さて、ルヴィアとのゴブリン退治を終えた翌日のこと。
前回の搾乳で確かな手応えを感じたアドニスは、牧場で朝のひと仕事を終えると、森の中にある女神像のもとを訪れていた。
『よく来ましたねアドニス。あなたのスキルがレベルアップするには、あと4545の経験乳が必要です』
「おっ! 半分ぐらい減ったな。これならあと一人ぶんのお乳を搾ればレベルアップできそうだぞ」
いつものごとく、ルナリスを模した石像から天の声が聞こえてくると、どうにかノルマ達成の目処がつきそうでホッと胸を撫で下ろすも、あまり楽観できるような状況ではなかった。
「あとはもう、フォーリさんのお乳を搾るしかないんだけど……うぅむ」
今のところ、他に運命のお乳を持つ女性は見つかっていない。しかしながら、彼女は商業ギルドでも重要なポジションを任されているキャリアウーマン。野暮ったい村の牛飼いには高嶺の花だ。
普通に考えれば相手にしてもらえないだろうから、彼女のことは後回しにしてきたのだが、もはや他に選択肢は残されていない。
見知った仲ではあるものの、あくまでも、それはギルドと客の関係である。ここからどうにかして親密になるための足がかりが必要だった。
「どうしたもんかなぁ……」
難攻不落の要塞攻略にアドニスが頭を悩ませていた、そのときだった。
突如として女神像が淡い光を放ち始めたかと思えば、『これより、天界への転送を開始します』というアナウンスが聞こえてきたではないか。
「えっ? まだレベルアップしてないのに、なんで……」
いきなりのことに驚くアドニスをよそに、光は眩さを増してアドニスの体を飲み込む。
そして、光がおさまりアドニスが目を開けると、そこは今まで呼び出されていた真っ白な空間とは違い、周囲には美しい花々の咲く野原が広がっており、上を向けばのどかな青空が広がっていた。
「どこだここ?」
まさか手違いであらぬ場所へと転送されてしまったのかと不安になったが、少し離れた場所にある円形のドームテラスから、ルナリスが手を振っているのが見えた。
「ルナリス様!」
女神様の姿を見つけて安堵したアドニスは、急いで向かおうとするが、よく見るとテラスにはルナリスの他に二人、見知らぬ女性が席に座っているのに気づく。
ルナリスと一緒にいるということは、彼女たちも只の人ではないだろう。戸惑いながら近づくアドニスを、ルナリスは優しい笑顔で迎える。
「よくきてくれましたねアドニス」
いつもと変わらぬ穏やかな口調のルナリスだが、彼女の両サイドに座っている女性ふたりにじっと見つめられて少々居心地が悪い。
「あの、ルナリス様……これはいったい」
「すみません。お友達とお茶会をしていのですが、ふたりにアドニスの話をしたら、どうしても会ってみたいというので、せっかくなのでお呼びしちゃいました」
「なるほど、お呼ばれされちゃいましたか」
「紹介しますね。こちらは私のお友達の──」
「こんにちはー、わたし女神アスーリアだよ。よろしくねアドニスくん」
ルナリスが言い終わるよりも先に名乗りだしたアスーリアと名乗る女神は、一見すれば、まるで踊り子のような露出の多い衣装を着た美少女だった。
美しい銀髪と透き通るような白い肌、幼さを感じさせる顔つきに、すらりとした華奢な手足、まるで妖精のような可憐さと花のような愛らしさを兼ね備えた超絶美少女である。
ルナリスのようなムチムチたっぷんが大好きなアドニスをして、完璧すぎる可愛さに当てられて顔が熱くなってしまう。
「はっ、はいっ! お目に書かれて光栄です、アスーリア様」
いくら可愛かろうと、相手は女神様である。アドニスは失礼がないように姿勢を正してお辞儀をしたが、クスクスと笑うアスーリアに手を握られてギョッとする。
「そんなにかしこまらなくていいよぉ、ルナリスからアドニスくんの話を聞いて、ずっと会ってみたいと思ってたんだぁ。だからわたしとも、仲良くしてくれたら嬉しいな」
天上の存在とは思えない気やすさで、緊張をほぐすように手の甲をしながら、花が咲いたような笑顔を向けるアスーリア。これは男が絶対に勘違いしちゃうやつだ!
(くっ……危ない! もしも俺が童貞だったら今のでガチ恋しちゃうところだったぜ……)
近くにルナリスがいたこともあり、かなり心が揺らいだが、なんとか平静を保つことに成功する。
しかし、アスーリアの可愛さ攻めはまだ終わりではなかった。
「ふふっ、アドニスくんて、けっこう可愛い顔してるんだね。あっ、でも体はがっしりしてて、男の子って感じだなぁ、腕とか太くて、わたし好きだなぁ」
「おっ、おっ、おふっ……」
遠慮なしにアドニスの腕やら胸板やらをペタペタたと触ってくるアスーリア。あまりにも近い距離感に戸惑いながらも、可愛いすぎる女神様のスキンシップはもちろん嫌だとは思わない。
しっとりとした手の温もりと、彼女から漂ってくる甘い蜜のような匂いに、アドニスの心臓はバクバクと鳴りっぱなしだ。
(落ち着けぇ、流されちゃだめだ。俺にとっての至上の女神はルナリス様なんだから)
推し変はしない! アドニスはルナリスのおっぱいを頭に思い浮かべながら、アスーリアの過剰なスキンシップに耐える。しかしそのときだった。
「ここはどうかなぁ?」
「ふぉぉっ!?」
あろうことか、アスーリアの手がいきなり股間な息子を握ってきたではないか。これにはアドニス思わず前傾姿勢である。
「わぁっ、アドニスくんの、すごく立派~」
「ちょっ! えっ!? アスーリア様!?」
「どれくらい大きくなるのかなぁ?」
驚いて固まってしまうアドニスの股間を、なおもアスーリアの手がさわさわとなでつける。いけない、このままでは息子まで固くなってしまいそうだ。これはエマージェンシーである。
緊急回避で後ろに飛び退くと、アスーリアはイチモツの大きさを測るように手をワキワキと動かした。
「あんっ、もう少しでオチンチン大きくなったのにぃ」
「えっ、えぇ……」
「戯れはおやめなさいアスーリア、彼が困っていますよ」
可憐な女神の口から飛び出すオチンチン発言にアドニスが呆然としていると、それまで黙っていたもうひとりの女神が静かな声で制止した。
「あっ、えっと」
「わたしは女神グラリンザ、会えて嬉しいわアドニス」
背中まで伸びる夜のように深い黒色の髪と紫色の瞳、太ももの付け根まで見える深いスリットの入ったドレス、グラリンザはアスーリアと正反対の艶やかな大人の色気をムンムンと撒き散らす妖艶な淑女だった。そしてなにより、ルナリスに勝るとも劣らない、たわわな神乳の持ち主でもあった。
「えぇ~、困ってたのぉ? ごめねぇアドニスくん」
グラリンザの爆乳についつい目移りしそうになっていると、アスーリアが申し訳なさそうに謝る。
「あっ、あははっ、いえ、大丈夫ですよ、あれは軽いジョークですよね?」
「えっ?」
「えっ?」
しかし、アスーリアがキョトンとした顔で小首を傾げ、なんとも言えない間があくと、グラリンザはやれやれとため息をついた。
「アスーリアのは冗談ではありませんよ」
「それは、どういう……」
「彼女はヤリマンですから」
「!?」
なんということでしょう! 女神様の口から、こんどはヤリマン発言が飛び出したではありませんか!
(いやいや、まさかそんな、こんな花の化身みたいな超絶美少女女神様がヤリマンだなんて……)
きっとこれは、女神流のブラックジョークに違いないと思ったが、当のアスーリアは気を悪くした様子もなく、あっけらかんとした笑顔をアドニスに向けて一言。
「えへへ、わたしぃ、おっきいオチンチンが大好きなんだぁ」
「!?」
「ちなみに、天界の男神の半分近くが彼女の穴兄弟です」
「座右の銘は神類穴兄弟だよ~」
マジでやべぇ神レベルのビッチだった。
「ちっ、ちなみに、アスーリア様は何を司る女神様なのでしょうか?」
「わたし? わたしは【性交】と【友愛】の女神☆」
「それ混ぜたらダメなやつぅっ!!!」
どうやらアドニスは、とんでもない場所に呼び出されてしまったようだ。