【1】俺はアドニス!搾乳王になる男だ!
”天与の儀”
それは人族の社会ではごく一般的な風習。
十歳を迎えた子供が教会で洗礼を受けることで、神様からスキルをひとつ授かることができる。
その日、村の教会では、少年アドニスが他の数人の子供たちと共に、天与の儀に臨んでいた。
儀式などと大仰な呼び方をしているが、やることは至って簡単で、祭壇で神父が聖言を唱える間、子供はひざまづいて祈りを捧げるだけである。
するとあら不思議。体のどこかに神の刻印が浮かび上がり、スキルを授かっているという流れだ。
たいていは手の甲だったりと、わかりやすい場所に紋様が発現し、スキル名が神託により神父から告げられる。
「ふむ、おまえのスキルは【駆け足】だな」
「なぁんだ、【駆け足】かぁ」
神父の言葉に、少年は少し不服そうに、けれど、自分の手に浮かんだ紋様を誇らしげに見つめた。
周りで見守っていた大人たちも「おめでとう!」と拍手をする。
ちなみに、与えられたスキルがその者の人生に大きな影響を与えるかといえば、実はそんなことはない。
なぜなら、スキルというのは、それほど役に立つ力ではないからだ。
例えば、先ほど少年が授かった【駆け足】は、ありふれたコモンスキルであり、その効果は、使用すると短い時間、ほんの少しだけ早く走れるようになる。
他にも【力持ち】というスキルを持つ者も多くいるが、使ったところで、素手で岩が砕けるようになるわけでもなく、せいぜい重たい水桶を持ち上げるのに役立つといった程度。
スキルは使用者の身体能力にも大きく影響されるので、ヒョロヒョロの男が【力持ち】を使ったところで、力自慢の男に腕相撲で勝つことではできないし、人が【駆け足】を使ったところで、犬より早く走ることもできない。
そのうえ、スキルを使用できるのは日に数回がいいところで、使いすぎると効果は低下し、逆に体力が尽きてへばってしまう。
だから、スキルを授かった子供は最初こそ「うぉぉぉ!これがスキルの力だぁぁ!」と、はしゃいで使うけれど、早く走ったり、重たいものを持ち上げたいのなら、スキルなどに頼らず鍛錬で筋力を鍛えた方がよっぽど効率的だということに気づいて、あまり使わなくなる。
あればちょっと便利だけど、なくてもべつに困らない。神様からの、ささやかなギフト。それが【スキル】なのだ。
とはいえ、数百人にひとりは、【剛腕】【俊足】などの、レアスキルを授かる者もいる。
ちなみに【剛腕】であれば、重たい水桶をふたつ同時に軽々持ち上げることができる程度には強力である。
村の子供たちは、「すごいスキルを授かったら、冒険者になってモンスターを倒すんだ!」なんて意気込んではいるが、世の中そう簡単にはいかない。
稀なスキルを授かる確率もそうだが、多少強くなったところで所詮はスキルだ。
レアスキルを授かった新米冒険者が凶暴なモンスターどころか、野盗にあっけなく殺されてしまうこともある。
冒険者として生き抜くのに必要なのは、神様からのギフトではなく、絶え間ない研鑽によって磨かれた技術と、経験に裏付けられた実力なのだ。
ゆえに、子供たちは下手にいいスキルを授かって無謀な夢を追いかけるより、コモンスキルを授かって、地に足をつけて生きる方が幸せなのだ。きっと彼らも大人になればそれが理解できるだろう。
そんな実情もあり、「もしかしたら、この村から凄いスキル持ちの英雄が生まれるんじゃね!?」みたいな期待は誰もしていない。
天与の儀とは、あくまで、子供の成長の節目を祝う年中行事でしかないのだ。
そして、前の子供たちが当たり障りのないスキルを授かっていき、いよいよアドニスの番が回ってきた。
「さあ、アドニス、次はおまえだ。ここに来て神に祈りを捧げなさい」
「はいっ」
神父に呼ばれた少年は、一段高くなった壇上に上がると、中央で跪き、両手を握り合わせ、目を閉じて神に祈りを捧げる。
(神様、お願いします。お父さんの役に立てるスキルを、俺にお与えください)
拾われっ子のアドニスは、まだ赤ん坊だった自分を男で一つで育ててくれた牧場主の養父のために、早く一人前になって恩返しをしたいと常々思っていた。
すると、願いに応えるように、アドニスは右手がほのかに温かくなるのを感じた。
目を開くと、アドニスの右手の甲には刻印が浮かび上がっていた。スキルが与えられた証である。
「やった! 神父様、俺もスキルがもらえました!」
目を輝かせて喜ぶアドニスに、神父も頷いてみせる。
「うむ、アドニス、おまえのスキル名は…………んンッ!?」
どうしたことか。神託を聞いた神父は朗らかだった表情をギョッとさせると、「マジかぁ……」と呟いて押し黙ってしまったではないか。
「あのっ、神父様、俺のスキルはいったい……」
「ああ、ぅむ、すまん。わたしも初めて聞くスキルだったのでな、少々驚いてしまった」
もったいぶった神父の言葉に、まさか、とてつもない伝説のスキルを授かったのではと期待が膨らむ。
「うぉっほん、アドニスや、お前が授かったスキルの名前は……」
「はっ、はい!」
「スキル【搾乳】だ」
「……はい? さくにゅう?」
「うっ、うむ」
「それって、牛のお乳を搾ったりする、あの搾乳ですか?」
「そっ、その通りだ。つまり、おまえのスキルは牛の、おっ、おちっ、お乳を……ぷっ、ぷふっ、ぷフフゥッ!」
途中までは必死に厳かな口調を維持していた神父だったが、「お乳」でついに堪えきれなくなり、盛大に吹き出してしまう。
つられて周りで見守っていた人々も、いっせいに吹き出した。
──うぷぷぅっ、おいっ、なんだよ【搾乳】って、そんなの聞いたことないぞ。
──ちょっと、笑ったら可哀想じゃない! 【搾乳】だって神様が授けてくれた、さくっ、にゅぅぅッ、ぷーっ! クスクスクスッ!
本来なら、どんなスキルを授かろうとも祝福されるべきだし、笑っている者たちにも悪気はなかった。しかし、まさかの【搾乳】である。これには失笑を禁じ得ない!
【搾乳】がツボにハマってしまった村人たち。いちど笑いだすともう止められなかった。笑いが笑いを呼び、爆笑の渦がアドニスを取り囲む。
「やっ……やっ……」
笑い者にされ、俯いて肩をプルプルと震わせるアドニス。
多感なお年頃の少年には酷すぎる仕打ち。笑っていた者たちも、少年の様子に気づいて、しまった、これは泣いてしまうのではと思ったが──。
「やったー!!!」
アドニスは両手をギュッと握り締めると、力一杯天に向かって突き上げて叫んだ。
彼の口から飛び出した叫び声には、怒りや悲しみは微塵も感じられなかった。
「ありがとうございます神様! これで俺も、お父さんに恩返しができます!」
アドニスの耳には周囲の笑い声など、最初からこれっぽっちも届いていなかったのだ。
【搾乳】を授けられたと教えられた瞬間から、彼が感じていたのは、このスキルなら養父の牧場を手伝うことができるという喜びだけ。
少年の純粋な心根を見せつけられた者たちは、神父も含めてバツが悪そうに咳払いをすると、パチパチと手を叩き始める。
「よっ、よく考えたら、【搾乳】ってすごく便利そうよね」
「たっ、たしかに、【搾乳】って響きがもう、ただものじゃない雰囲気を醸し出してる気がするよな」
「羨ましいわぁ、うちの子も【搾乳】を授かれば良かったのにねぇ」
「おめでとうアドニス! おめでとう【搾乳】!」
圧倒的な掌返しによって、さっきまで笑い者にされていたアドニスは、一転して周囲からの祝福に包まれた。
大勝利! これはアドニス大勝利!
「ありがとうみんな! 俺、このスキルでたくさん、お乳を搾るよ!」
「よく言ったアドニス! さあ皆さん、神の元でこの少年を祝福しましょう! うぉぉぉっ! アドニスうぉぉぉっ! 搾乳うォォオオォォッ!!!」
「「搾乳! 搾乳! 搾乳! 搾乳! 搾乳! 搾乳!」」
神父の音頭により、皆が手を叩き、声を張り上げ叫び、飛び跳ね踊り、半裸になって【搾乳】の少年を祝福する。
狂気の宴のごとき様相となった天与の儀は、こうして搾乳コールと共にフィナーレを迎えたのだった。
【2】アドニス天上に立つ!!
さて、天与の儀を終えたアドニスは、早くこのことを養父に知らせたくて、村はずれに位置する牧場に向かって走った。
「お父さーん!」
牧場で牛の世話をしていた養父が、アドニスの声に振り返る。
髪を短く刈り上げた、がっしりとした体格の中年男は、アドニスの姿を見つけて温和な笑みをうかべる。
「おおっ、おかえりアドニス。一緒に行ってやれなくて、すまなかったな」
「ううん、大丈夫だよ! それよりも、ねえ聞いてよ、俺もついにスキルを授かったんだ!」
「よかったなぁ。それで、どんなスキルをもらったんだ?」
父に問われて、アドニスはフフンと自慢げに手の甲を見せる。
そこには先ほどまで浮かんでいた紋様は見えない。神刻印はふだんは消えており、本人が意識したときや、スキルを使用したときに浮かび上がるのだ。
スキルのことを頭で念じると手の甲にまた紋様が浮かび上がる。
「これが俺のスキル、【搾乳】だよ!」
「ぶふぅっ!」
キメ顔で答えた息子に、養父はたまらず吹き出した。
「さっ、さくにゅっ……ぷっ、ぷフフッ……」
そして慌てて後ろを向くと、「ひっ、ひっ、ふぅぅぅぅ」と息を整えてから、もういちど息子に向き直る。
「うむ、それはなんというか、素晴らしいスキルを授かったなアドニス。お父さんは嬉しいぞ」
なんとか笑いを飲み込むことに成功した養父は、アドニスの頭をポンポンと撫でてやる。
「うん、これで俺もお父さんのお手伝いができるよ!」
「くっ! なんて、いい子に育ったんだアドニス!」
「俺のことは、今日から『乳搾りのアドニス』って呼んでよ!」
「まさか二つ名まで!?」
「搾乳王に俺はなる!」
ドンッ!!!
こうしてアドニスの乳搾り人生が始まったわけだが、前述したとおり、スキルは誰でも簡単に超常の力が手に入るような便利な能力ではない。
初めて【搾乳】を使用しながら牛の乳搾りに挑戦をしたアドニスは、残念ながらその効果を実感することができなかった。
ちょっとだけ搾るのが早くなった気もするが、それでも養父に比べたら全然遅い。
牛一頭からは一日にバケツで何杯ぶんものミルクを搾る必要があり、しかも、牧場では何頭もの牛が飼育されている。牧場の全ての牛から乳を搾るのは、大人でもかなり大変な作業である。
いかにスキルを授かったとはいえ、子供のアドニスには荷が重く、むしろ、最初はスキルの使用に体が慣れていないせいで、逆にすぐ疲れてしまう有様だった。
けれどアドニスはめげなかった。
(くそっ! 俺は負けない! こんなところで立ち止まってられるか! 俺はこのスキルで、お乳を搾るんだ!)
それは果たしてスキルの影響なのだろうか。アドニスは異常なまでの乳への執念を燃やして、不屈の精神力で毎日欠かすことなく牛の乳搾りに励んだ。
茹だるような暑さの日も、小さな体が吹き飛ばされてしまいそうな嵐の日も、手がかじかんで指の感覚がなくなるような雪の日も、アドニスは【搾乳】を使って乳を搾った。
搾って、搾って、搾り続けていくうちに、朝から始めて昼までかかっていたのが、半分の時間で済むようになり、さらに精進をしてもう半分、さらに半分と、どんどんスピードが上がっていった。
スキルの使用回数も、最初は日に数回が限界だったのに、倍に、さらに倍にと増えていき、いつの間にか、どれだけスキルを使っても疲れなくなっていた。
こんなこと、普通ならありえない。前代未聞である。
しかし、百年にひとりの乳搾りセンス。溢れるお乳への情熱。そして、神から与えられた【搾乳】の三つが揃ったことで、アドニスは自分でも知らないうちに、常人には超えられない壁を打ち砕いていたのだ。
スキルを完全に使いこなせるようになったアドニスは、まるで息をするようにお乳を搾った。
常在搾乳。
少年の人生はお乳と共にあった。自分の手はお乳を搾るために在るのだと、本気で思っていた。アドニスは純粋で根が真面目ないい子だったが、お乳が絡むとバカだった。
そして、八年が経過し、アドニスは立派な青年へと成長した。
精悍な顔つき、燃えるような赤毛、背はスラリと伸び、農業で鍛えられた体つきはガッチリと逞しい。
十八歳となったアドニスは、朝靄のかかる村の共同墓地で、ひとり墓石の前で祈りを捧げていた。
「父さん、俺、立派に牧場を守ってるよ。だから安心してくれ」
養父が病で他界したのは、昨年のことだった。亡き父から牧場を引き継いだアドニスは、今はひとりで牧場を切り盛りしている。
父への報告を済ませたところで、アドニスはすぐに牧場へと戻り、さっそく仕事へと取り掛かる。
まずは、たくさんいる牛たちから朝の乳搾りをしなければならないのだが、これを全てひとりでこなすのは普通なら大変な作業だ。しかし──。
「さて、やるか」
牛の乳房の下にバケツを設置して椅子に座ると、アドニスは精神を集中する。
「スキル【搾乳】」
発動と共に、右手の甲に刻印が浮かび上がる。その紋様は儀式で授かったときよりも輝きを増していた。
”スキルは成長する”
一般には知られていないことだが、極めて稀な事例として、一部のスキルは条件を満たすことで刻印に変化が起こり能力が成長するという記録が存在する。
しかし、成長要因が使用回数なのか、それとも他に特殊な条件があるのかは解明されておらず、世界中を探しても、スキルを成長させた者は数えるほどしかいないので、そんなのはただの与太話だと言う者もいる。
そんな偉業を、アドニスは人知れず、自分自身も気づかないうちに果たしていたのだ。
幼い頃から、ただひたすらに牛のお乳を搾り続け、お乳のことだけを考えて生きてきた彼が辿り着いた搾乳の極意。
それすなわち”乳への深い愛”だった。
乳からミルクを搾る。言葉では搾取する行為とされているが、本質は全く違う。
乳をいたわり、愛し、お乳から命の雫を解き放つ聖儀。
それこそが搾乳──ッ!
弱冠十五歳にして、アドニスはその境地へと至った。そのとき、彼のお乳への深い愛が、スキルを進化させたのである。
「さあ、今日もおまえたちのお乳を俺にわけておくれ」
そう言って、アドニスが牛の乳首に手を伸ばした瞬間、彼の手が四つに増えた。
いや、実際に増えたのではない。高速で動く手の動きが残像を作り出しているのだ。
ふたつの手で牛の四つの乳房を同時に搾る。常人離れしたスピードで動く手によって、空っぽだったバケツにみるみる牛乳が溜まっていき、瞬く間にいっぱいになる。
その間、なんとわずか十秒。おそろしく早い搾乳!
そして、ただ搾るスピードが早くなるだけに留まらず、アドニスが【搾乳】をした牛からは不思議なことに他と比べて乳量が増え、乳首の炎症だって治ってしまう。
「うん、今日も美味しいミルクだ」
搾ったミルクをひとすくいして味を確かめたアドニスは、満足そうに頷く。
ありふれた品種の乳牛だというのに、アドニスの手で搾られたミルクは濃厚なコクと果実のような豊潤な甘さに仕上がる。
「美味い。美味すぎる……ッ! これは品質Sランクぅぅっ!」と叫んだのは、アドニスが街で行商をしていたときに偶然通りがかった商業ギルドの長だった。
そんな縁もあり、村ではお求めやすい価格で飲まれている牛乳も、定期的に卸している街のギルドではその味が評判となって、今ではアドニス印のミルクとして高値で取引されている。
このように、一般的にはそこまで役に立たないはずのスキルだが、もはや彼の【搾乳】は常人の使うそれとはかけ離れたレベルに到達していた。
ちなみに、アドニス自身はその異常さに気づいておらず、たまたま彼が搾乳をする姿をみた村人は、尋常ならざる光景に畏怖を込めて、彼のことを『人間搾乳機《ヒューマノイド サクニューン》』と呼んだとか。
スキルのおかげで、ものの数分で搾乳が完了するも、あとは放牧している牛たちがのんびり草をはんでいるのを眺めていればいいだけ、というわけにはいかない。
彼のスキルが役に立つのはあくまで乳に限ったことであり、ミルクの出荷作業や、チーズ作り、野菜を育てている畑の世話、それらを全てひとりでこなさないといけない。
そうして、ようやく仕事がひと段落ついた頃には、輝く太陽が頭の真上に昇っていた。
「ふぅっ、そろそろ行くか」
額の汗を拭ったアドニスは、休憩するのかと思いきや、桶に水を汲むと牧場の裏手にある森の中へと足を踏み入れる。
木々の隙間から陽光が降り注ぎ、のどかな野鳥のさえずりが聞こえる獣道。奥へと向かってしばし歩いていくと、すぐに開けた場所に出た。
そこには、一際大きな大樹が根を張っており、幹にできたウロの中には、髪の長い女性を模した一体の石像が台座の上に祀られている。
(女神様は今日も美人だなぁ)
いったい誰が設置したのかわからないが、その精巧な造形から、きっと名高い彫り師が手掛けたに違いない。
アドニスが偶然見つけたときは、長年放置されていたせいで、蔦が絡みつき全体が苔むしている状態だった。
とりたてて信仰心が厚いわけでもなかったが、どうにも放っておくことができず、綺麗に磨いてみると、汚れの下からは芸術的なまでに美しい女性の素顔が現れたのだ。もしかしたら、この土地で崇められていた女神様なのかもしれない。
それ以降、アドニスは誰にもここの存在を知らせることはなく、あしげく通って、お祈りをしていた。
何を? 牧場の安泰? それもある。
けれど、いちばん熱心に祈ったのは、そんなことじゃあない。
アドニスの胸の内には、誰にも言えない秘密の願いがあった。
(どうか……どうか、俺に……女性のお乳を揉ませてください!)
おわかり、いただけただろうか?
【搾乳】スキルによって、お乳を愛し、お乳と共に生きてきたアドニスは、牛のお乳なら何万回も搾ってきた。
子供のころから乳搾りに全てを捧げてきたアドニスだからこそ、【搾乳】は開花したのだ。
しかし、およそ若者らしい遊びとは無縁に過ごしてきたせいで、雌牛のお乳は触り放題だったけど、女のお乳を触る機会など皆無だった。
つまりは未経験。圧倒的童貞!
心根も真っ直ぐに健全な青年として成長し、今や肩を並べる者はいない搾乳の達人となったアドニスだからこそ、女性のお乳に対する想いも尋常ではなかった。
(くっ、女性のお乳とは、いったいどんな感触がするんだッ!)
精巧な女神像はお乳の造形も素晴らしく、アドニスは女人の乳への想いを込めて、女神像のお乳に触れた。
形も、大きさも申し分ない。でも硬い! だって石だもの!
女神像を見つけたのはおよそ三年前、その間、アドニスは抑圧された女性の乳に対する気持ちを石像の硬いお乳に触れることで発散してきたのだ!
なんという罰当たり。
好青年に成長したアドニスだが、やはりお乳が絡むとバカになるところは変わっていないのだ。
「【搾乳】!」
おもむろにスキルを発動し、女神像のお乳を搾ろうとする男がそこにいた。
しかしミルクはでない。だって石なんだもの!
どれだけスキルが成長しようと、無から有は生み出せないのだ。
しかしアドニス諦めきれない。
「うぉぉぉおぉおぉ!!! 【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!」
若さ故の性欲が彼を奇行に突き動かしたのか、はたまた溢れるお乳への愛がそうさせたのか。
愚行としか呼べないスキル連打が百回に到達しようとしたその時だった。
────奇跡は起こった。
女神像から放たれた目も眩む輝き。白い光がアドニスを呑み込んだ。
「うおっ、まぶしっ!?」
視界が真っ白に染まり、たまらず目を閉じたアドニスが次に目を開けたとき、視界には見たこともない光景が広がっていた。
周りに生い茂っていた草木も、青い空も、土の地面も、全て消え失せて、白い空間がどこまでも続いている。
そして、なにもない世界で呆然とするアドニスの前には、見たこともない美しい女性が佇んでいた。
「ようこそアドニス、天上の世界へ」
【3】乳は出ているか?
突然のことで、彼女が何を言っているのか、自分の身に何が起こったのか、アドニスには理解できなかった。
しかし、目の前の女性が纏う神々しい雰囲気に、アドニスは無意識に跪いて頭を垂れていた。
(なんだ? 体が勝手に動いて……彼女はいったい……)
姿勢はそのままに、チラリと視線を上に向けたアドニスは、女の容姿を見て息を呑む。
艶やかな金色の長い髪。エメラルドのような神秘的な輝きを湛える瞳。慈愛に満ちた優しげな顔つき。
そしてなにより、圧倒的な存在感を放つ豊満なお乳!
女性が着ているシルクよりも滑らかで透けるほど薄い純白の衣は胸元が大きく開いており、はちきれんばかりのお乳を隠すには、あまりにも心許ない。左右の隙間から肌色の柔らかそうな乳房の曲線が見えてしまっているではないか。
(すごい……ッ! こんなお乳、見たことがない!)
村ではもちろん、街でだって、こんな素晴らしいお乳を持った女性には会ったことがなかった。
アドニスが思い描いていた理想のお乳をもった女性がそこに居たのだ。
まるで至高の芸術を目の当たりにしたような鮮烈な感動にアドニスが震えていると、女性はニッコリと微笑みかける。
「わたしの名前はルナリス。愛と繁栄を司る女神です」
「女神……さま!?」
いきなり自分のことを女神だと名乗る女性を前にして、しかし、アドニスは疑いなどしなかった。
理屈ではない。彼女の言葉はアドニスの魂に直接響き、それが真実であることを理解させた。神がかったお乳の持ち主はマジで神様だったのだ。
(言われてみれば、ルナリス様の容姿は女神像によく似ていらっしゃる。お乳の大きさ以外は……)
女神像のお乳はもう少し小ぶりで、手に収まるサイズだったが、どうやら、あれを彫った名工も、このお乳を再現することはできなかったとみえる。まさに、人の手には余る神乳だ。
そこでふと、自分がこれまで、女の乳房への情欲を発散させるため、女神像のお乳を【搾乳】するという罰当たりな行為をしていたのがバレているのでは? ということに気づく。
(もしもそうなら、神罰が下ってもおかしくはない……まさか、俺はそのために呼び出されたのか……!?)
アドニスの心の声を見透かしたように、ルナリスはこくりと頷いた。
「あなたのことは天上からずっと見ていました。あなたが女性のお乳に並々ならない想いを秘めていることも知っていますよ」
「おふぅ!?」
見られていた! 石像のお乳を搾乳する滑稽な姿を! これは神罰確定!!!
「もっ、ももも申し訳ございません! お許しを! なにとぞお許しを!!」
女神様に土下座しながら、アドニスは心の中で天国へ逝った養父へ謝った。ごめん父さん、どうやら自分はそっちに行けないみたいだ。だってこれから地獄に落とされるんだもの──と。
けれど、ルナリスはアドニスを咎めることはせず、頭を床に擦り付ける青年に手を差し伸べた。
「顔を上げてくださいアドニス。大丈夫、あなたを罰したりなどしませんよ」
「えっ……」
おそるおそる顔を上げたアドニスは、慈愛の笑みを崩すことのないルナリスに手を引かれ、女神の温かな手の感触にドキリとしながら、彼女の前に立ち上がった。
「でっ、では……どうして俺は女神様の元に呼ばれたのでしょうか? 俺は乳搾りしか取り柄のない、ただの牛飼いなのですが……」
「そうですアドニス、だからこそ、わたしはこの場にあなたを招いたのです」
ルナリスの言わんとすることが理解できず、目を瞬かせるアドニスに彼女は言葉を続ける。
「そのですね、いま、少し困っていることがあって……あなたに協力してほしいのです……」
どこか恥ずかしそうに、もじもじとした口ぶりで、ルナリスはそう告げた。
果たして、神様の困りごとに自分などで力になれるのかと、アドニスは疑問だったが、それでも麗しの女神様にお願いされたとあっては、断る選択肢などあるはずがない。
「おっ、俺にできることでしたら、なんでもさせていただきます!」
「まあ、ありがとうアドニス。感謝します」
「いっ、いやぁ、そんな……」
「それでは……」
嬉しそうにポンと手を合わせて微笑むルナリスの可愛らしい仕草に、つい鼻の下が伸びてしまうアドニスだったが、ルナリスがおもむろに首の後ろで留めてある衣の結び目が解かれると、彼の表情は一瞬で凍りついた。
留めるものが無くなったのだから、当然ながら胸を隠していた衣はぺろりとめくれ落ち、豊満すぎる乳房がたゆんと揺れて、アドニスの眼前に女神様の生乳が晒されたのだ。
「アドニス、わたしのお乳を搾ってもらえますか?」
「……………………」
ちょっと意味がわからなかった。
露わとなったルナリスの巨乳の迫力たるや、両手でも隠しきれないほどのボリューム。
ただ大きいというだけではなく、柔らかそうなのに重みで垂れた様子は一切なく、美しい丸みを維持したまま上むきに反り返って、先端には薔薇色の乳首がぷっくりと突き出している。
全てが完璧。まさしく完成された至高のお乳である。
見てはいけないと思いながらも、その素晴らしい神乳を前に目が吸い寄せられてしまう。
「あっ、えっ、俺が……ルナリス様の、おっ、おちっ、おちちを……搾る……?」
口にしてみても、言葉がまったく頭に入ってこない。現実感がなさすぎて、やっぱり、これは夢なんじゃないだろうかと疑ってしまう。
「そうなのです。最近、お乳の出がよくなくて……あなたの【搾乳】で母乳を搾ってほしいのです」
再度ルナリスに告げられて、アドニスは顔面蒼白になってブンブンと首を振った。
「そっ、そんなっ、俺ごときが女神様のお乳に触れるなど、バチがあたります!」
「いえ、バチは与えませんから大丈夫ですよ?」
「あっ、いやっ、しかしっ!」
ずっと女のお乳を触りたいと願っていたが、まさか女人をすっとばして女神様のお乳に触れるチャンスが巡ってくると誰が想像できただろうか。
村娘に「お乳搾って♡」などと言われたら、アドニスは「うっひょーい!」と喜んでモミモミしていただろう。しかし、女神様を相手にアドニスは完全にビビッてしまった。
てっきり快諾してくれると思っていたルナリスは、アドニスの反応が芳しくないのを見て、どうしたものかと首を傾ける。
「困りました。あなたがお乳を搾ってくれないと、世界が大変なことになってしまいます」
「どっ、どういうことですか?」
女神様のお乳と世界にどんな因果関係があるというのだろうか。
「お乳が張っていると神力が滞ってしまい、わたしの力が地上世界にうまく行き渡らなくなってしまうのです」
「そうすると、地上にはどんな影響が出るのですか?」
「わたしは人々の愛と繁栄を司っているので、まず婚姻率が下がります」
「はぁ、なるほど?」
「そうなると出生率も減少し、人口が減少した国は衰退し、貧困が広がり、多くの人が飢餓と争いで命を落とし、愛を忘れた人々はモヒカンでヒャッハーしながら滅びの道を辿ることになるでしょう」
「ふぉおぉっ!?」
最後の方は何を言っているのかわからなかったが、とりあえず厄災レベルで危険なことはアドニスにも理解できた。
やばい。女神様のお乳で世界がやばい。
「俺にルナリス様のお乳を搾らせてください!!!」
女神様のおっぱいチャンスかと思いきや、まさか世界の命運を握らされてしまった。今この時、人類の行末はアドニスの【搾乳】にかかっていると言ってもいいだろう。責任が重すぎて泣きそうである。これは強迫ってレベルじゃねえぞ!
「では、こちらにいらしてください」
「はっ、はい……」
一歩近づけば、そこにはもう手の届く距離にルナリスのたわわな乳房があった。
(いいのか? いいんだよな? これは女神様から直々にお願いされたことなんだし)
確認するようにルナリスの顔を見ると、彼女は何も言わず静かに頷く。
「そっ、それでは、始めさせていただきます」
「はい、お願いします」
緊張に乾いた喉がゴクリと唾を飲み込むと、アドニスは手に意識を集中させる。
「スキル【搾乳】」
スキルの発動によって刻印の輝いたアドニスの手が乳房に触れた。
「あンッ」
「おぁっ!?」
女神の口から発せられた艶かしい声に驚いたアドニスが慌てて手を離すと、ルナリスは頬を赤らめながら、ふぅっと息を吐いた。
「ごめんなさい。ちょっと、お乳が敏感になっているみたいで、気にせず続けてください」
「はっ、はい……では」
「んっ……」
再度、アドニスの手が乳房に触れると、ルナリスはピクンッと体を震わせながら、堪えるように瞳をキュッと閉じた。
(こっ、これが……ルナリス様のお乳の感触!)
さっきまで緊張してそれどころではなかったが、いざ乳房の感触に意識を向けると、今まで経験したことのない至極の柔らかさが手か伝わってきて、脳が震えるような幸福感をアドニスにもたらした。
なんて温かく柔らかいのだろうか。豊満な乳肉は押しつけられた手を優しく包みこむように吸い付いてくる。まさしく愛の女神がもつにふさわしい慈愛のお乳である。
「あァッ!」
「!?」
興奮のあまり力の入った指が、ぷっくりと突き出した乳首を掠めてしまうと、ルナリスがたまらず喘ぎ声を漏らす。
「あぅんっ、あっ、アドニス、そこは……」
「ももっ申し訳ありませんッ!!!」
アドニスは背中に冷や汗を垂らしながら、頭を振って邪念を消し去ろうとする。
(落ち着け俺、見ちゃダメだ。いつもやってる牛の乳搾りだと思って、搾乳することだけに集中しろ)
目を閉じ、呼吸を整え、【搾乳】に集中して手を動かす。
すると、手から伝わってくるお乳の感覚に、すぐさま違和感を覚えた。
いつも牛の乳を搾るときであれば、スキルを発動して乳房にふれた瞬間にミルクが吹き出してもおかしくないのだが、ルナリスの大きなお乳の中には、たっぷりの母乳が溜め込まれているのを感じるが、いくら揉んでも、途中で何かが詰まって乳頭から出てこようとしなかった。
「んっ……ぁっ、んんッ……」
その間も、ルナリスは乳房から伝わる刺激を感じて、もどかしげに身をよじっている。
今まで試したことはなかったが、もしかしたら女性のお乳に【搾乳】を使うと、なにか副次的な効果が出てしまうのかもしれない。
「ルナリス様、大丈夫ですか……?」
「はっ、はい……んっ、わたしは、だいじょうぶですから、あっ、そのままっ……続けてください……んぅうッ」
(なんかメッチャエロい!)
ほんのりと紅潮した肌が艶かしく、おまけにいい匂いが香ってくる。
(いかん、余計なことを考えるな、今はお乳を搾ることだけに集中しろ!)
自分に喝を入れるが、スキルを使っているのに一滴たりともお乳が出ないことに焦りが生まれる。
乳搾りに人生を捧げてきたアドニスは搾乳だけなら誰にも負けないと自負していた。しかし、ルナリスのお乳はそれを嘲笑うかのように搾乳を拒む。
女神様のお乳は、いまや目の前に立ちはだかる大きな壁となって、アドニスの自信を揺るがしていた。
(さすがは神乳……今まで俺が搾ってきたお乳とは格が違う!)
圧倒的な存在の前に、常人であれば自信を喪失してしまうところだが、それが逆にアドニスの職人魂に火をつける。
「たとえ神様のお乳が相手だろうと、俺の【搾乳】に搾れない乳はないッ!!!」
アドニスの決意に反応して、手に浮かんだ紋様が輝きを増し、【搾乳】の力がルナリスのお乳に流れ込んだ。
「うぉおおオオォッ! 唸れっ! 俺の【搾乳】ぅうぅううッ!!!!」
「ひぁああァァッッ!」
渾身の【搾乳】が炸裂した瞬間、アドニスは見た。女神様の嬌声と共に、乳首から吹き出した白い飛沫を。
それは枯れていた井戸から水が湧き出したように、勢いよく噴出した乳白色のミルクが正面にいたアドニスにふきかかる。
(やった、やったぞ! これで世界が救われるんだ!)
女神様のお乳からぴゅうぴゅうと飛び散る母乳を浴びながら、アドニスが達成感に浸っていたそのときだった。
いったいどうしたことか、最初は勢いよく吹き出していた母乳は、途中からみるみると勢いを失っていくではないか。
「えっ、なっ……なんで!?」
お乳の中には、まだ大量の母乳が残っているのを感じるのに、何かが邪魔をして、それ以上は搾乳ができない。
「くそっ!【搾乳】!【搾乳】!【搾乳】!」
必死にスキルを使用するが、勢いはどんどん衰えていき、ついに母乳の出は止まってしまった。
「そっ、そんな……」
掴みかけていた勝利が手からこぼれ落ち、落胆と共にアドニスは床に膝をついた。
【搾乳】を使いこなし、もはや自分に搾れない乳などないと思い上がっていたアドニスにとって、それは生まれて初めて味わうお乳への敗北だった。
「どうやら、今のあなたでは、これ以上、お乳を搾ることはできないようですね」
残念そうにルナリスが目を伏せる。
「あばばばばばば」
なんということだろう。アドニスから【搾乳】という取り柄をなくしたら、ただの牛飼いA(童貞)ではないか。これじゃあ主人公になれないぞ!
アイデンティティの喪失によって精神が崩壊しようとしていた青年を、ルナリスは優しく抱きしめた。
自分を挫折させた女神様のおっぱいに顔が押しつけられる。大きすぎる乳房の谷間はアドニスの頭をふんにょりとお乳の中へと呑み込んだ。
顔に吸い付く柔らかな乳肉。お乳についた母乳の甘い香り。どこまでも深い母性に包み込まれる感覚。母親を知らないアドニスにとって、それは生まれて初めて感じるママの温もりだった。
「諦めてはいけませんアドニス。あなたには無限の可能性があるのですよ。だから負けないで」
「ばぶばぶばぶぅゥッ!」
アドニス復活! アドニス復活! アドニス復活!
それはまるで不死鳥のごとく、一度は挫けながらも、神乳の中からおぎゃあっと蘇ったアドニスの瞳には精気が漲っていた。ついでに股間も勃起していた。
「俺やりますルナリス様! ルナリス様のお乳のためなら、なんだってします!」
「ありがとうアドニス。あなたには、これからも定期的に、わたしのお乳を搾りに来てほしいのです」
「ですが、俺の【搾乳】ではこれが限界で……」
「今回の搾乳で少しの猶予ができました。その間にあなたのスキルを成長させれば、もっとお乳を搾ることができるはずです」
「成長……いったいどうすれば」
「お乳を搾るのですアドニス。あなたのお乳への愛が、情熱が、強い信念が、きっとスキルを成長させてくれるでしょう」
ルナリスがそう告げたとき、アドニスの視界を白いモヤが覆い始めた。
「どうやら、ここまでのようですね。しばしのお別れです」
「ああっ! ルナリス様!」
「だいじょうぶ、あなたならきっとできます。わたしはいつでも、あなたのことを見守っていますよアドニス」
「ルナリス様……」
「信じるのです、あなたの中に眠る乳力《ちちぢから》を」
「乳力!? なんですかそれ!? ルナリス様! ルナリスさまぁぁ!!」
そこで視界は完全に白く包まれ、次に目を開けたとき、アドニスは森の中で女神像の前に立っていたのだった。
【4】『お乳らしく』でいこう!
「夢……だったのか?」
しかし、手に残っている女神様のお乳の感触が、体に染み付いたミルクの甘い香りが、それが現実だったことを証明している。
夢のような話だが、本当に女神様と会ったのだ。そして使命を託された。
【搾乳】を成長させてルナリス様のお乳を搾り、人類の滅亡を防ぐという大役を────!
「…………まじか?」
冷静に考えると、あまりにも馬鹿げていて「な…何を言っているんだ俺は……?」と、自分の頭を心配してしまう内容である。
しかし、女神様の言葉に嘘などあるはずがなく、放っておけば、そんな冗談みたいなことが現実に起こってしまうのだ。それこそ洒落になってない。
(ルナリス様は、お乳を搾ることでスキルが成長するとおっしゃっていたが、牧場で牛の乳を搾っているだけではダメな気がする……もっと違うお乳を搾らなきゃいけないんじゃないだろうか?)
けれど、なんのお乳を搾ればいいのやら検討もつかない。ただの牛飼いには難易度が高すぎるクエストだ。
女神様の無茶振りに、アドニスがほとほと困り果てていたときだった。
「アドニス様」
「えっ?」
誰もいないはずの森の中、とつぜん背後から名前を呼ばれたアドニスは驚いて振り向くが、そこには誰もいない。
(おかしいな、いま確かに名前を呼ばれたんだけど……)
「こっちですよぉ、アドニス様」
聞き間違いかと思ったが、またも名前を呼ばれ、視界の下でなにやら白くてフワフワしたものが動いているのに気づいた。
それは白い毛に覆われた犬のように尖ったケモノの耳。
下を向くと、腰の位置程でアドニスを見上げている小さな女の子と目があった。
年の頃は十歳ぐらいだろうか。ふわりとした白くて長い髪、ぱっちりと大きな瞳は元気いっぱいに輝いており、顔立ちはとても可愛らしい。
なにより特徴的なのが、顔の横についている耳とは別に、頭から生えている犬のような耳と、お尻でフサフサと揺れ動く尻尾である。
(犬人族の女の子か? なんでこんなところに……)
街では多様な種族が生活しているが、アドニスの村には犬人族は住んでいない。こんな人気のない森の中に幼い子がひとりでいるのもおかしい。しかも、自分の名前まで知っているのだから、ますます謎だ。
「きみはいったい……」
「わうんっ! わたしはルナリス様の命で、アドニス様にお仕えするため天界からやってまいりました、シロといいます!」
元気よく手を挙げて答える少女。いきなり仕えるだの天界だのと、普通なら子供の戯言としか思えないが、その口からルナリスの名前が出てきたとあれば信じない訳にはいかない。
「アドニス様のスキルを成長させるためのお手伝いをするように、ルナリス様からおおせつかっております!」
「なるほど、それはありがたいな」
ずいぶん幼く見えるが、自分ひとりでは、どうしていいのかわからず途方に暮れていただけに、天界からの協力者とあれば心強い。まさしく天の助けである。
「わうっ! シロにお任せください!」
爛々とした瞳はやる気が満ち溢れている。シロの明るさに励まされ、アドニスも俄然やれる気がしてきた。
「ああ、よろしくな。それでシロ、俺の【搾乳】を成長させるにはどうすればいいんだ?」
「それはわかりません!」
「…………」
元気だけは良い返事だった。
「えっと……ルナリス様から何か言伝とかは」
「なにも聞かされておりません!」
「そっかぁ」
ああ女神様。いったい俺にどうしろというのでしょうか。
盛り上がっていた気持ちがスンと下がっていくのを感じる。期待していたぶん、ガッカリ感がハンパない。
アドニスが落ち込んでいるのをシロも察したようだった。
「でっでも、ご安心ください。シロにはアドニス様のお役に立てる特技がありますので!」
「特技?」
「わうっ! 見ていてくださいね」
するとシロは、すんすんと鼻を鳴らして辺りの匂いを嗅ぎ始める。
(何をしてるんだ?)
一見すると訳のわからない行動だが、しばらく黙って見守っていると、何かを嗅ぎつけたのか、シロの耳がピコンッと揺れた。
「むむっ! アドニス様、こちらです!」
そう言ってシロはすぐ側の女神像の前に駆け寄ると、ペタンと座り込み、確かめるように匂いを嗅いでからアドニスの方を振り向く。
「ここです! アドニス様、ここを掘ってください!」
「おぉ?」
ぺしぺし地面を叩くシロの言葉に従い、近くに落ちていた石を使って地面を掘り返してみる。
そして、しばらく掘り進めていくうち、石がなにやら硬いものにぶつかった感触を覚え、慎重に堀分けていくと、土の中から古びた小壺が顔を出した。
引っ張りだして中を開けてみると、そこには年代物の硬貨が大量に詰まっているではないか。
国で流通している貨幣とは違う見たこともない模様が刻まれており、アドニスには目利きなどできないが、もしかしたら値打ち物かもしれない。
まさか、この場所にこんなお宝が埋まっているとは思いもしなかったアドニスは、ぽかんとした顔でシロを見つめた。
「どうしてここに埋まっているのがわかったんだ?」
驚くアドニスに、ケモミミ少女はむんっと薄い胸を張る。
「シロは吉兆を嗅ぎ取ることができるのです。この力で、きっとアドニス様のお力になってみせます!」
「おぉっ! 本当に凄いじゃないかシロ」
素直に感心した様子で、アドニスはシロの頭をすごいすごいと撫で回した。
「えへぇ、それほどでもぉ」
撫でられたのがよほど嬉しかったのか、シロはふにゃりと頬を緩めて尻尾を弾むように揺らす。
かわいいだけの幼女だと思って侮っていたが、さすがは神の使い、伊達ではないということだ。
「他にもなにか、できることがあるのか?」
「ふぇ? 他には、えっと……動物とお話をすることができます!」
「すっげえぇ!」
「えへへぇ、わふぅぅ」
「他には!?」
「わぅ!? 他には、えっと、えっとぉ……ごめんなさい、もうありません……」
エスカレートする期待に応えられず、シロは申し訳なさそうに耳をしょんぼりさせて謝った。
「アドニス様の期待に応えられないシロは、とんだ駄犬です……!」
「卑屈か!? いやすまん、ちょっと調子に乗ってしまった。これだけでも十分すごいぞ! シロはすごいなぁ!」
慌ててフォローするが、どうやら少女の矜恃を傷つけてしまったらしく、俯いた顔をなかなか上げてくれない。
「わぅぅ……でしたら、でしたら……」
そして、何を思ったのか、シロはとつぜん服の裾を胸の上までガバッと、捲り上げたのだった。
「アドニス様のスキルを成長させるために、シロのお乳を搾ってください!」
「!?」
それは、お乳というにはあまりにも平坦であった──。
ぺったこんで、まったいらで、つるつるだった。
白くてスベスベとしたおなか、起伏のない胸にはピンク色の可愛らしい乳首がツンとしている。
ぺったんたんたロリペったん!
そのとき、まるで時間が止まったかのように世界が静まり返り、アドニスは不可思議な現象を目の当たりにした。
アドニスの眼前に突如として浮び上がった二つの四角い枠。そこには、それぞれ何か書かれている。
<選択肢> ◆『YESロリータ!』 ◆『NOタッチ!』
(なんだこれは……俺に、選べということか?)
意味がわからない。しかし、この二択から感じるプレッシャーは尋常ではなく、これが物語の方向性《ジャンル》を左右する重大な分岐点となる……そんな気がしてならない!
アドニス決断のときである────。
→『NOタッチ!』 ピロン♪
シロの胸に手を伸ばしたアドニスは、触れる直前でピタリと手を止めると、たくし上げられた服を下ろして、未成熟なお乳をそっと隠した。
「うん、それはシロがもっと大きくなってからで大丈夫だからな」
「わぅ、そうですかぁ」
耳をシュンとさせるシロの頭を苦笑しながら撫でてやる。
危なかった。もし彼がここで選択を誤れば違う世界線の物語になっていただろう。
「とりあえず、いったん戻ろうか。まだ仕事も残ってるし、今後のことを決めるのはそれからだ」
「わうん! シロもお手伝いします!」
元気よく周りをピョコピョコと飛び跳ねるシロを連れて、アドニスは牧場へと向かう。
こうして、アドニスの搾乳物語は幕を開けたのだった。
【5】ひと目で尋常でないワンコだと見抜いたよ
牛飼いの朝は早い。
夜明け前の薄暗い部屋。ベッドで眠っていたアドニスは、体に染み付いた習慣によって自然と目を覚ます。
そこでふと、お腹の辺りにぬくいものを感じて毛布をめくると、そこには体を丸めた獣耳の少女がすやすやと寝息を立てていた。
(夢……じゃなかった)
昨日はシロを連れて牧場に帰った後、これからのことについて話し合ったものの、スキルを成長させる具体的な方法は思いつかないまま夜になってしまった。
とりあえず、今日明日で世界がどうこうなる訳ではないらしいので、これから色々と試してみようということになったのだが──。
「んぅっ……んにゅっ、わぅ……おはよーございます、アドニスさまぁ」
つられて目を覚ましたシロが、もぞもぞと体を起こして大きな欠伸をした。寝巻きがわりにアドニスの貸したシャツを着ており、たぶついた袖で眠たげな瞳をくしくしと擦る。
「なんでこっちのベッドで寝てたんだ?」
「あれぇ、なんででしょう?」
シロにはもうひとつのベッドを使うように言ったのだが、どうやら、寝ぼけて潜り込んでしまったようだ。
「眠かったら、まだ寝ててもいいぞ」
「わぅ、だいじょうぶです。シロもいきますー」
着替えてもまだ眠たそうにしていたシロだったが、井戸から汲んできた冷たい水でパチャパチャと顔を洗うと、すっかり目が覚めたようで、顔をプルプルと振る仕草がなんとも犬っぽい。
それから、溶かしたチーズを乗せたパンと目玉焼き、そして自慢のミルクで手早く朝食を済ませたふたりは、家の外に出て早朝のひんやりとした空気を大きく吸い込んでから、さっそく牛たちのいる牧場へと向かった。
「みなさん、おはよーございます」
シロが柵に近づくと、気づいた牛たちが鳴き声をあげる。
「アドニス様、まずは何をすればいいですか?」
「そうだなぁ、まずは牛のお乳を搾るんだけど」
さて、シロにできることは何があるだろうか? 力仕事を頼むわけにもいかないので、とりあえず、近くで見ていてもらおうかと思っていたアドニスだが──。
「みなさーん、アドニス様がお乳を搾るので、こっちに並んでくださーい」
大きな声でシロが呼びかけた途端、牧場に散らばっていた牛たちが、のそのそとアドニスに向かって集まってくるではないか。
「あっ、そういえば、動物と話せるんだっけ」
面食らいながらも、【搾乳】を使って、さっそく乳搾りを始めるアドニス。
「はい、つぎの方どうぞー」
一頭搾り終えるごとに、シロの誘導によって次の牛が所定の位置まで勝手にやって来てくれる。これは楽だ!
「アドニス様、この子、足が痛いって言ってますよ」
「お?」
言われて牛の足を見ると、たしかに蹄が歪んでいた。放っておいたら怪我につながっていただろう。アドニスだったら見逃してたね!
「みなさーん、今日はあっちの牧草地にいきますよー」
搾乳を終えると、シロの後ろを牛たちがぞろぞろとついてく。まるで訓練された兵隊のように見事な行進だ!
いつもなかなか言うことを聞いてくれないボス牛も、シロの言葉にはあっさりと従っている。なんということだろう、アドニスよりも遥かに有能じゃあないか。
「どうですかアドニスさま! シロ、お役に立ててますか?」
「お見それしました」
「わうっ♪」
牧場のカーストが揺らいだ瞬間だった。
*
「そういえば、お宝を見つけたり動物と話せたりするのは、シロのスキルなのか?」
作業がひと段落して早めの昼食をとりながら、ふと気になったことを尋ねてみる。
「いえ、スキルは神様が人に与える力ですから、シロにはありません。これは生まれつきです」
「え? シロって犬人族じゃないの?」
「わう? シロは神獣ですが?」
めっちゃ神だった。
「…………シロさん、俺のベーコンも食べますか?」
「わうん! いいんですかぁ!」
「どうぞどうぞ」
「アドニス様のような優しい方にお仕えできて、シロはしあわせです」
「そっかぁ」
美味しそうにベーコンをぱくつくケモミミ少女を眺めながら、やがてアドニスは深く考えるのをやめた。
【6】『運命のお乳』みたいな
午前中の作業も片付いたところで、アドニスは牛乳を街のギルドに卸すための準備をしていた。
ミルクがたっぷり詰まった一抱えほどの缶を次々と荷車に積み込むと、最後にシロの体を抱き上げて荷台の前方に座らせる。
「さて、それじゃあ行こうか」
「わうん! よろしくお願いしますねロバさん」
シロが声をかけると、荷車に繋がれたロバは鼻を鳴らしてゆっくりと歩きだし、アドニスが手綱を握って前を行く。
街道に沿って行けば獣の類も滅多に出ないし、街までそう遠くもない。
のんびりとしたロバの歩みに合わせてゴトゴトと揺れる荷台の上では、うららかな陽気を浴びて欠伸をするシロの獣耳にどこからか飛んできた蝶々が止まって羽を休めている。
そうして、何事もないまま半刻ほど進んだところで、遠目に街を囲っている高い外壁が見えてきた。
顔見知りの守衛に挨拶をして門をくぐると、にわかに街の活気がふたりを包み込む。
石畳の大通りに並ぶ露店には多くの人が集まり、そこかしこで賑やかな声が飛び交っている。
村とはまるで違う街の空気に、シロは物珍しそうに荷台の上からキョロキョロと辺りを見回した。
「わうっ! アドニス様、人がいっぱいですね」
「ああ、この街にはいくつもギルドがあるし商売人も集まるからな」
すれ違うのも人族だけではない。犬人族や猫人族など、街では多様な人種が暮らしている。
その中には当然ながら女性も沢山いて、たっぷんと大きく揺れるお乳もあれば、ぷるんと程よく実ったお乳に、ぷにっとした慎ましいお乳、アドニスにとって街はお乳の宝箱といっても過言ではない。
みちゆく女性の胸についつい目を奪われていたとき、ふと、女神様の言葉が頭によぎった。
『アドニス、お乳を搾るのです』
アドニスはピンときた! 股間にピンときたッ!
(もっ、もしかして……ルナリス様がおっしゃっていたお乳とは、動物ではなく、女性のお乳なのではないだろうか!?)
圧倒的気づき! 確証はないが、男の直感がそうに違いないと言っている。
つまり神はこうおっしゃったのだ。世界のために女の乳を搾れ──と。
(おいおい、参ったなぁ。いやしかし、これは女神様をお救いする尊い使命だし? だとすれば娼館を利用するのもやぶさかではないっ!)
お金を払ってお乳を搾らせてもらうのだ。世界を救うついでに童貞も卒業できちゃうのだ。ひと乳で二度美味しい名案である。
アドニスは息巻いて新乳説をシロに話してみた。
「例えばほら、あそこにいるセクシーな山羊人族のお姉さんなんて、じつに搾りがいのありそうな乳をしてるじゃあないか」
いかがわしい雰囲気の店が並ぶ狭い通りの一角で、立ちんぼをしているセクシーな衣装の女性を見つけたアドニスだったが、シロは荷車の上から鼻をスンスンと鳴らすと、首を横に振った。
「あの人からは吉の匂いがしません。たぶん違うと思います」
「そっ、そうか……やっぱり、そんなに簡単な話ではないか……」
がっくりと肩を落としてため息をつくアドニスの様子にシロは小首を傾げる。
「アドニス様は女の人のお乳を触りたいのですか?」
「おおん!? いやっ、これはあくまでも使命のためであって、べべべべつに以前から娼館に行ってみたかったとか、童貞を卒業したいだとか、そんなわけないし? やだなぁシロさん」
「わう?」
「ほっ、ほら、それよりも早く仕事を片付けような」
図星を突かれて慌てたアドニスは誤魔化すように先へと進んだ。そして、いくつもの建物が並ぶ中で、ひときわ立派な門構えをした館の前に辿り着く。
「おっきいですねぇ、ここがギルドですか?」
「ああそうだよ。色んな品物がここから売られていくんだ」
ギルドを通せば仲介手数料は取られてしまうが、自ら行商で売り捌くより遥かに効率がいい。卸したミルクはすぐに契約している相手へと配達される仕組みとなっているので無駄になることもない。
裏手に荷車を留めたアドニスが声をかけると、すぐに中から狐人族の女性職員が出てきた。
フサフサしたキツネ耳と尻尾は毛並みも美しく、手入れの行き届いた小麦色の髪は肩で毛先をふわりとカールさせている。
ぴしっとしたブラウスとスカートの職員制服に身を包み、長い睫毛と涼しげな瞳もあいまって聡明さを漂わせる美女だ。
そしてなにより、ブラウスの胸元を押し上げる、たっぷりとしたお乳が非常にセクシーである。
「お疲れさまですアドニスさん。納品ですね?」
「どうもフォーリさん、よろしくお願いします」
フォーリとはギルドに加入して以来の顔見知りで、ずっとアドニスのことを担当してくれている。
とても有能でおまけに美人。ギルドの花とも言っていい存在なのだが──。
「アドニスさんの仕事はいつも丁寧で助かります。先ほどは水で薄めたワインを納品しようとした不届き者がいたので二度とこの街で商売ができないように処したばかりなんですよ。ギルドの信用を損なってはいけませんからね。うふふっ」
「ひぇ……」
品物を確かめながら穏やかな口調で話すフォーリ。しかし、その目は笑っていなかった。
基本的に穏やかで優しい女性のだが、仕事に支障をきたすようなことをすると静かにマジギレするので恐ろしい。
それに、有能すぎるがゆえに仕事を一手に抱え込んでしまうタチなのだろう、忙しすぎてたまに目つきがヤバイときがあり、そういうときは下手に刺激すると絡まれることがあるので注意が必要である。
「はい、こちら問題ありません。それでは倉庫の方へ……あら?」
手早く検品を済ませたフォーリが、ロバの背中の上でじっと自分のことを見つめているシロの存在に気づいた。
「こちらは、アドニスさんのお連れの子でしょうか?」
「ああ、その子はシロっていって、えっと、訳あってうちで預かることになったんですよ」
「わうっ、シロですよー」
シロが元気よく手をあげて挨拶をすると、フォーリはショックを受けた顔でプルプルと震えだす。
「かっ、かわいい……っ、シロちゃん、頭を撫でてもいいですか?」
「はい、いいですよ」
フォーリはそっと手をシロの頭に伸ばすと、先ほどまでのデキる女から一変して、緩みきった顔で恍惚としながら幼女の頭を撫ではじめた。
「はぁぁ、いやされるぅぅぅ」
「わう♪」
仕事に疲れた女へ癒し成分を分け与えていたシロだったが、すぐに何かに気づいてハッとした顔をすると、ぴょんとロバから跳び降りてアドニスの元へ駆け寄った。
「あんっ、もっと撫でたかったのに……」
「どうしたシロ?」
もの足りなそうにしているフォーリのことは置いといて、アドニスがしゃがむと、シロは耳元でこそりと囁く。
「わうっ、アドニス様! フォーリさんから匂いがします!」
「ん? ああ、シロも気づいたか。彼女からはいつもいい匂いがするんだよな」
きっと香水をつけているのだろう、上品な香りが彼女の雰囲気にぴったりである。大人の女の色香にアドニスもドキドキだ!
「わうっ、ちがいます! 吉の匂いです! たぶんあの方がアドニス様の運命のお乳です」
「なん……だと……?」
いきなり、とんでもないパワーワードの登場である。
「運命のお乳?」
「わうっ、それこそがアドニス様のスキルを成長させてくれるお乳だと、シロの鼻が告げています!」
「えぇ……」
にわかには信じられないが、神獣シロの鼻が告げるというのなら疑うことはできない。
スキル成長に必要なのが女性のお乳だったらいいなと内心ラッキースケベを期待していたが、まさかその相手がフォーリだとは予想外である。
「ふたりとも、どうしました?」
こそこそ内緒話しをしているアドニスたちを怪訝に思ったフォーリが近づいてくる。
「わうっ、フォーリさん!」
「はい、なんですシロちゃん?」
「アドニス様にお乳を────」
「スタァァァップ!」
いきなり危険物をブッ込もうとするシロの口を慌てて後ろから塞ぐ。
「アドニスさん?」
「いっ、いやっ、うちの牧場のお乳は美味しいでしょって、なあシロ?」
「むぐむぐ」
「はあ、そうですね」
「ああっ、そうだった! ついでで申し訳ないんですが、この品も査定してもらえませんか?」
アドニスは話を逸らすために荷物の中から取り出した小袋をフォーリに手渡す。その中には森で見つけた古びた硬貨が入っていた。
それを見て、フォーリもすぐさまビジネスモードになる。
「これは、どうなさったのですか?」
「えっと、開墾をしてたら土の中に埋まっていたのを偶然」
「そうですか……少々お待ち頂くと思いますので、中へどうぞ」
フォーリに連れられて、建物の中にある受付カウンターの前で座って待つことになった二人は、周りに聞こえないようにコソコソと小声で話す。
「あのなシロ、普通はいきなりお乳を搾らせてほしいなんて言ったら、女の人は怒るんだぞ」
「わぅ……事情を話してお願いしてもダメですかね?」
「世界を救うために貴女のお乳を搾らせてくださいって? 頭おかしい人だと思われるだけだろうなぁ」
自分なら絶対に信じない。通報まったなしである。
「しかし参ったな……まさかフォーリさんのお乳だなんて、こちとら日がな牛の乳を搾ってる村人だぞ?」
ギルドの花とも言える才色兼備の受付嬢はあまりにもハードルが高く、相手にされないどころか下手をすれば今まで築いてきた信用を失い、最悪ギルド出禁になってしまいかねない。
「どうしましょうアドニスさまぁ」
「慌てるなシロ、乳搾りに焦りは禁物だ。心を落ちつけてお乳と心を通わせることが搾乳の極意なのだ」
「どうすればフォーリさんのお乳と心を通わせられるのですか?」
「それは……帰ってから考えよう」
「わぅ……」
宝箱を見つけたはいいが開けるための鍵がない。これは前途多難である。
「アドニスさん、シロちゃん、お待たせしました」
ふたりが意気消沈していると、戻ってきたフォーリがズッシリと重たそうな袋をカウンターの上に置いた。
「査定の結果は金貨三十枚となります。問題ないようでしたら、こちらにサインを」
「さんじゅっ!?」
運命のお乳問題が頭から吹っ飛んでしまうような高額査定にアドニス戦慄。
震える手でサインをすると、受け取った布袋の重みにゴクリと唾を呑む。シロに言われて、ちょっと地面を掘っただけなのに、牧場の売り上げを遥かに上回る大金が手に入ってしまった。
「わうっ、たくさんお金が貰えてよかったですねアドニス様」
「そっ、そうねぇ」
とりあえず、シロの鼻がすんごいことだけは理解したアドニスだった。
【7】それはお乳な出会いなの?
さて、シロのおかげでスキルを成長させるために必要な”運命のお乳”とやらを見つけることができた。
しかし、今のアドニスがフォーリのおっぱいをどうこうしようなんて、村人がドラゴンに挑むぐらい無謀である。
結局その日は取引を済ませた後、シロを連れてすごすごと退散せざるを得なかった。
牧場へと向かう帰り道、いかにして美人受付嬢のお乳を搾るかという難題に悩みながらも、棚ぼたで手に入った金貨三十枚の喜びもあって、アドニスが足取りも軽くロバを引いていたときだった。
「わうっ?」
行きと同じく荷台の上に乗っていたシロが、何かを察したのか、急に身を乗り出して辺りを見回した。
「どうしたシロ?」
「わうっ、アドニス様、匂います!」
「また!?」
知ってる知ってる、このパターン! これはお宝の匂いを嗅ぎつけたやつぅっ!
トレジャーハンターもびっくりのシロの鼻。アドニスはさらなる幸運の予感に胸を躍らせる。
「どっちだ!」
「わうん! あっちです!」
今度はいったいどんな財宝をもたらしてくれるというのか!
シロに導かれるままに、アドニスはロバを急がせた。
そして────。
「ヒャッハー!!! 命がおしけりゃ身ぐるみ置いてきなぁっ!!!」
「ひいぃっ! 誰か助けてくれー!!」
なんかモヒカンの男たちに馬車が襲撃されているところに遭遇した。
「えっと、シロさん?」
「わうっ、あそこから吉兆の匂いがします!」
「うっそ……めっちゃ野盗なんですけど」
今から街に助けを求めに戻っても間に合わないだろう。しかし、こちらは乳搾りが得意なただの牛飼いである。向かって行ったところで返り討ちにあうのが目に見えている。
「わうっ! だいじょうぶです! アドニス様はシロがお守りします!」
「そっ、そうか、それなら……!」
ちっこいとはいえシロは神獣なのだから、野盗ぐらい一捻りに違いない。強力な味方の存在に鼓舞されたアドニスは荷車を置いて駆け出した。
「そこまでだ! この愛を忘れたヒャッハーどもが!」
颯爽と駆けつけたアドニスに気づいた野盗たちが一斉に振り返る。
「ああん!? なんだテメエは! ぶっころされてえのか!」
「ヒャッハー! 獲物が増えた! 血祭りにしてやるぜえええ!!」
手にもった剣の刃を舌でベロリと舐めなが下卑た笑いをする野盗たち。その好戦的な態度にもアドニスは微塵も恐れない。だってか彼には神獣がついているのだから!
「ふっ、愚かなヒャッハー共め……それじゃあシロ先生、よろしくお願いします!」
「わうんっ!」
呼ばれて勢いよく飛び出したシロが野盗Aに向かってトテトテと疾る。それはまるで一陣の風の中を転がる毛玉のごとく!
相手はたかが野盗四人。さあ! ケモミミ幼女無双の始まりだ!!!
「わうっ!」
振り上げられた小さな握り拳が野盗Aに向かって力一杯叩きつけられる。
ぽこっ☆
「わうわうわうっ!」
ほこっ☆ぽこっ☆ぽこっ☆ぽこっ☆
無数の打撃が野盗Aの膝に直撃する! 凄まじい連撃に野盗Aは驚いた! しかしノーダメージだ!
「あん? なんだこのガキ」
野盗Aは軽く足を振ってシロを追っ払った。
「わぅん!?」
痛恨の一撃!
蹴飛ばされてコロコロと地面を転がったシロは、そのままノビてしまった。
「シロおぉぉぉ!?」
てっきり「なんだこのガキは! 化物かよ!?」という展開になると思っていたアドニスは、まさかの事態に愕然とする。
「なんだか知らねえが、そのガキもとっ捕まえて売り払ってやる!」
モヒカンの魔手がシロに伸びようとしたとき、アドニスは咄嗟に駆け出すと、シロを守るために身を呈して野盗の前に立ち塞がった。
「邪魔だぁっ! てめえから死ねええ!!」
野盗Aの振り上げた銀色の刃が鈍く光る。
そこからは、まるでコマ送りのような光景だった。
アドニスは鋭い刃の切っ先がゆっくりと自分の胸に吸い込まれていくのを見つめながら、これから襲ってくるであろう激痛を予感した。
「ぐああぁっ!」
たまらず目をつぶって悲鳴を上げる。切られた箇所から鮮血が飛び散り、焼けつく痛みがアドニスを襲う──はずだったのだが。
「ぐああああああぁぁ……ぁあ、あ、あれ?」
しかし、いつまで経っても痛みはなかった。どうしたのかと目をあけて見れば、刃は確かに布の服を切り裂きアドニスの胸に突き立てられているのだが、その先端は薄皮一枚切ることはなかった。
「え?」
「え?」
アドニスと野盗Aは、ふたりして間の抜けた声を出すと、互いにじっと見つめ合う。
気を取り直して、野盗はいちど刃を引いてから、アドニスの胸を剣で突いた。
「このっ! せいっ! おりゃっ!」
「え? え? え?」
野盗が何度も刃を突き立てようとするが、アドニスの体には文字通り刃が立たない。まるで皮膚と剣の間に見えない鎧でもあるかのようだ。
信じがたい現象に両者がポカンとして立ち尽くす。気まずい沈黙が流れる中で先に動いたのはアドニスだった。
「なんか知らんけど、オラァッ!」
「うげぇ!」
先制パンチを顔面に喰らった野盗Aは鼻血を垂らしてヨタヨタと後ずさる。
「くそっ、わけがわからねぇ、おまえらも見てないで手伝え!」
野盗Aの呼びかけにBCDがやってきて、四方から囲んでアドニスの頭を背中を腹を何度も斬りつける。
しかし、ことごく彼の皮膚に弾かれて無傷!
「なんだこいつ! バケモノかよ!?」
得体の知れない恐怖に動揺しながら必死に剣を振る野盗たち。アドニスもどうして自分がまだ生きているのかわからないまま殴って応戦した。
相手の攻撃は効かない。しかし、アドニスも素手では相手を倒しきれない。
野盗たちもそれがわかったのか、迂闊に近よってこなくなり、お互いに体力が削られて場が膠着状態に陥ったときだった。
ヒュッと風を切る音と共に、野盗の足に矢が刺さった。
「ぎゃあああ!」
悲鳴を上げて一人目が倒れると、続いて二人目が肩を射抜かれて倒れ込む。
「なんだ!? 新手か!」
動揺しているところに三人目が射抜かれて倒れると、残った一人が馬車の陰に逃げ込もうとしたとき、背後から風のような早さで颯爽と飛び込んできた人影が野盗を一瞬で組み伏せる。
そこでようやく、アドニスはその正体を目に捉えることができた。
女だった。背丈はアドニスよりもだいぶ低い。口元を隠したマフラーをたなびかせ、肩まで伸びた癖のある灰色の髪。頭に生えている三角型の獣耳と、お尻で揺れる長い尻尾は猫人族のそれだった。
猫人族の女は動きやすさを重視した体にぴったりとした革の軽装を身につけており、その風体と身のこなしは、おそらく冒険者だろう。スリムで引き締まったボディライン、しかし胸当てに隠されたお乳の反応をアドニスは見逃さない。ピンときたのだ。これは隠れ巨乳だと!
周囲を警戒していた猫人族の女は脅威を排除したことが確認できると、アドニスにそう言って口元を隠していたマフラーを下ろす。その素顔が、想像していたよりもずっと年若く綺麗な少女だったことにアドニスは驚いた。
「おわった……もう安全だから」
野盗をあっさり倒してしまう腕前に反して、可愛らしいという形容が似合う容姿と透き通った声にドキッとしてしまうが、すぐに近くでノビていたシロを見つけて慌てて駆け寄る。
「シロ、大丈夫か!?」
「わぅ~ん」
どうやら目を回しているだけで大きな怪我はないようだ。アドニスはホッと胸を撫で下ろすと猫耳少女に頭を下げた。
「ありがとう。おかげで助かった」
「ううん、あなたがこいつらの気を引いてくれていたおかげで簡単に仕留められたから」
「俺はアドニス。きみは?」
「ルヴィア」
猫耳少女は言葉少なに答えてから、剣で斬られてボロボロになったアドニスの格好に気づいて近づいてきた。
「傷を見せて。簡単な手当てならできる」
「いや、怪我はしてないから平気だ」
「やせ我慢はよくない」
ルヴィアは強引に服をめくって怪我の具合を確かめようとするが、傷一つないアドニスの体を見て驚きに目を見開いて、不思議そうにペタペタとお腹や胸を触る。
「ほんとだ、どうして?」
「あふんっ」
剣で斬られても平気だったけど、乳首を触られたら感じてしまう!
「えっと……ルヴィアは冒険者なのか?」
「そう。こいつら指名手配されてるから、街に連行すれば報酬が出る。取り分はどうする?」
「いや、助けてもらったんだし俺の報酬はいいよ」
「そう? じゃあ、そうする」
そんなやり取りをふたりがしていると、騒ぎが収まったのをみて馬車の中から小太りの中年男が顔を出し、アドニスたちに近づいてきた。おそらく馬車の所有者だろう。
「いやぁ、助かりました。おふた方にはなんとお礼を言ったらいいか」
ニコニコとしているが、どこか裏のありそうな信用ならない笑顔の男だった。
「わたしく奴隷商を営んでおりまして、危うく大事な商品が奪われてしまうところでした。おふたりには是非お礼をさせていただきたい」
男の言葉を聞いてルヴィアの目がすっと細まる。
「わたしは賞金首を貰ったから、礼なら彼に」
「そんな、ご遠慮なさらず」
「奴隷商はキライ」
「はっはっ、これは参りましたな」
ルヴィアの辛辣な言葉にも男は気を悪くした様子もなく笑って受け流した。きっとこういうことは言われ慣れているのだろう。
「もう行く」
気分を害したようで、猫耳少女は男からプイッと背を向ける。
「ルヴィア」
「じゃあね、アドニス」
最後にそれだけ言うと、ルヴィアはロープで繋いだ野盗たちを蹴り起こし、なかば引きずるようにして行ってしまった。
やれやれと嘆息した男は、残ったアドニスに歩み寄る。
「さて、それでは、あなたにだけでもお礼をせねばなりませんな?」
そう言って、奴隷商は薄暗い馬車の中に視線を向けるのだった。
【8】牛娘!きみにきめた!巨乳奴隷ゲットだぜ!
奴隷商の言葉から、そのお礼とやらがなんなのかアドニスにも察しがついた。
「いや、べつに奴隷とかは必要ないから。俺はただの牛飼いだし」
ルヴィアのように嫌悪しているわけではないが、アドニスも人を売買する奴隷商にはあまりよい印象を持っていない。シロの鼻はどうしてこの馬車に反応したのだろうか。
「まあまあ、家事をさせるもよし仕事を手伝わせるもよし、人手が増えれば何かと便利でございますよ。ささ、まずはご覧になるだけでも。気に入った者がいれば、助けていただいたお礼にお安くさせていただきますので、はい」
男は手を揉みながら下手に出つつも商人特有の押しの強さで迫ってくる。
「いや、けどなぁ」
どこぞの金持ちならいざ知らず、自分が奴隷を所有するのはどうにもおかしな気がしてならない。
アドニスがどうしたものかと困っていると、横たわっていたシロが意識を取り戻し、ゆっくりと目を開けた。
まだ完全に目が醒めてないのか、もぞもぞと起き上がってからボンヤリと辺りを見回す。
「大丈夫かシロ?」
「わぅぅ、なんかいけそうな気がしたけどダメでしたぁ」
「う~ん、見積もりがだいぶ甘いなぁ」
自分より大きな相手にも勢いで突っ込んでしまうヤンチャな子犬のようだ。
危なっかしいなぁと思いながら、とてとてと寄ってきたシロの頭をアドニスが撫でてやっていると、頭のケモ耳がピクンッと揺れ動く。
「わう?」
そしてなにを思ったのか、シロは馬車へと近づくと、ピョイッと中へ飛び込んでしまった。
「あっ、こらシロ、何やってるんだ」
慌てて駆け寄ったアドニスが暗い馬車の中を除き込むと、そこには枷をつけられた奴隷たちが物音を立てず静かに座っていた。しかも女ばかり。
若い娘からシロと大差のない幼子まで、皆一様に暗い顔をしている。これからどこの誰ともわからない相手に売られる運命なのだから無理もないだろう。
やるせない現実を目の当たりにして、やはり奴隷なんて──と思ったときだった。
「アドニス様!」
「ほらシロ、早くこっちにこい」
暗がりから姿を現したシロを手招きするアドニスだったが、その後ろから見知らぬ女性がシロに手を引かれて出てきたことに面食らう。
それは、どこかの令嬢を思わせるような淑やかな雰囲気を漂わせる牛人族の娘だった。
歳はアドニスと同じぐらいだろうか、頭には特徴的な横向きの耳と小さなツノ、艶やかなブラウンの長髪、優しげな印象を受ける目尻の垂れた瞳、すらりとした手足、そしてなにより──。
(なんて、なんて立派なお乳なんだッ!)
どたっぷんと揺れる乳房の迫力にアドニス驚嘆。牛人族の女性は胸が大きいことで有名なのだが、それにしたってこの娘はデカイ!
女は村娘によく見られる肩口がふわりと膨らんでいるワンピースをきているのだが、胸元が過剰に開いているせいで上乳と谷間が丸見えになっており、少し引っ張れば大きな乳房がこぼれてしまいそうだった。
その大きさは女神様を除けば、アドニスが今までみたお乳の中でもいちばんのBIG TITS!
ごくり……これはウシ乳!
アドニスが素晴らしい巨乳との出会いに感動でうち震えていると、後ろから奴隷商が営業スマイルで近づいてくる。
「これはこれは、お目が高いお嬢さんですな。その者は容姿、出自、器量ともに優れた逸品ですよ。ほら、お客様に挨拶をなさい」
「ミルフィーナと申します」
奴隷商に言われて、しずしずと頭を下げる牛娘ミルフィーナ。
きっと意図してないのだろうが、動きに合わせてタプンタプンと魅惑的に揺れる乳房を見せつけられ、さっきまで「奴隷なんてよくないよ!キリッ!」と主人公面していたアドニスの心までタプンタプンと揺れ動く。そこにシロが追撃を掛けてくる。
「わう! アドニス様、この方も運命のお乳の持ち主です!」
「本日二度目の運命のお乳いただきましたァッ!!」
これは天啓か? 天啓なのか!? 神の見えざる手がアドニスに運命のお乳を巡り合わせたとでもいうのか!!!
「はて? 運命がなんですかな?」
「あっ、いや、こうやって助けた縁もあるし、なんか彼女に運命感じちゃうなぁって、はは……」
「はっはっは、そうでしょうとも」
奴隷商はアドニスが彼女を気に入ったのだと解釈したのだろう。商機に目を光らせる。
アドニスは乾いた笑いで誤魔化しつつ、呼び戻したシロに問いただす。
「どういうことだよシロ、運命のお乳はフォーリさんじゃなかったのか?」
「わうっ、フォーリさんもですが、あの方からも同じ匂いがします」
なんということでしょう! 運命のお乳はひとりじゃなかったのです。その真実にアドニス愕然。
そのとき、彼の中では天使と悪魔の激しい論争が勃発していた。
『うっひょぉぉ! 運命最高! 巨乳牛娘最高! これは買うしかないでしょ!』
『いけません! いくら運命のお乳の持ち主だからといって、奴隷を買うなんて人の道に背きます!』
『いやでも、これは女神様から託された使命を遂行するためだし、むしろ買うのがジャスティスなんじゃね?』
『…………たしかに!』
『買っちゃおうZE★』
『買っちゃいましょうYO☆』
争いは秒で平定された。満場一致購入決定!
アドニスはこそりと奴隷商に耳打ちする。
「でもぉ、お高いンでしょう?」
「そうですなぁ、彼女はうちでも一番の目玉商品ですから、本来なら金貨五十枚と言いたいところですが……今ならなんとご奉仕価格! 金貨三十枚でいかがでしょう!」
本来ならとてもじゃないが手の出ない金額だ。けどあるじゃない! 今のアドニスにはまるで運命のごとく懐に入ってきた金貨三十枚があるじゃない!
「買っちゃおうかなぁぁッ!」
「まいどありぃっ!」
テレッテ~♪ アドニスは清楚系うし巨乳奴隷をゲットした!
こうしてアドニスは荷車ゴトゴト牛娘を乗せ牧場へお持ち帰りしたのだった。
*
窓の隙間から微かな光が差し込む薄暗い家の中。テーブルの前に座らされたミルフィーナはただならぬ雰囲気を感じて緊張に身を縮こませていた。
奴隷として買われたからには、どんな扱いも覚悟していたが、家に連れ帰られてからしばらく、向かいに座る純朴そうな青年と、横から身を乗り出している可愛い少女に、なぜか自分の乳房をガン見されていることに不安を感じずにはいられない。
「あっ、あの……ご主人様?」
「わうわうっ! おちちっ!」
「ひっ!?」
ミルフィーナの動きに反応して、シロが反射的に吠える。
いよいよ女神様から与えられた使命を果たせるとあって、神獣様もいささか興奮気味のようだ。今のシロはちょっぴりワイルドだぜぇ。
「待てシロ、まだ焦る時間じゃない」
「わぅ……」
「さて、ミルフィーナさん。こうしてあなたを奴隷商から買ったのは他でもない、あなたにやってもらいたいことが、あるからなんだ」
「はい、炊事洗濯、その他どんな雑用でもお任せくださいご主人様」
「あっ、うん、それは助かるんだけれども、それとは別にやってほしいというか、させてほしいことがあってだね……」
言いにくそうに、もにょもにょと口籠るアドニスの態度からミルフィーナは彼が何を言わんとしているのか察し、若干表情をこわばらせながらも、しっかりと頷いた。
「はっ、はい……男の方にお仕えするのですから覚悟はできております。その……エッチなこと、ですよね?」
「えっち!?」
恥ずかしそうに頬を染めるミルフィーナの言葉に、アドニスはショックを受ける。
(なにか誤解されている! いや、けれどお乳を触ることには違いないし、搾乳ってエッチなことなのか!?)
アドニスにとって乳搾りは神聖な儀式のようなものだが、それは性を感じさせない動物が相手だったから言えたこと。しかるに、目の前にいる娘の立派なお乳をはどうだ? イヤラシイことを考えずに搾乳は可能なのか!?
(無理だ! だってもう、そこにあるだけなのに、すでにエッチなんだもの!)
あまりに大きすぎてテーブルの上にタップンと乗っかってる見事な乳房に股間が疼いてしまう。これは勃起不可避!
「たっ、確かにエッチなことなのかもしれない……けど、俺はやらなきゃいけないんだ」
「はい……」
「ミルフィーナさん、俺にあなたのお乳を搾らせてくれ!」
「はい?」
両手をテーブルの上について頭を下げてお願いするアドニスだったが、それを聞いた途端、ミルフィーナの顔がサッと青ざめる。
「お乳を……搾る?」
「いきなりこんなことを言って驚かせてしまっただろうけど、どうしてもミルフィーナさんのお乳じゃなきゃだめなんだ!」
アドニスは誠心誠意のお願いをしたつもりだが、ミルフィーは頷いてくれなかった。それどころか瞳に涙を浮かべて首を振られてしまう。
「むっ、ムリ……です、それだけは、ムリです……」
「泣くほど嫌ですかぁ!?」
アドニスは『女子にお乳を触られるのを泣くほど嫌がれてしまった男」のレッテルを貼られた。心に100のダメージを受けた。これは致命傷だ!
「でっ、ですよねぇ、いきなりこんなポッと出の牛飼い野郎にお乳を搾られるとか、マジ勘弁ですよねぇ、ははは……」
ショックで卑屈になるアドニスに、ミルフィーナは怯えながらも首を振る。
「ちっ、違うんです……そうじゃなくて、でも、だめなんです……わたし、お乳が……お乳が出なくて……だから売られてしまって……うぅっ」
「へ?」
それから泣いているミルフィーナを落ち着かせて話を聞くと、どうやら彼女は過去に二度売られた経験があるらしい。
一度目は両親の借金のカタに、さる高貴な女主人に売られたらしいのだが、その女性がミルフィーナを買った理由もまた彼女のお乳にあったのだ。
牛人族の娘は十五になると母乳が出る体質らしいのだが、一部の富裕層の間では、牛人族の若い娘が出す母乳には肌を若返らせる効能があると言われており、女主人は美容のために毎日強引にミルフィーナのお乳を搾り続けたらしい。
無理な搾乳をされた結果、ある日を境に彼女の母乳はまったく出なくなってしまい、用済みとなったミルフィーナはまたも売られてしまったところをアドニスに買われたのだという。
「肌を若返らせるって、本当にそんな効果があるのか?」
「いえ、それはただの迷信です。けれど、上流階級の女性はそういった事を信じる人が多くて……」
「なんて乳虐だ! 許せねえ! オレ許せねぇよ!」
お乳を愛してやまないアドニスにとって、無理やりお乳を搾るなど言語道断。彼の搾乳道に反する不埒な行いに怒りが湧いてくる。
「まさか、ご主人様もわたしのお乳が目当てだとは思わなくて、それで、つい取り乱してしまって……」
「いやっ、俺はお乳が目当てというか、いや、お乳が目当てであることは確かなんだが、スキルで搾ること自体が目的なんだ」
「どういうことでしょう……?」
そして、アドニスはミルフィーナに事の経緯を詳しく説明した。
神様から授かった搾乳スキルのこと。
女神像のお乳を搾乳してたら天界に呼ばれて女神様のお乳を搾ったこと。
スキルを成長さて女神様のお乳を搾りきらないと世界がやばいこと。
そのために神獣シロが天界より遣わされたこと。
ミルフィーナが運命のお乳のひとりだということ。
一大スペクタクル巨編を予期させる壮大なプロローグを語り聞かせた!
そして────。
「え……ちょっと意味がわからないです」
ドン引きされた。
「ですよねー! うん、わかってた! 絶対そういう反応されるってわかってた!!」
神乳搾りの道のりは長く険しい。
【9】母乳イキ!絶頂牛乳娘
「わぅ、泣かないでくださいアドニス様」
「泣いてなんかないやい」
幼女に頭をヨシヨシされて慰められる主人の姿をミルフィーナはいたたまれない気持ちで見つめていた。
「あの、ご主人様……わたしの胸を触りたいのでしたら、そのような小芝居をなさらなくても命じていただければ……」
「小芝居じゃないから! おっぱいを触りたいがためにこんな壮大な作り話をするとか俺はどんだけ痛い奴だよ!?」
どうやらミルフィーナに「奴隷のおっぱいを触りたいけど恥ずかしくて素直に言えない、こじらせ童貞BOYなご主人様」だと思われてしまったらしい。
「いや、まあそうだよな、こんな話をいきなりされたって信じるほうが難しいよな。うん、今のは俺が悪かった。とりあえずさっき言ったことは忘れてくれ」
「はい、ご安心ください。ちゃんとわかっていますから」
生暖かい眼差しがアドニスに向けられる。罪を許す慈愛の心を感じるぞ!
「ぐっ! やめてくれ、その気遣いは俺の心に刺さる!」
女神様や天界の存在を証明しろと言われても、今のアドニスはその手立てがない。神獣のシロだってぱっと見たらただの幼い犬人族の女の子にしか見えない。
しかしあるじゃあないか、アドニスが証明できるものが。自慢の【搾乳】で彼女の大きなおっぱいに直接わからせてあげればいいのだ。
「ふっふっふっ、お乳が出なくなったって? いいだろう、だったら俺の【搾乳】でミルフィーナさんのお乳を見事復活させてみせようじゃないか」
「ごくり……ご主人様のスキル」
「ああそうだ。俺はこれまでの人生を【搾乳】と共に歩んできた。俺に搾れないお乳はない。これでミルフィーナさんも理解できるはずだ。俺の言葉が嘘ではなかったということがね」
アドニスの自信に満ちあふれた瞳にミルフィーナは戦慄した。さっきまでは、おっぱいが好きなだけのむっつりスケベな坊やに見えていたのに、今の彼からは「マジ」でヤると言ったらヤる「スゴ味」を感じるッ!!!
「わかりました。あくまでも、その路線でいかれるのですね……」
「だから設定じゃないんだわァッ!」
しかし通じない! この世界でスキルというのは「実用性の低い特技」というのが共通の認識であり、しかも【搾乳】ときたもんだ。そんなんネタだと思われても仕方がない。「こいつ、そこまでしておっぱいに触りたいんだなぁ」と可哀想な目でみられてしまうのは必然!
「ああもう、なんでもいいからお乳搾らせて! おちちぃっ! おちちぃぃッ!!!」
「あんっ、落ち着いてくださいご主人様。おっぱい触らせてあげますから」
哀れアドニスは完全に厄介さん扱いである。
しかしこれで、ミルフィーナのお乳に触れることができる。【搾乳】さえ使えば彼女もアドニスのスキルが尋常でないことを認めるしかないだろう。もはや勝利への道は見えたも同然だ。
「それでは、どっ、どうぞ……」
ミルフィーナは観念した様子で恥ずかしそうに胸をくいっと反らす。彼女の柔らかそうな巨乳がたゆんと悩ましく揺れた。
それは、「どうぞご主人様の好きに触ってください」という意思表示。服従のおっぱいがそこにある!
しかし、アドニスはまな板の上の乳を前にして、圧倒的な乳圧《プレッシャー》に先ほどまでの意気込みが乳すぼんでしまった。
(なんて乳圧《プレッシャー》だ……下手に動けばこっちがヤられる!)
迂闊だった。女神様のお乳を搾ったことで女の乳房にも多少は慣れたかと思ったが、あの状況はあまりにもファンタスティックすぎたゆえ一周回って女性経験としてはノーカン。むしろ、自分の家に女を連れ込んでおっぱいを触るという、日常を感じさせる生々しさの方が童貞には効く!
(落ち着け俺、大丈夫だ、焦らず冷静に手順を考えろ。まずは、そう、お乳を隠す邪魔な服を脱がすんだ。なに、こんなの牛の乳を搾るよりも簡単じゃあないか)
浅く短い呼吸を繰り返しながら、アドニスは深い胸の谷間が見える胸元に人差し指をクイッと引っ掛けて、布地をずり下ろしていく。
「んっ……」
指先が微かに乳房の表面に触れるとミルフィーナがピクンと体を震わせ、指が下へ動くたびに、上乳がどんどん露出していく。
「うぉっ、おぉぉ……ッ」
息を呑むアドニス。もうちょっとで神秘の果実(乳首)が剥き出しにされようとしたとき、横からケモミミ幼女の無邪気な視線が注がれていることに気づいた。
「わうぅぅ」
見られてる。幼女に奴隷のおっぱいめくりしてるところ、めっちゃ見られてる!
気まずさに耐えかねたアドニスは咳払いをしていったん手を離した。
「オホンッ、あ~、シロさんや」
「わう?」
「俺は今からはミルフィーナさんの【搾乳】を行うわけだが、女性のお乳を搾るというのは、なんというか、とても集中力を必要とするデリケートな行為なんだ。だから、しばらくふたりで隣の部屋に籠ろうと思う。シロはここで大人しく待っていてくれるか?」
「わうっ! わかりました!」
「くれぐれも、くれぐれも中を覗いたりしてはいけないぞ? いい子に待ってたら後でおやつをあげるからな」
「わうん!」
「よしっ」
そして、アドニスはミルフィーナの手を引いて寝室へと逃げ込んだ。
ドアを閉めると、そこはもう誰にも邪魔されないふたりだけの空間である。
「ふぅ、とりあえずそこに座って」
「はっ、はい」
ミルフィーナがぎこちなくベッドに腰掛けてから、寝室は不味かったかもと気づく。
これじゃあ「今からそのイヤラシイおっぱいでご主人様にご奉仕させてやるぜぇ!」という展開だと思われても仕方がない。
「あの、だいじょうぶですご主人様。男の人に買われたらには、こういうことも奴隷の務めだって、わかってましたから」
(ほらぁ、絶対勘違いされてる)
しかし、今更ここでやめることはできない。覚悟完了しているというのなら好都合である。
「それじゃあ、えっと、続き……脱がせるよ?」
「はっ、はい……」
アドニスの無骨な手が、女のなだらかな鎖骨に触れ、肩に掛かっている袖をずり下ろすと、大きく開いた胸元の布地も一緒に脱げ落ちる。
タプンッという音が聞こえてきそうな揺れと共に、ふくよかな白い乳房がアドニスの前に晒け出された。
(こっ、これがミルフィーナさんのお乳!)
いかがわしい事をするのが目的ではないのだが、じゅうぶんすぎる程に育った女の乳房を見せつけられてしまうと、アドニスはどうしようもなく興奮してしまう。
ふんわりと柔らかそうな乳丘の頂でうっすらと色付く大きめな乳輪、プックリ膨らんでいる乳首はあまりにもイヤラしく、ミルフィーナの清純な雰囲気とのギャップで余計卑猥に見えてしまう。
「あのっ、ご主人様……そんなに見つめられたら、恥ずかしいです……」
以前は女主人に買われたと言っていたし、ウブな反応から見るに彼女はまだ男性経験がないのだろう。
自分がこの巨乳に触れる初めての男になるのではと思うと、アドニスは否が応にも気持ちが昂り、当初の目的を忘れそうになってしまう。
(ダメだダメだ、そんなことをするために彼女を買ったわけじゃないだろ、ルナリス様から与えられた使命を忘れるな)
欲望のままミルフィーナの乳房にむしゃぶりついてしまいそうになる衝動を必死に抑えながら、アドニスが【搾乳】を発動させると、手の甲に紋様が浮かび上がる。
「それじゃあ、始めるよ」
「んっ……ひぅんッ!」
伸ばされた指先が乳房に触れた瞬間、じわりと疼く感覚にミルフィーナの口から小さな悲鳴が洩れる。
「えっ……あっ、ぁっ、なにっ……これ」
少し触れられただけなのに、はしたない声を出してしまったことに驚くミルフィーナ。しかし、それはまだ始まりに過ぎず、【搾乳】の本当の威力を味わうのはこれからだった。
「えっ、ご主人様、ちょっ、ちょっと待ってくださ……ンンッ! あっ、あぁッ!」
アドニスの両手が柔らかな乳肉を鷲掴んだ途端、乳房に流れ込んできた熱く痺れるような快感に、ミルフィーナが体をビクンと仰け反らせる。
「あっ! あぅっ、あっぁっ……ふぅん……ッ!」
指の動きに合わせてフニャフニャと形を変える乳肉。それは搾乳というよりもマッサージに近い動きだった。アドニスは酷使によって疲弊した乳房をいたわるように、優しい手つきでタプンタプンと掬い上げながら、ゆったりとほぐしていく。
「あぅっ、ぁっ、ふぅぅん……あぁっ、はぁァンッ♡」
あまりにも心地よい快感に、ミルフィーナの口から洩れる声は熱く湿り気を帯び、緊張していた体の力が抜けていく。しかし、嫌な感じはまったくしない。それどころか、以前の女主人に無理やり母乳を搾られたせいで、揉まれると痛みを感じるようになってしまった乳房が、アドニスの手によって癒されていくのがわかる。
頭の中がぼうっとなり、力が抜けて体がふわふわとした。それなのに、お腹の奥から熱いものが込み上げてくる。
ミルフィーナの体はみるみる火照り、すべらかな肌は滲んだ汗でじっとりと濡れていた。
「あひっ、あっ、あっ♡ ごしゅじんっ、さまっ、あっ、あぁ♡」
今まで味わったことのない快感の中で、ミルフィーナはアドニスの言葉が嘘でなかったことを知る。女神様がどうのというくだりは謎だが、少なくとも【搾乳】という冗談みたいなスキルに関して、この青年の言葉は全て本当だったのだと。
それを理解したときには、すでに彼女のお乳はアドニスの【搾乳】に逆らえなくなっていた。
乳丘の先端で恥ずかしい程にピンッと突き出している乳首からは、今にも母乳が吹き出してしまいそうだった。頃合いと見たアドニスが、そのいやらしい乳首をキュッと指先で摘んだ。
「んひぃいいぃイィッ♡」
優しく揉まれるのとは比べものにならない、乳首から流れ込む電流のような激しい快楽にミルフィーナの嬌声が寝室に響く。
「あっ、あぁあぁっ♡ ごしゅじんさまぁっ、だめぇ、それ、あっ、だめぇぇ♡ 」
「そうかい? でもミルフィーナさんの乳首、こんなに尖ってるじゃないか」
「んふぅぅぅッ♡♡」
きゅっきゅっと小気味よく乳首を摘んで引っ張られると、頭の中が蕩けてしまいそうな快感がミルフィーナを襲う。その顔からは清楚さが消え完全に蕩けており、だらしなく開かれた口から甘い喘ぎが垂れ流される。
「ひぅぅんっ♡ あぁああアァッ♡ でちゃう、ミルクでちゃうのぉぉ♡」
「我慢しなくていいんだ。今までお乳が出なくて苦しかっただろ? たっぷり出すんだ、ほらっ」
「んひいぃぃぃいイイイッ♡♡ ああぁああアァッ♡♡♡」
とどめとばかりに勃起した乳首を捻り上げられた瞬間、乳房の中に大量に溜まっていた母乳がびゅるっびゅるっ! と、勢いよく噴き出す。
アドニスがその手に母乳の温もりを感じていると、ひときわ輝きを増した刻印を伝って、体の中に何か熱いモノが流れ込んでくるのを感じた。
(すごい……シロの言ってたとおりだ。これが運命のお乳を搾るってことなのか……?)
果たして、これでスキルが成長したのかは、まだわからないが、とりあえずスキル成長に必要なミッションはクリアしたことになる。
ミルフィーナのお乳も出るようになったことだし、これで万事めでたく解決かとアドニスが安堵したときだった。
「ごしゅじんさまぁ♡」
甘い呼び声と共に、体にしなだれ掛かってきた柔らかな重み。
頰を紅潮させたミルフィーナが、潤んだ瞳でアドニスのことを見上げていた。
「えっ、あのっ……ミルフィーナさん?」
彼女の目は完全に正気を失っていた。というか発情していた。
(なんか目にハートマークが浮かんでるぅ!?)
女に【搾乳】を使うとどうなるのか、これからアドニスは身をもって体験することになるのだった。
【10】おっぱいを吸え!牛乳娘母乳中出しセックス!
剥き出しの乳房から母乳を滴らせたミルフィーナが、蕩けた瞳で物欲しそうにアドニスのことを見つめている。
ミルクの甘い香りに混じって、汗ばんだ肌から漂う女の匂いにアドニスはごくりと息を呑む。
(もしかして、これも【搾乳】のせいなのか?)
今まで牛の乳を搾ること以外にスキルを使ったことがなかったゆえ、まさか女性に対してこんな効果があるなんて思いもしなかった。
濃厚な色香に当てられて下半身が疼くと、流れ込む血流で勃起したイチモツがズボンの股間を痛いほどに押し上げる。
ミルフィーナは完全に我を忘れている、今ならなし崩し的にヤれてしまうだろう。相手は奴隷であり、主人であるアドニスが彼女をどうしようと勝手なのだが──。
湧き上がるオスの本能に身を委ねそうになってしまうのをアドニスは必死に堪えた。
(だめだ、そんなことをするために彼女を買ったわけじゃないだろ)
高潔な魂で誘惑を拒否したアドニス。大きく深呼吸をすると、股間の暴れん坊も次第に大人しくなっていく。これは健全な主人公だ!
「ご主人さま……わたし、体が変なんです……」
「大丈夫だミルフィーナさん。少し休めば、きっとスグにおさまるよ」
「でもっ、んッ……とっても熱いんです……」
そう言って、ミルフィーナがおもむろにスカートを捲り上げると、大きく開いた太股の付け根には蜜液でぐっちょりと濡れた下着が彼女の恥部に張り付いていた。
「ここが、ンッ、あンッ……♡」
濡れ透けたパンティにはプニッとした淫唇の形がくっきりと浮き出しており、ミルフィーナが見せつけるように指先で秘部の窪みをいじると、とろけた媚肉からクチュリといやらしい水音が鳴った。
(あ、やっぱ無理)
淫らな女の痴態を前に理性はあっけなく敗北した。ズボンとパンツを脱ぎ捨てたアドニスがミルフィーナの上に覆いかぶさる。
乳搾りに人生を捧げてきた青年の股間では、今まで使われることのなかった生殖器としての役目を果たすべく、硬く勃起したペニスが雄々しく反り返っていた。
一般的な男性のサイズから逸脱した剛直は、表面に太い血管を浮き立たせ、飢えた獣のように先っぽから涎を垂れ流している。
「あんっ、 ご主人様の……すごい、太くて大きくて…こんなにお汁を出して……」
自分を犯そうとしている凶暴なペニスを突きつけられても、ミルフィーナは怖がるどころか、うっとりとした顔をする。
アドニスが荒々しい手つきで股間を隠す邪魔な布切れを剥ぎ取ると、まだ男を受け入れたことのない綺麗な色をした肉ビラが愛液に濡れテラテラと光っていた。
指で広げると、牛娘の発情穴がチンポを求めてひくひくと収縮している。
「はぁっ、はぁっ……いっ、挿れるよ、ミルフィーナさん」
こんなものを見せられてはアドニスの我慢も限界だ。愛液ですっかりほぐれたワレメに亀頭を押し当てると、ヌプッと肉唇の中に呑み込まれると、狭い膣口を先っぽでこじ開けていく。
「あっ、あぁっ♡ ご主人さまのオチンポ、入り口に当たって……あっ、ぁっ、あぁっ♡」
「うっ、あぁッ……!」
ヌルリとした感触とともに亀頭全体が膣口の中に潜り込むと、熱くヌッチョリとした膣粘膜の感触にそれだけで射精してしまいそうになるのをアドニスは必死で堪えた。
ペニスはズブズブと膣奥へと埋没していき、途中で処女膜を突き破られたミルフィーナの膣は初めてとは思えない滑らかさでヌルリと胎内の奥へと肉棒を受け入れた。
「ひあぁァッ♡ んぅっ、あアッ、あアァッああぁ♡」
狭い膣道を勃起した肉棒で強引に広げられながらも、発情しているせいだろうか、処女を喪失したばかりだというのにミルフィーナの躰はすでに女の悦びに悶えていた。
太くて硬い男性器が胎内をみっちりと埋め尽くす感覚にミルフィーナは艶めいた悲鳴をあげる。
「あっ、んぅっ♡ ご主人さまのたくましいオチンポが……お腹の中をグリグリして♡ ひぅううンッ♡」
「ぐぅっ、ミルフィーナさんの膣内っ、とろとろに熱くて、チンポを締め付けてくるよ!」
「あひッ♡ あっ、あっあっ♡ あアァッ♡♡♡」
容赦無くペニスをなぶってくる淫らな膣肉の快感に、初めて女を抱くアドニスにはミルフィーナをいたわりながら動く余裕はなかった。
動いてなくてもニュルニュルと絡みついてくる膣肉があまりも気持ち良すぎて、気を抜いたらすぐに射精してしまいそうだ。
熱くぬめついた膣の感触に呻きながら、アドニスはひたらすに快楽を求めて腰を振った。
「んひぃっ♡ あァッ♡ ご主人さまのオチンポっ、お腹の中こすれてっ♡ ひぃンッ♡♡」
ぎこちなくも力強い抽送で膣壁を擦られ、痺れるような快感がミルフィーナの胎内を駆け巡り、長大な男性器はたやすく彼女の子宮口に到達すると、亀頭がグリグリと子宮の入り口に押しつけられる。
それは男の生殖本能なのだろう、アドニスは無意識に自分の子種でミルフィーナを孕ませようとしていた。
「あぅっ、ああっ♡ ごしゅじんさまぁっ、ひぅんッ♡、そこっはっ、んンッッ♡」
野獣のように凶暴なペニスによって女の一番大切な場所を突かれながら、ミルフィーナは自分が主人の女にされようとしているのを感じ、彼女の躰はそれを受け入れていた。
「あひぃぃ♡ ああァッ♡ ああアアアッ♡♡♡」
逞しいオスのチンポで自分の躰が誰のものなのかを子宮に教え込まれようとしている。快感に呼応して乳房は触れてもいないのに母乳をぴゅるぴゅると吹き出した。
アドニスは抽送を続けながら母乳を噴き出す乳房にむしゃぶりつくと、乳首をぢうっと強く吸い上げた。
「んひぃぃい♡♡♡ あぁっ♡ おっぱいだめぇ♡ 子宮トントンされながらおっぱい吸われるのだめぇ♡♡♡♡」
激しい快楽に刺激された乳首は更に勢いを増してびゅるびゅると母乳を吹き出す。アドニスは口の中を満たす甘く濃厚なミルクをゴクゴクと喉を鳴らして呑みながら、いっそう激しく腰を動かした。
「あひぃぃ♡♡♡ ああアァッ♡♡♡ ごしゅじんさまぁっ、わたし、もっ、もうっ♡♡♡ んンンぅッッ♡♡♡」
乳房と膣内から同時に伝わってくる激しい快感によって、津波のような絶頂が押し寄せてくるのを感じたミルフィーナは無意識にアドニスの腰に足を絡めて体にしがみついた。
アドニスもまた、入り口まで出かかって今にも暴発してしまいそうな精液をこれ以上押し留めることができなかった。
「ぐぅッ! もっ、もう出そうだ! 出すよミルフィーナさん!」
「あアァっ♡ くださいっ、ごしゅじんさまの子種、ミルフィーナの子宮にビュルビュル出してぇッ♡♡♡」
「ぐううううぅっ!」
ミルフィーナの懇願するような悲鳴が引き金となり、アドニスは子宮口に亀頭をグリグリ押しつけながら、限界まで溜めた精液を解き放った。
ビュルルッ!!! ドビュッ! ビュクッ! ビュルッ! ドビュッ! ビュクッ!
「ひあぁぁああアァァアッ♡♡♡♡」
勢いよく噴出した白濁液がミルフィーナの膣内にぶちまけられる。
ドロドロとしたオスの熱い滾りに子宮を犯されるのを感じながら、ミルフィーナも乳房から大量の母乳を吹き出しながら絶頂を迎えた。
「あひっ♡ んあぁっ♡ ああぁっ♡ ああああァァ♡」
子宮を主人の精液で犯されながら、ミルフィーナは恍惚とした表情で体を痙攣させる。
体を汗と母乳でぐっちょりと濡らす男女は、絶頂の快楽に体を震わせながら身体を絡ませ合うのだった。


