学校が終わった健二が帰宅して自室でくつろいでたときだった。
大学から帰ってきた麻奈美が部屋を訪れた。
大好きな麻奈美の訪問を喜んだのもつかの間、いつも柔和な笑みをたたえるその顔が、どこか緊張にこわばっていることに健二は気づく。
「姉さん……どうかしたの?」
「――シュウくん、ちょっと話したいことがあるの」
麻奈美の口調から健二も不穏なものを感じ取った。
改まった様子で座る麻奈美に促され、健二もおずおずとその前に座る。
「話って……なに?」
「あのね……シュウくん、お姉ちゃんに、隠してることがあるよね……?」
健二はドキリとした。弟の中身が入れ替わっていることに麻奈美が気づいたのかと思ったのだ。
「隠してることって……?」
「そのっ……シュウくん、お姉ちゃんの下着に……イタズラ……してるよね?」
恥ずかしそうに視線をずらしながら呟く麻奈美。それは予想外の言葉だったが、健二は心臓を締め付けられたような感覚に息を呑む。
(やばい……麻奈美ちゃんのパンツでオナニーしたのバレてる……)
どうせ修一の体なんだからバレてもいいと楽観的になっていたが、いざ本人から問いただされてしまうと、なんと言い訳すればいいか分からなくなる。
こんな異常な状況の中で、麻奈美との触れ合いだけが心の支えだったのに、もしも、ここで姉弟の仲が険悪になり口をきいてもらえなくなったら――。
それは健二にとって絶望と言っても過言ではないことだった。
「ちっ、ちがっ、いや……それはっ、そのっ……ぼっ、僕っ……姉さっ……うっ、違っ、ぁっ……」
健二は恐怖に青ざめながら、なんとか言い訳をしようとするが、あまりに動揺しすぎて歯の根が合わずまともに喋ることもできない。
頭の中は真っ白になり、なにを言えばいいのかもわからず、しまいには目に涙が浮かんでくる。
それは男としてあまりにも情けない、酷く惨めな姿であった。
たとえハイスペックなイケメン親友の体を借りていようとも、中に入っているのはしょせん山田健二なのだ。
こうして窮地に立たされてしまえば、臆病者の卑屈で弱い心が露呈してしまう。
(だめだ……もうだめだ……もうお終いだ……)
健二が絶望に震え涙を流す一方で、麻奈美もまた弟の見たこともない哀れな姿に動揺していた。
(うそっ、シュウくんが……こんなふうに泣くなんて……)
なんでもそつなくこなし、いつも自信に満ちている弟だったのに、目の前にいる少年はまるで別人のように弱々しい。
弟をたしなめるつもりだったが、ここで叱ってしまえば弟を深く傷つけてしまうかもという恐れが麻奈美を弱腰にさせた。
「シュウくん、あのね、お姉ちゃん怒ってないから……だから、泣かないで、ねっ?」
「ううっ……ごめっ……ごめんなさい……」
もはや完全に調子を狂わされてしまった麻奈美は、弟をどうにか落ち着かせようと幼い子供をあやすように抱き寄せながら頭を優しく撫でる。
「どうしちゃったのかな……? シュウくんらしくないよ……なにか悩んでるならお姉ちゃん相談にのるから……」
麻奈美の手からは弟を想いやる慈しみの心が伝わってくるようだった。
しかし、矮小な人間というのは姑息で、こうした人の優しさに付け入ることにばかり長けているも。卑屈で人の顔色ばかり伺って生きてきた健二もまたそういった類の人種だ。
だから感づいた。
優しい麻奈美には弟を傷つけるようなことはできない。泣いてる弟の言うことなら無茶なことでも許してくれるに違いない――と。
「うぅっ、ごめんよ姉さん……どうしても我慢できなくて……お願いだから嫌いにならないで……」
健二は気持ちの悪い甘え声を出しながら、麻奈美の胸に抱きついて、その柔らかい感触を確かめるように顔を埋めた。
(うわぁ……服越しでも柔らかい……すごいっ、麻奈美ちゃんのおっぱいに触ってる……!)
まさか腕の中で泣いている弟が邪なことを考えているとはつゆ知らず、麻奈美は弟を落ち着かせようと優しく頭を撫で続ける。
「大丈夫だからね、お姉ちゃん、シュウくんのこと嫌いになんてならないわ」
「うぅっ……姉さん、姉さん……!」
これなら、もっと過激なことをしても許してもらえそうだ――。
打算した健二は、どさくさに紛れて麻奈美のおっぱいに手を伸ばすと、柔らかな胸を両手で揉み始めた。
「えっ……! ちょっ、ちょっと、シュウくん……!?」
さすがに胸を触られて驚いた麻奈美だったが、ここで弟を突き飛ばすこともできない。
(シュウくん……お姉ちゃんに甘えたいだけ……なのよね……?)
もしかしたら弟は一時的な幼児退行をしていて、甘えられる存在が欲しいのかもしれない――。
そう考えた麻奈美は、本当は恥ずかしくて仕方が無いけれど、今は弟の気の済むまで甘えさせてあげようと、自らの胸をすきに触らせることにした。
(ああっ……麻奈美ちゃん、柔らかくていい匂い……けど、もっと、もっと触りたいよ……)
しばらくは服の上からでも夢中に胸を触って健二だったが、欲求は満たされるどころか、更に高まっていく一方だった。
そして、ついに我慢できなくなった健二は直接おっぱいを触ろうと、麻奈美の着ているニットをお腹の部分からめくり上げようとする。
「なっ、なにしてるのシュウくん!? だめよっ」
「姉さん! お願い、おっぱい見せて……! 姉さんのおっぱいに直接触りたいんだよ!」
抵抗しようとする麻奈美だったが、高校男子に力で迫られてしまえば抗うことはできず、覆いかぶさってくる弟をはねのけることもできずに仰向けに倒れてしまう。
その隙に健二の手が麻奈美の服を胸元まで捲り上げ、その下からレースのあしらわれた薄いピンク色のブラジャーと、それに包まれた豊満なおっぱいが露出した。
「あぁっ、だめぇ……シュウくん、やめてぇ……」
「姉さんの……すごいっ、こんな大きいおっぱい……」
健二は邪魔な下着をどうにか除けようとするが、ブラジャーの外し方なんて分かるわけもなく、ただ強引に引っ張るばかりで上手く外せない。
「ううっ……! 取れないっ! くそっ、くそっ……!」
「だっ、だめよっ、そんなにしたら壊れちゃう」
焦りながらぎこちなく手を動かすうちに、興奮やもどかしさ、情けなさ、色々な感情がないまぜになったせいか、健二はまたも涙を浮かべていた。
「ううっ……なんで、うっ……ううっ……」
弟の立場を利用して麻奈美に不義理をしようとしたくせに、それが上手くできずに泣いている。山田健二はどうしようもなく哀れな男だった。
本来ならここで麻奈美が弟をはねのければ終わるはずだ。
しかし、この無様さによって、麻奈美の母性が刺激されてしまったことは健二にとって嬉しい誤算である。
「泣かないで、シュウくん……お姉ちゃんのおっぱい、触らせてあげるから……」
泣きじゃくる弟を突き放すことができなかった麻奈美は、自らニットを脱いで白い素肌を晒すと、躊躇いがちに手を後ろへ回してホックを外した。
留めるものが無くなったブラジャーはスルリと抵抗なく脱げ落ちて、豊かに実った二つの白い果実が、健二の目の前で艶しく揺れた。