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【4話】偽りの姉弟関係と深まる謎【18禁ミステリー小説】

【エロ小説】そして姉さんは弟に犯される そして姉さんは弟に犯される

耳元で電話の掠れたコール音が一定のリズムで鳴る。そのたびに心臓が締め付けられていくような感覚に、健二は心を落ち着けるために深く息を吐き出す。

すれから更に数回の後、コール音が途切れ通話に切り替わったことで、落ち着きかけ健二の心臓が大きく跳ね上がる。

「――――もっ、もしもし……」

『ただいま、電話に出ることができません。発信音の後にメッセージをどうぞ――』

不安を押し殺して喉から絞りだした声は、しかし、無機質な留守番電話の音声によって遮られたのだった。

がっかりしたような、少しほっとしたような複雑な気持ちになる。

通話を切ってから、もういちど電話を掛け直すが、やはり長い呼び出し音の後に留守番電話へと切り替わってしまう。

(もしも僕と修一が入れ替わっているのだとしたら――着信に気づいてないだけか、それとも電話に出られない状況なのか――)

最悪、自分の体が抜け殻の仮死状態になっていることも考えられる。

どちらにせよ、このまま放っておくことはできないし、電話が繋がらないのなら、直接行って確かめるしか術はなかった。

健二は部屋のハンガーに吊るされていた学校の制服に着替えると、急いで玄関に向かう。

「シュウくん? どうしたの?」

朝食も食べずに部屋に戻ったかと思えば、急に外へ出ようとしている弟を麻奈美が呼び止める。

「えっと……ちょっと、健二に用があって……」

疑問を浮かべる麻奈美を振り切ってドアを開けると、距離にして数メールしか離れていない山田家の玄関前に立った健二は、気持ちを落ち着かせるように、いちど大きく深呼吸をしてから意を決しインターホンを鳴らす。

『はい、どちら様でしょう?』

電子音が鳴なってからしばらくして、通話口から健二の母親の声が聞こえた。

「あの、かっ、神崎です」

『あら、修一くん? ちょっとまってね』

インターホンが切れると、すぐに玄関のドアが開いて健二の母親が出てきた。

「おはよう、修一くん」

「あの、けっ、健二は……いますか?」

「ごめんなさいね。健二ったら朝から熱出しちゃって、今も寝てるのよ」

「熱……ですか?」

「そうなのよ、さっき薬を飲んだら、またすぐに寝ちゃったわ」

つまり、少なくとも今の健二の体にも意識があるということだ。さきほど電話に出なかったのも、寝ていたせいで出られなかったのなら辻褄が合う。

熱を出したというのは気になるが、母親の様子からして酷い症状でもなさそうだ。

少なくともこれで、先ほど健二が考えていたような最悪の事態は回避されたことになる。とはいえ、この異常な状況がなにも解決していないことに変わりはない。

健二は外から二階にある自室の窓を見上げる。

今はカーテンがかかっているあの窓の奥には自分の体があって、その中には修一が入っているはずなのだ。

「健二になにか用だった?」

「いえ……大したことじゃないんで、また来ます」

すぐそこに居るはずなのに手が届かない。歯がゆさを感じながら健二は神崎家に戻った。

「どうしたの修一。なんだか今日はちょっと変よ……?」

戻ってくるなり麻奈美が心配そうに尋ねてくる。

「なんでもないよ……その、ちょっと頭痛がするだけで」

嘘ではない。今の健二はこれからどうすればいいのか考えるだけで頭が痛くなる。

しかし、それを聞いた麻奈美はかえって表情を硬くしてしまった。

「大丈夫? 風邪かしら……」

麻奈美のほっそりとした白い指が額に触れる。

「んーっ、熱はなさそうだけど」

麻奈美に触れられて健二はドキリとする。

こんな状況だからいままで意識していなかったが、今の健二は麻奈美の弟になっているのだ。姉弟の距離は健二が思っていたよりもずっと近い。

(麻奈美ちゃんの手……柔らかくて気持ちいい……)

しっとりとした手の感触に心臓が高鳴り、このままでは別の理由で熱が出てしまいそうだった。

「学校行けそう?」

「うっ、うん……大丈夫だよ、姉さん……」

「ふふっ、今日のシュウくん、なんだか可愛い」

麻奈美に頭を優しく撫でられて、健二は天にも昇るような気持ちになった。

「無理しちゃだめよ?」

「うん、わかった……」

健二はそう言って顔を赤くしながら部屋に戻ると学校に行く支度をする。

このまま家に居続けては麻奈美に不審がられるだろうし、サボって学校側から余計な追求をされるのも避けたい。

今も部屋で眠っているはずの自分の体には、すぐに接触できそうもない。

健二は、とりあえず今だけは神崎修一としてやり過ごしたほうがいいと判断した。

(やっぱり麻奈実ちゃんは弟にも優しいんだなぁ……少しぐらいワガママ言っても許してくれそうだし……)

こんな状況なのだから、弟という立場を利用して少しぐらい良い目にあっても許されるのではと、健二はよからぬ妄想をしながら、学校に向かうためい家を出た。

朝の涼やかな空気を感じながら、こうして歩いているだけだと、なんらいつものと変わらない日常に思える。

しかし、学校に近づき周りに学生が増えてくると、すれ違う生徒から次々と声をかけられるのだ。

それは男女問わずクラスメイトだったり、違うクラスのやつだったり、ともかく沢山の生徒が話しかけてくる。

いつもの健二であれば、教室に着くまで一人静かに歩いているはなのに。今の自分は修一なのだと痛感させられた。

教室に着いてからもそれは続いた。休み時間になれば座っているだけでクラスメイトが周りに寄ってきて、健二を取り囲むように輪ができる。まるで修一という光に群がる羽虫のようだ。

前を向いても横を向いても、皆が笑顔を向けてくる。

いつもと同じ教室に居るはずなのに、いつもとは余りにも違う光景。そして誰も健二が欠席していることを気にする素振りもみせないことにショックを受けた。

(僕の存在価値なんて……そんなもんか)

それでも時間は着々と経過してゆき、そのあいだも健二は携帯を何度も確認したが、家に居るはずの修一(仮定)からは何も応答がなかった。

様子を探るために「具合はどうだ?」という当たり障りのないメッセージを送っておいたが、既読が付かないことから、相手は携帯を見ていないようだ。

「神崎くん」

健二が気を揉みながら携帯の画面を見つめていると、ふいに声をかけられる。

振り向くと、そこにはクラスでも可愛いと評判の女子が、健二の肩に手を触れながら見つめていた。

「次の移動教室、私たちが準備当番だよ?」

「ああ……そうだっけ? ごめん、忘れてた」

しかし女子は気を悪くした様子もなく、健二と並んで準備室へと向かうあいだ、笑顔を浮かべながら口を動かしていた。

同じクラスなのだから、健二もこの女子と話したことぐらいあるけれど、そのときの彼女は表情を崩すことなく、口調も実に素っ気ないものだ。

本来の健二が相手であれば、こんな子猫がじゃれつくように身を寄せて甘え声を出したりなどは絶対にしないだろう。

とても同じ女子を相手にしているとは思えない豹変ぶりを目の当たりにして、健二は内心で舌を巻きながら、格差というものを思い知らされるのであった。

それからはなんかと神崎修一として振る舞いながら、放課後までやり過ごすことができた。

遊びに誘ってくる修一のお友達連中をあしらって、健二は足早に神崎家へと帰てきたが、麻奈美は出かけているようでチャイムを鳴らしても返事がない。

健二はどうしたものかとカバンの中を漁ってみると、内側のポケットから家の鍵を発見する。

他人の家に無断で侵入するのは気が咎めるが、仕方がないと割り切って中に入ると、なんとなく足音を殺しながら階段を上っていく。

そして、修一の部屋に入りドアを閉めたところで、ようやく周りを気にする必要がなくったおかげで、緊張が解け一気に疲労感が襲ってきた。

ベッドに腰掛けると、自然と深いため息が漏れた。

これから自分はどうなってしまうのか、考えるだけで不安になる。

朝起きたら突然こうなっていのだ、もしかしたら明日の朝には元に戻っている可能性だってある。

しかしそうでなかったら――。

今日はなんとか乗り切れたが、明日も明後日も修一を演じていては、いつかボロが出てしまいそうだ。

そもそも、どうしてこんなことになってしまったのか、昨日の記憶は曖昧だ。健二がまるで何かに化かされているような薄気味の悪さを感じていると、不意にポケットの携帯が震えた。

画面を確認すると、そこには1件のメッセージ通知が表示されており、その差出人が”健二”となっていることに気づき、健二は息をのんだ。

ずっと返信を待ちわびていたはずなのに、いざ来てみれば、やはり不安の方が大きい。しかし、確認しないわけにはいかない。

健二が意を決してメッセージを開くと、そこには一言『悪い、今まで寝てた』とだけ書かれていた。

こんな文面は予想していなかったので思わず首を捻る。あまりに普通すぎて、どう反応するべきなのか健二は困り果てた。

しかし、ここで手をこまねいているわけにもいかない。ここで遠回しな言葉は不要だ。健二は核心に迫る言葉を入力する。

『お前は誰だ?』

緊張する指が送信ボタンを押した。

【5話】ニセモノの弟と優しい姉【ミステリーエロ小説】
健二がメッセージを送ってからすぐ、携帯に着信が来た。 しかし、そこに表示された返信内容は、またしても健二の予期するものとは違った。 『お前、何言ってんだ? 健二だけど』 まるでこっちがおかしなことを言ってるような文面に、健二は焦って返信をす...
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