さてさて、私は今日も今日とて仕事を抜け出し、ゲヘナ学園の敷地をうろちょろしていた。
先日はアビドスでノノミと甘えん坊プレイを堪能したので、今日は少し違った趣を味わいたいところ。そういう意味ではゲヘナほど刺激を求めるのに適した場所はないだろう。
可愛いゲヘナっ娘を探し求め、うきうきとキャンパスを見回していた、その時──冷たい視線が背中に突き刺さるのを感じる。
このゾクゾクするプレッシャーは……間違いない、ヤツだ!
振り向けば、そこには私が予想した通り、ゲヘナ風紀委員のイオリが私のことを鋭く睨みつけていた。
ふっふ、やはり来たかイオリ!
彼女こそ、私の中にある”罵倒して欲しい女子ランキング”ナンバーワンの推し娘である。
切れ長でルビーのように赤い瞳、艶やかな銀髪のツインテール、シックに着こなされた制服の黒スカートから伸びる褐色の太ももはヒールの高い黒革のブーツがとてもよく似合っている。
ふひひっ、いつ見ても美味そうな足をしてるネ! そんなもの見せつけられたら、先生ペロペロしたくなっちゃうじゃあないかッ!
私が彼女の足に性的な興奮を覚えていると、邪な気配を察したのか、イオリは汚らわしいモノを見るような目で銃口を私に向けて構えた。
「不審者発見、射殺する」
おっとぉ、罵られるのは快感だけど、鉛玉はのーせんきゅぅ!
慌てて両手を上げ無抵抗を示すと、イオリは呆れた様子でため息をつくと銃を下ろした。
あぶないあぶない。
キヴォトスは実弾をエアガン感覚でぶっぱなすトリガーハッピーな学生たちの巣窟である。彼女たちは例えショットガンを近距離でブチ込まれても痛い程度で済む(なんでだ?)が、私は流れ弾が当たっただけでデッドエンド。
キヴォトスで暮らすということは常に命の危険と隣り合わせ、些細な選択ミスが生死を分けるのだ。
まったくイカレてやがるぜ!
なら、どうして私がそんなイカレた学園都市で先生をしているかって?
そりゃあ女の子が可愛いからに決まってるだろ!?
どの学園も可愛い女の子ばっかり、なのに男の先生は私一人だけ、つまりハーレムである。まあ、大抵は可愛い見た目に反してブッとんだ個性の持ち主だったりするのだが──。
イオリのことも初めて出会ったときから私は気に入っていた。彼女に冷たい目で見られるたびに股間が疼いてしかたがない!
さてと、今日もグッドコミュニケーションでイオリの高感度を上げちゃおうかな!
やあイオリ、放課後は私と一緒に遊ばない?
「遊ばない。今は見回り中だから」
そんなこと言わないでさ、一緒に遊んでくれたら大人のカードでイオリの好きなものなんでも買ってあげるよ?
「いらない、なんか言い方が気持ち悪いし」
Oh……バッドコミュニケーション。
どうしてかイオリは私につれない態度ばかり取る。
今だって、生足を舐めるようにガン見してるだけなのに蔑んだ視線を私に向けてくるじゃあないか。
そんな目で見られたら余計に興奮しちゃうだろぉ!?
「いつも学園の中をうろちょろして、シャーレの先生はそんなに暇なのか?」
どうもイオリには私がダメな大人だという印象が根付いてしまっているようだ。いけないいけない、ちゃんと誤解を解かなきゃ。
私にとっては仕事よりもイオリと遊ぶことの方が大事なんだよ!(これはキマッたね)
「あっそ」
あふぅっ、びっくりするほどの無反応。これにはたまらず勃起しかけてしまう。
「はぁ……先生は大人なのに、どうしてそんななんだ?」
そんなとは?
「いつも不審な行動ばかりして、なんか言うことも気持ち悪いし」
ひどいっ! 私は気持ち悪くなんかないよ! これでも立派な大人だよ! シャーレの先生だよ!?
「だったら、ちゃんとした大人らしいこと言ってみて」
イオリちゃんの太ももペロペロ〜。
「気持ち悪いっ! どうして先生はそんな気持ち悪いことを平然と言えるんだ!」
私はただ、素直な気持ちを口にしてるだけなのに、どうすればイオリに伝わるのだろうか。
イオリちゃんラ〜ブ!
「こっちくるなヘンタイ!」
愛情を込めたハグをしようとにじり寄ったら、またもや銃口を突きつけられてしまった。
「先生の歪んだ本性はもう知ってるんだ、うちの生徒に手を出したら許さないぞ」
はぁ、イオリはそうやってすぐに私のことを「ヘンタイ」だとか「気持ち悪い」だとか「死ねゴミ野郎」だとか。
「いや、そこまでは言ってないけど……」
けどさ、そもそも、私がこんなふうになったのはイオリにも責任があるってことを忘れてるんじゃないかな?
「は? なんで私が先生のヘンタイ性に責任を持たないといけないんだ?」
確かに私はイオリを性的な目で見てるよ? イオリの足を見てるだけで恥しながら勃起しちゃうよ?
「気持ち悪さが突き抜けてる! 死ねヘンタイ!!」
けどね、それもこれも、イオリが私に土下座で足を舐めさせたりなんてしなければ、イオリの足の味さえ覚えなければ、私がこんな性癖に目覚めることはなかったんだよ!
先生に足を舐めさせるハレンチ極まりない行為を要求したイオリにも責任があるんじゃないですかねッ!?
「あっ、あれは……先生が本気で舐めるとは思ってなかったから……」
いいのかなぁ、ゲヘナの風紀委員であるイオリがそんな変態じみたことを先生にさせたなんて、あのときは有耶無耶にしちゃったけど、これはヒナに直談判しなきゃいけないかもなぁぁっ!
「やめろっ、委員長は冗談が通じない人なんだ!」
だったら責任取ってぇぇっ! イオリが私をこんな体にした責任取ってよぉぉっ!!! うぇぇ〜ん!!!
「おっ、おい、こんなところで泣くな! 人が見てるだろ!?」
いい歳した大人が突然目の前で号泣するという異常な光景に困惑するイオリ。
学園内に響き渡る私の泣き声に周囲の生徒が何事かと騒ぎ始めると、彼女もマズイと思ったのか、私の口を塞いで人気のない場所へと連れて行った。
ふっふっふっ、全て計画通り。これは「イオリちゃんと二人っきりになってエッチなことしちゃおうぜ作戦」の前段階に過ぎない。
私がただのヘンタイだと思っただろう? 残念、シャーレの先生は頭のキレるヘンタイなのだよ!
*
放課後の保健室を窓から差す夕陽がオレンジ色に染め上げる。窓から外を眺めていた私は眩しさに目を細めた。う〜ん、ノスタルジぃ〜。
ここにいるのは私とイオリの二人だけ。そういえば、前にもこんなことあったよね? ここれでイオリの背中をペロペロしたんだっけ?
「……してない」
日課のパトロールを邪魔されたイオリは不機嫌そうな顔でベッドに腰掛けている。
えへっ、怒った顔のイオリちゃんも可愛いゾッ☆
「やめて」
ほっぺをツンツンしたら冷たく手を叩かれた。
「先生のせいで予定が台無しだ」
ブスッとした口ぶりからは静かな怒りを感じる、まずい、これは本当に怒ってるやつだ。
なんとか機嫌を直してもらうためにも、ここは大人として紳士に対応せねばなるまい。
私は静かに床の上に正座すると、イオリの前でふかぶかと頭を下げて言った。
お願いします。イオリちゃんの足をペロペロさせてください────と。
「はぁ………………」
返ってきたのは長いため息と居心地の悪い沈黙。
あっれぇ、これは本気で怒らせっちゃったかな?
ちなみに、土下座してイオリを見上げる格好になったせいで、スカートの奥に白い逆三角形がのぞいているのを私は見逃さなかった。
うはっ、たまらんのう。
鼻の下を伸ばしてパンツを覗いていた私とイオリの視線がぶつかる。
いかん、余計に怒らせてしまった。
すぐにも罵倒の言葉が飛んでくると思ったが──しかし、イオリの取った行動は私の予想を大きく超えたものであった。
彼女はベッドに座ったまま、おもむろに靴紐をほどいてブーツを脱ぎ捨て、黒いソックスもスルリと抜き取ると、私に向けて素足を伸ばした。
「ほら、そんなに舐めたきゃ、好きなだけ舐めればいいよ先生」
けっして、「もぉ、先生はしょうがないなぁ、カワイソウだからヘンタイな先生に私の足ペロペロさせてあげる♡」というニュアンスではない。
その声には一切の優しさがなく、侮蔑だけが込められていた。
赤い瞳が私を見下している。これは人を見る目ではない。汚いゴミを見る目だ。
どうやらイオリは私を人間扱いするのをやめたようだ。
私の息子はズボンの中でめっちゃ勃起していた。