白那は宣言通り三日後再び我が家を訪れた。
「さて小僧よ、珠代との別れは済ませておいたか? よもや、この後に及んでワシに立てつこうなどと阿呆なことは考えておらぬじゃろうなぁ?」
相変わらず偉そうな態度をとるロリババアを前にして、俺は────。
「ははぁっ! ようこそおいで下さいました白那様!」
玄関の前に正座して深々と頭を下げた。
「なんじゃ、前回来た時と随分態度が違うではないか?」
「その節は大変なご無礼をしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。あの後、白那様がいかに崇高なお方であるか理解し、深く反省した次第でございます」
「ほほぅ、ようやくワシの偉大さと貴様の愚かさが理解できたようじゃのぉ」
「まったくその通りでございます。であれば、私ごとき下賤な輩が白那様の大事なお孫様に手を出すなど、とんだ思い違いをしておりました、何卒、何卒ご容赦くださいませ!」
床におでこを擦り付けながら平伏する俺の姿に優越感を感じたのか、白那は満更でもなさそうに鼻を鳴らす。
「お祖母様ごめんなさい、珠代が間違っていました。お祖母様の深いお心も理解できず勝手なことをしたと、今では反省しています。いっときとはいえ、このような人間の男に誑かされた自分が恥ずかしい……」
後ろに控えていた珠代さんの冷ややかな視線が土下座する俺の背中にグサリと刺さる。
「ほっほっほ! そうじゃろそうじゃろ! いやなに、わかってくれれば良いのじゃよ珠代、小僧も身の程をわきまえたようじゃしな! うむっ、此度の無礼は許してつかわす!」
愉快そうに笑う白那に下げた頭の後ろをペシペシと叩かれながら、それでも俺は卑屈な笑顔を崩さない。
「へへぇ〜! ありがたき幸せ!」
「そういえば美津妃の奴はどこにおる? てっきりあの女狐めが邪魔をするかと思っていたが、姿が見えんようじゃの」
「彼女でしたら、白那様に恐れをなして尻尾を丸めて逃げ去ってしまいました」
「煽るだけ煽っておいて、まったく薄情な女狐だのう」
「ええ、まったくでございます」
「さて、そうであれば、ここにはもう用はないな。さっさと帰るぞ珠代」
「いえっ、お待ちください。実は白那様がいらっしゃるということで、おもてなしの準備をしてございます」
「お祖母様のために腕によりをかけました。どうぞ召し上がってください」
「ほぉっ、珠代の手料理か! よし小僧、さっさと案内するがよい」
「へへぇ、こちらでございます」
孫の手料理にうきうきしてる白那は案内された居間のテーブルには美味しそうな匂いを漂わせる豪華な食事がずらりと並んでいるのを見て目を輝かせた。
「ささっ、こちらへお座りになってください白那様」
「うむ、くるしゅうない」
上座に置かれた三段重ねの座布団の上に胡座をかいてふんぞり返る白那。実に偉そうである。
「こちら、名産の地酒でございます」
俺は白那にヒノキの升を渡すと、一升瓶を抱えてうやうやしくお酌する。
「どうぞどうぞ、まずは一献」
「んぐっ、んぐっ、んぐっ……ぷはぁっ! なかなか良い酒ではないか、ほれっ、もっと注がんか小僧」
「さすがは白那様、見事な飲みっぷりでございます!」
「お祖母様、どうぞお料理も食べてくださいね」
「どれどれ、んむっ、これも美味い! 孫の作った料理は最高じゃな!」
こうして気を良くした白那は勧められるがままに酒と料理をしこたま飲み食いしていく。
暫くすると、だいぶ酔いも回ってきたようで、彼女の頭とお尻には隠していたキツネ耳と尻尾がすっかり丸出しになっており、横暴ぶりにも拍車がかかる。
「ほれ小僧! 踊れぇ踊れぇ!」
「あっそれっ! 踊る阿呆に見る阿呆ッ!」
そして俺は白那のリクエストによって余興の裸踊りを披露させられていた。
「くはははっ! 阿呆じゃ! 阿呆がおるわいっ!」
そのとき、俺の滑稽な裸踊りを指差して爆笑していた白那が、よろりとバランスを崩して座布団から転げ落ちた。
「おっとっと、いかんいかん、ちと飲み過ぎたかのぉ」
白那はすぐに起きようとしたけれど、逆にそのままヘニャリと床に伸びてしまう。
「あぇっ、なっ、なんじゃ……酔いのせいか、体が上手く動かん……」
「いえ、お祖母様、それはお酒のせいではありませんよ」
ニコニコとした笑顔で畳の上に崩れ落ちる白那を見下ろす珠代さん。
「なっ、なんじゃと?」
「体が動かないのは、お料理に仕込んだ毒が回ってきたからです」
「どっ、毒じゃと!? まさか、お前が……!?」
「はい、お祖母様に毒を盛らせていただきました」
「うっ、嘘じゃ! 心の優しい珠代がワシに毒を盛るような真似をするはずが……っ!」
「ふふっ、そうですね……珠代ちゃんは優しいからお祖母様に毒を盛ったりなんてできないわよねぇ」
「おっ……おぬし、まさかっ!?」
白那の目の前にいる珠代さんは、本当の彼女であれば決してしないような悪女の笑みを浮かべると、瞬く間にその姿を変貌させる。
「でもぉ、私は母親にだって毒を盛れちゃう女狐なのよねぇ」
変化を解いた美津妃さんが悪い笑顔を浮かべながら動けなくなった母親を見下ろす。
「美津妃ぃ……貴様ぁ……ッ!!」
自分が化かされたことに気づいた白那は顔を真っ赤にして叫ぶが、今更気づいたところでもう手遅れである。
「平常なら私が化けていることに気づけたんでしょうけどぉ、孫への甘さで警戒を怠ったのが命取りだったわねぇ」
「ぐぬぅぅぅぅっ!」
さて、これで俺もようやく阿呆のフリをする必要がなくなったわけだ。
裸踊りをしていたのでフルチンのままに、俺は倒れている白那の前に蹲み込んで、その小さな頭を鷲掴んだ。
「このロリババア、随分と調子に乗ってくれたじゃあないか。覚悟はできてんだろうなぁ?」
溢れ出す怒りに満ちた声に白那はぎょっとして冷や汗をかく。
「おっ、落ち着け小僧! 今ならまだ許してやる、だから、こんなこと止めるのじゃ!」
「許すだと? おまえ、まだ自分の立場ってものがわかってないようだな……こいつを見ろぉっ!」
俺は己の股間をビシッと指差した。そこには猛々しく勃起した息子の姿。これは立派だ!
「お前に対する怒りで俺のチンコが青筋立ててるぜぇッ!」
「チンコは関係ないじゃろ!?」
「それがあるのよねぇ〜、それじゃあ雪彦ちゃん、お母さんを儀式の間に連れていくわよぉ」
「あいよぉっ!」
俺が白那を担ぎ上げると、美津妃さんは隣の部屋へと続く襖を開けた。
現れたのはピンク色の明かりに照らされた部屋、真ん中に布団が敷かれている。これはイヤラしい!
「そぉいっ!」
俺は担いでいた白那を布団の上に放り投げた。
「ぬわっ!? なっ、なんじゃこの部屋は! 邪悪な気配に満ちておるぞ!?」
「はぁい、それじゃあ今から、雪彦ちゃんのチンポでお母さんをザーメン肉便器ロリババ狐に改造しちゃいまぁす♡」
「────は?」
「だからぁ、今から雪彦ちゃんがお母さんを徹底的に犯し尽くしてチンポに絶対服従するメス奴隷にするのよぉ」
「実の母親をメス奴隷とか頭おかしいじゃろコイツ!?」
「失礼しちゃうわぁ、私たちはとっても真剣なのにぃ、ねぇ雪彦ちゃん?」
「そいやっ! そいやっ!」
これから臨もうとする陵辱という名の儀式に向けて、俺が意気揚々と掛け声に合わせて準備運動していると、今まで別の部屋に隠れていた珠代さんが心配そうに中を覗きに来た。
「たっ、珠代ぉっ! 助けてくれぇ! こやつらイカレとるんじゃぁ!」
孫に助けを求める白那だが、珠代さんは申し訳なさそうに首を振った。
「ごめんなさいお祖母様……けど、これはみんなで仲良くするのに必要なことだってお母さんが……」
「ワシのことをチンポ奴隷にするとかヌかしとるんじゃけども!?」
「だっ、大丈夫です! お祖母様もきっと雪彦さんが良い人だってわかるはずです!」
「そいっ! そいっ! そいっ!」
柔軟体操で腰を振るたび、雄々しく反り返るチンコがブンブンと風切音を鳴らす。我ながらキレのあるスイングだ!
「────こいつがか!?」
「………………」
珠代さんはそっと襖を閉じた。
「嘘じゃろ!? 珠代ぉぉぉっ!!」
白那に救いの手は差し伸べられなかった。
それじゃあ、始めるとしようか! 本当の宴ってやつをなッ!!