(やっ、やってしまった……ッ!)
粘ついた精の滾りをルナリスの神マンコにぶっかけてしまったアドニス。射精したときは天にも昇る解放感に恍惚としていたが、次第に落ち着きを取り戻し、やらかしたことのヤバさを自覚した途端、煮えたぎっていた頭の中が一転して冷水を注ぎ込まれたように冷たくなっていく。
お乳を直飲みしてしまったのは、まだ搾乳の一環だと言えなくもない。しかし、女神様のお股にチンポを擦り付けてのザーメンぶっかけともなれば、これは弁解しようのないギルティ!
(ルナリス様のお乳を搾ろうとしたら、逆にこっちが搾乳されちゃったなぁ、チンポミルクだけにネ!)
アドニス、精一杯の現実逃避である。
「ンッ……んっ……」
そんなことを考えているうちに、ベッドの上でくったりとしていたルナリスが体を起こして、ぼんやりとした瞳でアドニスのことを見つめた。
アドニス無言で土下座の構え。神判のとき来たる。
(ごめん、シロ、ミルフィーナさん、どうやら俺はここまでらしい……くっ、ルナリス様のお乳を最後まで搾りたかった……)
志半ばで果てようとする生涯に思いをはせながら、アドニスは女神の言葉を待った。
そして──。
「お疲れ様でしたアドニス。とても良い搾乳でしたね」
「え……」
予想外の言葉をかけられ、アドニスが驚きに頭をあげると、そこには頬を染めたルナリスが、はにかみながら彼のことを見つめていた。
溶かされてしまいそうな熱い眼差し。そこには怒りや失望など微塵も感じられない。
「溜まったお乳を全て搾るために、これからもスキルのレベルアップに励んでください。そして、また……この続きをしましょう、ね?」
ルナリスの潤んだ瞳が彼女の気持ちを物語っていた。許されたのだ。いや、それどころか、彼女の反応からは搾乳以上のことを期待されているのが明らかである。
勝訴! アドニスまさかの逆転勝訴!! 女神様とパコれちゃうかもしれない権利獲得!!!
「よっ、よろこんでぇぇッ!!!」
こうしてアドニスは搾乳の他にも新たな目標を胸に抱くのだった。
*
さて、今回のお役目は終わり、そろそろ地上に戻る頃合いとなったところで、アドニスはふと気になっていたことをルナリスに尋ねた。
それは、いぜん奴隷商を助けた際に、野盗の刃から身を守ってくれた不思議な現象のことである。
「あれは、ルナリス様が助けてくださったのですか?」
「いいえ、違いますよ? 女神は下界に直接影響を与えるようなことをしてはいけませんから」
「なら、あれはいったい……」
「わたしはてっきり、アドニスはとても丈夫な体をしているのだと思いましたが、違うのですか?」
「いやいや、俺はただの村人ですから、剣で刺されたら普通にしんじゃいますから」
てっきり女神様の御加護に守られたのだと思っていたアドニスが怪訝な顔で首を捻っていると、ルナリスは何か思い当たることがあったのか、小さく「ぁっ」と呟いた。
「ルナリス様?」
「アドニス、これは神々の間でも禁忌とされていることで、わたしも実際に見たことはないのですが……神の血を浴びた人間はその身を呪われる代わりに強大な力を得るという伝承があるのです」
「はあ、それはなんというか、恐ろしい話ですね。神様の血だなんて」
「ところでアドニス、知っていますか?」
「なんでしょう?」
「母乳は血液からできているんですよ」
「へぇ、豆知識ぃ……………………え゙?」
「血は赤いのに、お乳は白いんですよ。不思議ですね」
「そんな小話みたなノリで!? じゃあ俺、もしかして呪われちゃってるってことですか!?」
「いえ、あなたから呪いっぽい気配は感じられないのでたぶん大丈夫なはずです」
「だいぶフワッとしてらっしゃる!?」
言い切ってくれない女神様にアドニスはいささかの不安を覚えてしまう。
「そういえば俺、ルナリス様のお乳を体に浴びただけじゃなくて……飲んじゃったんですけど? 牛乳を一気飲みする勢いでゴクゴク飲んじゃったんですけど?」
「………………ぁ」
「いま”あ”って言いました!?」
「いえいえ、お乳は赤ちゃんだって飲むものですから。体に悪いはずがありません、安心してください」
「そっ、そうですか」
「人間が飲むとどうなるのかは、ちょっとわかりませんけど……」
「小声で怖いこと言わないでくださいよ!」
「だいじょうぶ。だいじょうぶですよ。きっと骨とか凄く丈夫になると思います」
「まじっスか……」
敬愛するルナリスがだいぶのほほんとした性格だったことにショックを受けるアドニス。しかし、今のところ体に異変もなく、実際に危ないところを助けてくれた力なのだから、神乳の加護だと思って納得することにした。
そうこうしている間に帰る時間となり、アドニスの視界が白いモヤに包まれ始める。
「そうそう、スキルのレベルアップに役立つ機能を女神像に追加しておきましたので、地上に戻ったら像に触れてみてください」
「あっ、はい」
「アドニス、あなたのことは、いつだって見守っていますからね」
女神のほほ笑みに見送られ、アドニスの視界は真っ白に染まる。そして、次に目を開けたときには、以前と同じく女神像の前に立っていた。
(新しい機能ってなんだろう?)
アドニスが試しに女神像に触れる、どこからかともなくルナリスの声が聞こえてくる。
『よく来ましたねアドニス。あなたのスキルがレベルアップするには、あと11081の経験乳が必要です』
「経験乳!? なにそれ!?」
どうやらレベルアップの目安を教えてくれる機能のようだが、基準が分からないせいで数字を言われてもさっぱりピンとこなかった。
「ルナリス様って……」
思わず不敬が口から出そうになるのをアドニスはぐっと堪えるのだった。