さて、牧場に立ち寄って準備を整えた後、アドニスはゴブリンの目撃場所までの案内役を買って出て、ルヴィアと共に森の中へと入っていた。
鼻のきくシロも連れて行こうかと思ったが、いかにゴブリン退治とはいえ危険がないとも言い切れないので、今回はミルフィーナと一緒に留守番をしてもらうことになった。
それからしばらくして、ふたりが森の女神像のある場所に到着すると、ルヴィアは樹々に囲まれるようにしてひっそりと佇む女神像を興味深げな視線を向ける。
「こんな精巧な石像が、どうしてこんな森の奥に?」
「女神ルナリス様の像だよ、俺も見つけたのは偶然なんだ、それからよくお祈りに来てて」
「そうなんだ、綺麗だね……」
女神像を静かに見つめるルヴィアの横顔は、つい見惚れてしまうぐらい綺麗だった。整った顔立ちに澄んだ瞳、毛先の丸まった灰色の髪にピンと立つ可愛らしい猫耳。今は冒険者然とした軽装備に身を包んでいるが、女の子らしい服を着ていれば男たちの視線を惹きつけることだろう。
アドニスは横目で硬い皮の胸当てに隠された運命のお乳をこっそり盗み見る。
(どうすればルヴィアにお乳を搾らせてもらえるんだろうか……)
新たな運命のお乳の持ち主が判明したのは光明だが、フォーリと同じく、結局それがわかったところで乳房に触れる口実がなければ意味がない。
(ああ、もどかしい。ルヴィアのお乳はいったいどんな形をしているんだ? 乳首の色は何色なんだろう? わたし気になります!)
(アドニス、すごく熱心にお祈りしてる)
目を閉じて女神像に祈りを捧げているように見える隣の男が、まさか自分の乳房の形を妄想しているとは夢にも思わないルヴィアだった。
「ゴブリンを見つけたのはこの辺り?」
「そう、そこの茂みの奥で大量にゴブゴブしてたんだ」
しかし今はどこにも見当たらなかった。
「どこかに移動しちゃったのかな」
「痕跡なら辿れる」
ルヴィアは注意深く地面や周囲の様子を観察する。アドニスでは見逃してしまう小さな足跡や折れた枝木の痕跡をルヴィアの目はすぐさま発見する。
「こっち、ついてきて」
静かに移動を始めるルヴィアの後を追って、アドニスは森のさらに奥へと入って行く。
そして、普段は行かないような森の奥地に小さな洞穴を見つけると、ルヴィアはジェスチャーでアドニスを止めると、ひとり足音も立てず影のように入り口付近まで忍び寄り、中の様子を伺ってから戻って来る。
「いた、あそがゴブリンの巣」
「罠はどうやってしかけるんだ?」
「入口の前に、ごぶりんホイホイを置いておけばいい」
「そんなあからさまだと、怪しまれないか?」
「だいじょうぶ、ゴブリンは能天気だから」
ベテラン冒険者の彼女がそういうならばと、荷物から取り出したごぶりんホイホイをSet!
その後、ふたりが茂みの陰に隠れて様子を伺っていると、洞穴の中から二匹の小さなゴブリンが姿を見せたかと思えば、片方がすぐさま地面に落ちている団子に気づいた。
「ゴブゴブーッ?(意訳:なんだゴブかこれ?)」
「ゴブッ! ゴブゴブ!(意訳:わぁっ! なんだか美味しそうな匂いがするゴブね!)」
二匹のゴブリンは食べ物を見つけてピョコピョコと嬉しそうに飛び跳ねた。可愛らしいヌイグルミがダンスをしているようで、とても心が和む光景、しかしヤツらは害獣だ。
「ゴブゴブブ♪ (意訳:食べてみるゴブよ♪)」
「ゴブッゴブブッ♪ (意訳:仲良く半分こするゴブね♪)」
可愛いゴブリンが仲良く団子を分け合う姿を見ていると心がほっこりするなぁ。しかしアレは害獣だ。
もぐもぐとおいしそうに呪い団子を食べたゴブリン。すると、すぐさま二匹の額にじわりとドクロマークが浮き出たではないか、どうやら呪いが発動したようだ。
「ゴブ? ゴブゴーブ、ゴブーゴブブゴブ! ゴブブブッ! (意訳:あれ? オマエのおでこ、なんか絵が描いてるあるゴブよ! かっこいいゴブ!)」
「ゴブーゴブブゴブ! ゴブゴゴ、ゴブゥゥ!」(意訳: オマエのおでこにも絵が描いてあるゴブよ! いけてるゴブ!)
「ゴブゴブゴブー♪ (意訳:みんなにも見せるゴブ♪)」
「ゴブッブブー♪ (意訳:お父さんやお母さんにも見せてあげるゴブ♪)」
二匹は嬉しそうにピョコピョコ飛び跳ねながら、洞穴の奥へと戻って行った。自分たちが呪いのキャリアーになったことも知らず、大好きな両親や友達と楽しさをわかちあうために……。
「これで後は巣にいる他のゴブリンが呪いに感染するのを待つだけ」
「胸が痛いッ!!」
一部始終を意訳つきで見届けたアドニスは心にダメージを負い、悲痛な面持ちで呻いた。
「ゴブリン退治に必要なのは、罪悪感に負けない強い気持ち」
「なんて過酷なクエストだ……」
ゴブリン退治が不人気とされるのは賃金が安いのもあるが、一番の理由はこれなんだろうなとアドニスはしみじみ思った。
*
さて、発動した呪いによってゴブリンがデスるまで小一時間程かかるらしいので、アドニスたちは洞穴から少し離れた場所にある泉のほとりで、携帯した食料で腹ごしらえをすることに。
これはルヴィアと親睦を深めるチャンスだと、アドニスは小粋なトークで彼女に接近を試みる。上手く女神様から託された使命を伝えることができれば、お乳を搾らせてくれるかもしれない!
「ところでルヴィアは神様を信じてるかい? 実は俺、女神様から世界を救うための使命を与えられていて、きみに協力をして欲しいことがあるんだ」
「ごめんなさい、宗教の勧誘は間に合ってる」
バッドコミュニケーション! ルヴィアからの好感度が下がった。
それでもアドニスがめげずに再チャレンジしようとしたき、ルヴィアの猫耳がピクンッと揺れたかと思うと、彼女は突然食事を放りだし洞穴の方へと駆け出したではないか。
いったい何事かと遅れてアドニスが後を追いかけると、ゴブリンたちの巣の前で異様な光景を目の当たりにする。
「GOBUU!」
そこにはアドニスよりも上背のある巨大なゴブリンがいた。外見はそのままにゴブリンが巨大化した姿は、大きなヌイグルミのようでとってもファンシーである。
「ホブゴブリン……どうしてこんなところに」
しかし、緊張をはらんだルヴィアの声からするに、どうやら状況は芳しくないようだ。
「あれは普通のゴブリンと違うのか?」
いくらデカかろうと所詮はゴブリンだろうと油断するアドニスに、ルヴィアは首を横に振る。
「ホブゴブリンは見た目がゴブリンに似てるけど、全く別の種類のモンスター。だから、ゴブリン用の呪いは効かない。しかもホブゴブリンは人間の女を犯して子種を植え付け孕み袋にする。冒険者ギルドでも特別危険指定されてる凶悪モンスター」
「なんてこった……」
まさか、そんな恐ろしいモンスターが村の近くに潜んでいたことにアドニスも戦慄する。
「きっと、ゴブリンが大量発生した理由も、ホブゴブリンから逃げてきたから。あいつはゴブリンを食べる」
みると、逃げ惑うゴブリンの一匹がホブゴブリンの手に捕まっていた。
「ゴブブゥゥ! (意訳:助けておかあさーん!)」
「ゴブブブゥゥッ! (意訳:ゴブ吉ぃぃぃぃ!)」
ホブゴブリンはあんぐりと口を開けると、無造作にゴブリンを口の中に放り込んだ。
「GOBUGOBU (意訳:うまうま)」
めきゃっごきゃっぐっちょっばっきょっ──ごっくん。
見た目はファンシーなヌイグルミがモグモグしてるだけなのだが、なにかが砕けたり潰れたりする生々しい音とともに、飲み込まれたゴブリンの悲鳴が消える様子はホラーでしかなかった。
「うわぁ……」
「依頼にはなかったけど、このまま放っておけば危険、即刻退治する」
一方でベテラン冒険者のルヴィアは動じる様子もなく、淡々と新しいターゲットに狙いを定めると、腰のナイフを抜いた。
「アドニスは危険だからここに隠れていて」
「ひとりで大丈夫なのか?」
「うん、一匹ならわたしだけで対処できる」
そう言って飛び出したルヴィアは素早く背後からホブゴブリンに近づくと、気づかれる前に首元に刃を突き立てた。
ナイフの切っ先が刺さるものの、外見に見合わず硬い表皮によって刃を深く刺しこむことはできなかった。
「GOBU!? GOBUU!! (意訳:痛ってぇなぁ!? なにすんじゃワレぇ!!)」
ホブゴブリンは鬱陶しそうに手を振ってルヴィアを捕まえようとするが、ルヴィアは華麗な体捌きによって掠らせもしない。
ホブゴブリンの攻撃を躱しながらルヴィアは何度も切りつける。一撃では軽傷しか与えられないが、次第にホブゴブリンの傷が増えていく。
動き回るルヴィアは息を切らせることなく、冷静に淡々と攻撃を加え続ける。実に危なげない戦いだった。このまま何事もなければ、やがて仕留めることができただろう。
もう一匹のホブゴブリンが出現していなければ──。
「ッ……!?」
突如として背後から投げつけられた丸太のように大きな棍棒。
気配を察したルヴィアはすんでで奇襲を躱すが、その隙に接近していたホブゴブリンの手に捕まってしまった。
いかに身のこなしが素早かろうが、単純な膂力では巨体のホブゴブリンかなうはずもなく、逃れようと身をよじっても、捕まえた手はビクともしない。
「GOBUGOBUN! (意訳:よくもやってくれたやんけネエちゃん!)」
身動きのできないルヴィアにもう片方の手を伸ばしたホブゴブリンは、あろうことか彼女の革の胸当てを掴むと強引に引きちぎる。
下に着ていた布の服もろともに無残に破け落ち、ルヴィアは白く美しい素肌を晒すこととなった。
滑らかな肢体は鍛えられた筋肉で引き締まって、腰付きもキュッとくびれているが、彼女の胸に実った豊満な乳房は女性らしい柔らかな弾力をもってタプンッと大きく揺れる。
見事なお乳だ。アドニスの思っていた通り、やはりルヴィアは隠れ巨乳だった!
「GOBUUUU♪ (意訳:うほっ、ええ乳しとるやんけ♪)」
そして、ルヴィアの裸を見たホブゴブリンの体に異変が現れた。
なんと、かわいいヌイグルミの股間から赤紫色をした人の腕ほどはあろうかというグロテスクなペニスがニョキニョキと生えてきたではないか、これはチン長60cm超えのモンスター級だ!
「GOBUGOO! GOBUBU! (意訳:よっしゃ! いっちょ孕み袋にしたるわ!)」
「GUBUBUBU! (意訳:とりまマーキングしとくべ!)」
後から現れた二匹目のホブゴブリンは、股間で表面をヌメヌメとテカらせたモンスターペニスを捕まっているルヴィアに向けて手で扱きはじめた。
「GOBU! GOBUBU!! (意訳:うッ、出るッ!!)」
びゅるるるっ! どびゅっ! びゅるるっ! びゅくっ! どびゅるっ!!
なんという早漏。ホブゴブリンはオナニーを始めたかと思えば、すぐさまペニスの先から粘ついた大量の白濁液を吹き出してルヴィアに浴びせたのだ。
「うぐっ……うっ、くさっ……」
鼻の曲がりそうなぐらい臭いホブゴブリンのザーメンを浴びせられたルヴィアは、身体中からドロついた白い粘液を滴らせる無残な姿にされてしまう。
「GOBUBUU! GOBUBUBU! (意訳:もう我慢できんわ! 今すぐ種付けしちゃるけんのう!)」
極太ペニスをルヴィアの体に擦り付けるホブゴブリン、人間の女があんなものを突っ込まれたら間違いなく壊れてしまう。
「ルヴィアを放せ鬼畜ども!」
自分の運命のお乳の相手となるルヴィアを孕み袋なんかにさせてたまるかと、怒り心頭で飛び出すアドニス。
「GOBU? GOBUGOBUBU? (意訳:おん? なんか変なのが来たぞ?)」
「GOOOBUGOBUGOBU!! (意訳:いいところなんだから邪魔すんじゃねえよダボが!)」
突っ込んでくるアドニスを迎え撃つべく、ホブゴブリンが巨大な棍棒を構える。
「だめっ、わたしのことはいいから、アドニス……逃げてっ」
「冗談だろ!」
アドニスが殺されてしまうと思ったルヴィアが止める。しかし、ここで彼女を見捨てるような男は主人公じゃないのだ。
「うぉおおおおお! ルヴィアをはなせぇえええっ!!!」
恐れることなく勇敢に、まるで物語の勇者のように、アドニスは囚われの猫耳美少女を助けるべく凶悪な鬼畜モンスターへと飛びかかった。
そして──。
「BUGO! (意訳:うっせえわ!)」
パッカーン!
ホブゴブリンのフルスイングした棍棒によってアドニスの体はボールのように天高く打ち上げられたのだった。