(すごかった……セックスってこんなにキモチがイイものだったのか)
チンコが溶けてしまいそうなヌッチョリズッポリな男女のまぐわいの後、アドニスはベッドの上でミルフィーナを腕に抱きながら心地よい倦怠感に浸っていた。
勢いでやっちまった感があるものの、これで彼は「ひとつうえの男」になれたわけである。いやスキル的な意味で。
今も触れ合う肌から伝わってくる彼女の温もりとフカフカおっぱいの感触を堪能していると、ミルフィーナが恥ずかしそうにアドニスを見上げる。
「あの、ご主人様……わたし初めてだったのに、あんなに乱れしまって……うぅっ、恥ずかしいです……」
「いや、俺も初めてだったから、すごく興奮しちゃって……無理させてごめんね」
「いえっ、わたしもすごく、その……よかったです」
「そっ、そっか……」
彼女が発情してしまったのは【搾乳】の影響なのだろうが、互いに満足いく初体験ができたことだし野暮なことは言うまい。
今更ながらに気恥ずかしさを感じてしまったふたりは、照れ笑いを浮かべながらチュッと唇を触れ合わせた。
「んっ……んンッ、ちゅっぷ……ぁっ……ご主人様、精一杯ご奉仕させていただきますので、これからよろしくお願いします」
そう言われて、アドニスはミルフィーナの待遇について考えた。
やんごとなき乳事情によって奴隷商から彼女を買ったわけだが、そもそも目的は【搾乳】をさせてもらうことであり、このまま奴隷扱いをするのはいかがなものだろうか──と。
彼女とはもっとこう、イチャラブほのぼの性活を送りたいのだ。
「そのことなんだけどさ、俺はミルフィーナさんを奴隷としてうちで働かせるつもりはないんだ」
「え……」
てっきり喜んでくれると思っていたのに、それを聞いたミルフィーナの顔はショックを受けたように青くなり、瞳にじわりと涙を滲ませたではないか。
「えっ、ちょっ、どうしたのミルフィーナさん!?」
ついさっきまでほんわかしていたのが、突然重苦しい空気へと変わってしまい狼狽するアドニスにミルフィーナは震える声で訊ねる。
「そっ、それはつまり、一発パコッたからお前はもう用済みだということでしょうか……?」
「人聞き悪すぎぃっ! それだと俺が最低のクズ野郎になっちゃうんだけど!?」
「わっ、わたし行く当てもなくて、この家を追い出されたら露頭に迷ってしまいます! お願いします主人様、なんでもいうことを聞きます、おっぱい搾りも授乳プレイも頑張ります、もっとハードなプレイだって耐えられますから! どうかお慈悲を!」
「やめてっ! 俺を奴隷で歪んだ性癖を満たす鬼畜ご主人様に仕立て上げないでッ!!」
どうだろう、あながち間違ってない気もするが──。
その後、ミルフィーナを落ち着かせるのにはかなりの時間を要した。
*
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
湯気を立てるカップが並んだテーブルの前で、ミルフィーナが羞恥に顔を赤くして頭を下げる。
「ミルフィーナさんて、けっこう思い込みの激しいところがあるよね」
「うぅっ」
なんとか誤解を解いて寝室から出てきたアドニスたちは、椅子の上で器用に丸まり寝こけていたシロを起こして、これからのことについて話をした。
その結果、とりあえずミルフィーナには家事や仕事の手伝いをしてもらいながら、ゆっくりと今後の身の振り方を考えればいい、ということで落ち着いた。
「ですが、本当によろしいのですか? わたしを買うためにご主人様は高いお金を払ったのに……」
奴隷扱いするつもりはないと言っているのだが、彼女なりのけじめなのだろう、この家で厄介になっている間はアドニスの呼び方を変えるつもりはないらしい。
「まあ、金貨三十枚はシロのおかげで何もせずに儲けたようなもんだったから、べつに気にしなくてもいいよ」
「シロちゃんが?」
「そう、シロの鼻はなんか凄いから」
「わうっ、むぐむぐ」
ミルフィーナは隣でおやつのリンゴをほおばっているシロをじっと見つめるが、可愛らしい犬人族の少女にしか見えなかった。
(ご主人様とシロちゃんて、どういう関係なのかしら?)
女神様から遣わされた神獣──なんて与太話をミルフィーナが信じるはずもなく、種族も違えば歳も離れたふたりが一緒に暮らしているのは訳ありにしか見えない。
奴隷ではないようだけど、アドニスのことを「様」をつけて呼んでいるのも不思議だった。
(まさかご主人様には、小さな女の子を愛でる趣味が……!? ダメッ、ダメよミルフィーナ、自分を奴隷から解放してくれた恩人に対してそんなことを思っては、ご主人様はちょっと女性の乳房に偏執的な愛情を向けるだけの善良な青年じゃない、そんな人が幼い女の子に手を出すはずがないわ)
思い込みの激しい自分の性格を戒めつつ、きっと、身寄りのない少女を善意で養ってあげているに違いないと思い込んだミルフィーナはアドニスに向かってニッコリ微笑みかけた。
(なんか、ミルフィーナさんが「ちゃんと、わかってますから」って生暖かい目を向けてくる……)
アドニスは「きっとまた、変なこと考えてるんだろうなぁ」と思いつつ、下手に突っ込むと面倒になりそうだったからスルーして話を続ける。
「シロとミルフィーナさんの生活用品も揃えないとな。あっ、そういや、うちにはベッドが二つしかないな」
「でしたら、わたしが床で寝ますので」
「わうっ、シロは牛さんたちと一緒でいいですよ?」
「いやいや、どうして君たちは俺を鬼畜にさせたがるの? とりあえずベッドはすぐに買うとして、シロはそれまで俺と一緒に寝ような」
「わうっ、わかりました」
「ッ!?」
その発言、聞き逃せない! ミルフィーナの目がクワッと見開かれる。
「えっ、なに? こわっ、どうしたのミルフィーナさん」
「えっ、えっと、シロちゃんはわたしと一緒のベッドの方がいいんじゃないでしょうか?」
「そんなに気を使わなくても大丈夫だよミルフィーナさん、シロは小さいから一緒に寝ても狭くないし」
「そっ、そうですか?」
アドニスなりのレディーファーストだったのだが、ミルフィーナはなんとも言えない顔で半笑いになる。
(落ちつくのよミルフィーナ、これはあれだわ、お兄ちゃんと妹が一緒に寝るような微笑ましい家庭の一幕なのよ)
ミルフィーナは大きく息を吐いて荒ぶる精神を鎮める。深呼吸をするたびにおっぱいがタプンタプン揺れるので、今度はアドニスの精神が乱れた。
「それでは、お言葉に甘えさていただきますね」
にっこりスマイルを復活させたミルフィーナは、そこでシロがじっと自分のことを見つめているのに気づく。その視線は大きく揺れる乳房に向けられていた。
「シロちゃん、なぁに?」
「わうっ、ミルフィーナさんのお乳はおっきいですねぇ、シロはぺったんこです」
自分の平たい胸をさする、ちょっとおませな少女の言葉にミルフィーナも微笑ましくなる。
「あら、うふふっ、そうかしら? シロちゃんもすぐに大きくなるわよ」
「わうっ、シロもお胸が大きくなったら、アドニス様にお乳を搾ってもらえるんですよぉ」
「なん……ですって?」
血走った鋭い眼光を向けられたアドニスは「ふぅ、やれやれ、まいったね」とアンニュイなため息をつく。
「誤解だミルフィーナさん」
「………………」
めっちゃ誤解されたので、結局シロはミルフィーナと一緒のベッドで寝ることになった。