夜も更けた頃、スフィアナたちに当てがわれた部屋のベッドでは、腹がふくれてすぐ眠気を起こしたミリアが穏やかに寝息を立てていた。
無理もない、子供にとっては過酷すぎる旅路が続いたせいで心身共に疲弊していたのだ。旅の汚れを洗い流し、久しぶりの温かい食事と柔らかなベッドにありつけたことで、張りつめていた緊張が解けたのだろう。
あのお人好しなお坊ちゃんと出会えたのは幸運であった。彼にはスフィアナたちの面倒をみるだけの財力があり、獣人を住まわせるための融通をきかせる権力もある。
加えて、この屋敷にはシーズの他に老婆と老夫しかいないときた。
隠れ住むには絶好の条件が揃っている。ミリアに不安のない暮らしをさせてやるためにも、これを逃す手はなかった。
「だいじょうぶよミリア、お母さんがあなたを守るからね」
眠っている愛しいわが子の額にキスをしてから、スフィアナは物音を立てないようそっと部屋を出でると、暗い廊下を忍び足で進んだ。
そして、事前に確認しておいたシーズの部屋の前に到着すると軽く髪を整えてから、そういえば、あのお坊ちゃんはおっぱいに興味津々だったことを思い出し、胸元の留め紐をわざと緩めて胸の谷間が見えやすくした。
(これでいいわ、男はちょっと隙を見せてあげると喜ぶのよね)
準備は整った。スフィアナが一呼吸置いて遠慮がちにドアをノックすると、すぐに中から返事が聞こえてきた。シーズの声で間違いない。
「領主様、アルテラでございます……」
スフィアナが静かに呼びかけると、しばしの間をあけてからドアが開かれると、寝巻き姿のシーズが姿を現した。こんな夜更の来訪に驚いている様子だったが、深刻そうな顔をするスフィアナを見て、シーズはあっさりと彼女を中に招き入れた。第一関門突破だ。
(さてと、上手くやらないといけないわね……)
どうしたのかと尋ねてくるシーズに、スフィアナは頭の中にあるシナリオに沿って、涙まじりに(もちろん嘘泣き)これまでの悲惨な過去(半分本当で半分は嘘の作り話)を語りながら、この哀れな母娘をどうか助けてくださいましと懇願した。
するとどうだ。彼女の名演技にほだされたシーズはスフィアナの言うことをあっさりと信じ、母娘を助けると約束してくれたではないか。スフィアナ大勝利である。
(この子、呆れるぐらいのお人好しね……)
スフィアナの計画では、助けてくれるなら私の体を好きにしてもいいですよと、交換条件を提示する予定だったのだが、その前に片がついてしまった。
さて、どうしたものか。
ありがとうございます領主様、それじゃあお休みなさい──と、このまま部屋を去っても問題なさそうだったが、明日になって気が変わったと言い出されても困るので、スフィアナは念のために色仕掛けも施しておくことにした。
胸元がはだけているのに気づかないフリをしながら、見せつけるように胸の谷間を強調してやると、シーズの目は釘付けとなり、動揺しながらも横目でチラチラと覗き見ている。これは童貞の反応!
(これぐらいで赤くなるなんて、かわいらしいこと)
スフィアナとしては、このまま欲情して襲いかかられても一向に構わない、むしろ既成事実ができて好都合なのだが、どうやら童貞のシーズには女を押し倒す度胸はないらしい。
(しょうがないわね)
ウブな坊やのためにもう一押ししてやろうと、シーズの手を取って自らの豊満な乳房に押し付けてやると、わかりやすく動揺している。どうやら女の胸を触ったこともないらしい。
(ほら、柔らかくて気持ちいいでしょう? もっと気持ちのいいことをさせてあげるから、さっさと発情しちゃいなさい)
「ぁっ、アルテラ……ッ!」
そのまま体を寄せて吐息のかかる距離まで顔を近づけて、耳元で甘い誘惑を囁いてやれれば、奥手のお坊ちゃんも若い性欲を押さえきれなくなったようで、ぷるんと魅惑的に揺れる乳房に手を伸ばしてきた。
シーズは吸い付くように柔らかな乳房の感触に興奮しながらも、どうやって触ればいいのか分からずに、ぎこちなく指を動かしている。
その手つきは荒々しく、女を悦ばせるにはあまりにも拙いものだったが、乳首に指が擦れると、じわっとした痺れによってピンク色の突起がむくりと突き出してしまう。
「ぁんっ……領主様っ……」
スフィアナが多少わざとらしく喘ぐと、そこが感じるのだなと察したシーズは、胸を揉みながら尖った乳首をつまんで擦るように指先を動かし始めた。
力加減が分からないのか、表面をなぞる遠慮がちな愛撫はこそばゆく、いささか刺激が足りないものの悪い気はしなかった。
スフィアナと寝た男たちは、大抵が彼女の毒に侵されて欲望のままに激しく犯すので、女の扱いに慣れてない坊やのたどたどしさは新鮮である。
(ふふっ、いい子ね、女は優しく扱いなさい)
ご褒美におっぱいを顔に押し付けてやると、シーズは言われずとも突き出した乳首を口にふくんで舌で舐め始めた。ちゅばちゅばと、まるで赤子のように吸われて背筋がむずがゆくなる。
(んっ……そんなに優しく舐めないでよ……変な感じがするわ)
胸から伝わる快感に吐息を漏らしながらも、男に触れられているというのに、そこまで嫌悪を感じていないことが自分でも意外だった。
(まあ、利用するために、セックスぐらい好きにさせてあげるつもりだったし……)
どこか言い訳じみたことを考えながら、スフィアナはおっぱいに夢中の坊やを引き離して、物欲しそうな口にキスをしてやる。
おそらく、男と女の口付けするのも初めてだったのだろう。最初は緊張で唇を触れ合わせるだけだったが、スフィアナが口内に舌を侵入させて、奥で縮こまっている舌を優しく愛撫してやると、シーズもおずおずと舌を絡ませてきた。
「んっ、ちゅぷっ、れろっ……んふっ、んんっ」
最初はおっかなびっくり、しかし、次第に激しく絡み合う舌は、ヌチュヌチュと卑猥な水音を立てながら互いの唾液を交換する。
(そろそろ、こっちもしてあげようかしら)
濃厚な口づけを交わしながら、先ほどからずっと盛り上がったままの股間を撫で付けてやると、敏感になっているペニスから伝わる刺激でシーズが小さく呻く。
「あぁ……こんなに苦しそうにして、かわいそうに……いま楽にしてさしあげますわ……」
百戦錬磨のスフィアナからすれば、まったくかわいいものだ。それじゃあ、今夜はこの童貞坊やの筆下ろしをしてあげますかと、手早くズボンを脱がし、窮屈そうな下着をずらした瞬間、押し込められていた肉棒がブルンッと勢いよく飛び出してきた。
顔の前でそそり立つ剛直を前にして、スフィアナは体を硬直させた。
(…………………ふっ、ふぅん…………やるじゃない)
なにが? いや、ナニがである。
シーズの股間にはスフィアナが想像していたよりも遥かに逞しいイチモツが飢えた獣さながらに、我慢汁を垂れ流してビクビクと脈打っていた。これは立派だッ!
濃縮された雄くさい精の匂いがスフィアナの敏感な鼻腔に直撃する。
(んくっ……! すごい匂い……)
見た目はちょっと頼りない優男のくせして、下半身にこんな凶悪な代物を隠してもっていたとは! 腹にぴったりとくっつく程に反り返るチンポの圧力に流石のスフィアナも驚きを隠せない!
しかし、あくまでも主導権を握るのはこちらなのだ、ここで舐められるわけにはいかないと、スフィアナは余裕の微笑を顔に貼り付けながら、肉棒を手で撫で付けると、指先から熱が伝わってくる。
(やだ、我慢汁がこんなに溢れて……それに、すごく熱い、血管もこんなに浮き出して……)
触っただけでも暴発してしまいそうな肉棒の感触。
これまで両手の指ではとても数えきれない数の男と寝てきたが、その中でもこの坊やのモノは特別逞しかった。
(ふっ……上等よ、この童貞チンポに女ってものを教えてあげるわ)
なんか知らんが、スフィアナの中で妙なスイッチが入ったようだ。