが塗られた鳥は噛めば肉汁と香辛料の香りが溢れ出し、野菜のシチューは素材の甘みが染み渡る、他にもパンとチーズ、そして上等なワインも付いていた(この宿では滅多に出ない贅沢な料理と酒は、少しでも多く儲けようと叔母が用意したものである)
期待していなかった料理が予想外に美味だったことに驚きながら、男は次々と料理を口に運ぶ。
顔と性格の醜い叔母だが料理の腕は存外に悪くない。そのおかげで、なんとか宿は潰れずに持ちこたえているのだ。
食事を終えて人心地つく男の元に、今度はお湯の入った桶を持ったスフィアナがやってくると、まずは別の桶にお湯を分け、男の靴を脱がせてから、お湯に浸った足をもみ洗いする。
「次は身体を拭きますね」
「そんなことまで、してくれるのかい?」
「おじ様にだけ、特別」
自分だけという言葉に気分をよくした男は「それならば」と任せることにした。
スフィアナは男の服に手をかけると、胸元のボタンを外してシャツを脱がせ、裸になった上半身を湯でしぼったタオルを使って絶妙な力加減で拭ってゆく。
男は気持ちよさそうにしているが、あらかた拭き終えたところで「次はこっち」と、スフィアナがズボンと一緒に下着まで脱がそうとするので、慌てて手を止める。
「そこもキミが拭くのかい?」
「でないと気持ちが悪いでしょう?」
「しかし……」
「大丈夫ですわ、お任せになって」
「あぁ……」
観念した男が下も脱いで全裸になると、スフィアナは気にする素振りも見せず、下半身にタオルを押し当てる。
歩き通しでくたびれた脚を労わるように拭いてもらい、気持ち良さそうにする男だったが、スフィアナの手が股間へと伸びても陰茎には直接触れず、ももの付け根をなぞりながら周りを往復するばかりだ。
「ぅっ……」
じれったい動きに気を揉みながらも、男は自分から触ってくれとは言い出せない。けれど、スフィアナの手が竿や玉袋を掠めるたびに、ソワリとした刺激が伝わってきて、それに反応したペニスが首をもたげてしまう。
「あら、ふふっ」
「いや、これは……」
「意地悪してごめんなさい、ここもちゃんと拭きますわ」
スフィアナは両手でペニスを持ち上げると、玉袋の裏側を優しくさするように拭いてから、竿をタオルで包んでコシコシと擦ってやる。
すると、刺激に反応したペニスはどんどん膨らんで、天井に向かってそそり立ってしまった。
「まあ、たいへん、こんなに大きくなって……どうしましょう」
わざとらしく困ったふりをしながら、スフィアナが勃起したペニスに顔を近づけて、フゥッと息を吹きかける。
「うっ……っ」
「おじ様のオチンポ、とっても苦しそうだわ。ねえ、どうして欲しいか、おっしゃって?」
男は迷ったが、少女の柔らかな唇がいまにも肉棒に触れそうになっているのを見て、もう我慢はできなかった。
「きみの舌で、舐めておくれ」
男がそう言うと、スフィアナは黙ってピンク色の可愛い舌を出して、肉棒の裏を舌でペロリと舐めあげた。
「あぁッ!」
続けて竿の根元に舌を当てると、つぅっと、舌先で舐めあげていき、先っぽにキスをして、舌でカリ首を舐めまわした。
「んっ、ちゅぴっ、レロッ、れぇっ……ちゅっ、れるっ……」
まるで飴を舐めるかのように、とても子供とは思えない卑猥に絡みつく舌使いによって、男の理性はみるみるうちに溶かされてゆく。