ある日の気怠い空気に包まれた午後のこと。
神崎家では、誰に阻まれることもなく姉弟がリビングで絡み合っていた。
ソファーに座る弟の上に股がって乗る麻奈美は、しっとりとした吐息をもらしながら、その腕は弟の首に回され、弟の手は肉づきのよい姉の尻を抱きかかえるようにして支えていた。
半端に脱いだ下着は足首にぶら下がり、膝の上まで捲くられたスカートの下では、露わになったヴァギナが弟の肉棒をずっぽりと咥え込んでいる。
二人は繋がったまま、刺激を求めて腰を振るわけでもなく、粘膜が密着する感覚に浸っていた。
まるでこれが自然な形であるかのように、姉弟は性器で結びつき、互いを求め合う。もうこの二人にとって、性行為は日常であった。
同じ場所にさえいれば、言葉にせずとも身体をくっつけて、なにもせずとも濡れそぼってしまう女陰に勃起した男根が潜り込んで結合する。
「あっ……ぁ…………」
麻奈美はしっとりと濡れた吐息をもらしながら、腹の中に弟の存在を感じていた。
ゆったりと収縮する膣肉にしごかれるペニスが、膣内で脈動するのが伝わってくる。
彼女はもう弟との性行為でしかイクことができなくなっていた。
恋人である”ケンくん”がいくら腰を振っても、絶頂にたどり着くことはない。快感はあれど最奧に届かぬまま、いつも相手に合わせて達したフリをして終えるのだった。
それだというのに、弟の肉棒は挿れているだけで、お腹の底から熱くほとばしるような衝動が込み上げてくる。
近親相姦という昏い交わりに囚われた麻奈美。その業は彼女の腹に蟲となって棲みつき、弟のモノが入ってくると蠢きだすのだ。
そして蜜のように甘く蕩けるような快楽を味あわせてくれる。
まるで腹の中が溶けてしまいそうな卑猥な疼きに身を委ねながら、麻奈美はゆっくりと腰をよじらせる。
彼女のふっくらと丸い臀部を掴む弟の手に力がこもったかと思うと、お腹の中をぐぅっと押し上げられるような感覚。
(ぁっ……シュウくん、もうすぐ射精しそうなのね……)
麻奈美も甘やかな陶酔に身を委ねながら、弟と唇を重ね合わせ、緩やかな動きで肉棒をしごき射精を促す。
我慢の限界を迎えたペニスはぎゅっと窄まったかと思うと、つぎの瞬間、熱い精液を亀頭から吐き出した。
(あふっ、熱い精液……子宮の中に入ってきてる……っ)
子宮の中が熱くドロリとした性欲の塊に犯される感覚に押し上げられながら、麻奈美もオーガズムに体を痙攣させ恍惚とした表情を浮かべる。
(あぁっ……子宮が悦んで、排卵してるのがわかる……わたし、きっともうすぐ、弟の赤ちゃんを孕むんだわ……)
それが禁じられた行為であることはわかっていながら、麻奈美の中に不安や後悔といった感情はなかった。
もはや、自分が弟以外の男の子供を産むことなど考えられなかった。
二人は性器を結合したまま、仄昏い幸福に包まれながら、舌を絡ませ、より深く繋がろう口を啜り合う。
「はぁっ……姉さん、姉さん……僕のものになって」
「ちゅっ、んっ……もうっ、お姉ちゃん、とっくに、シュウくんの女になってるわ……」
「じゃあ、アイツとの関係も、もう終わりにしていいよね?」
弟の問いに、麻奈美は優しく微笑んだ。
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ある日の夕暮れ時、麻奈美と山田健二は、神崎家の玄関前で向かい合っていた。
いつも麻奈美と一緒にいるときは幸せそうだった彼の顔は、しかし今はどうしようもない悲壮感によって歪められていた。
「そんなっ、麻奈美ちゃん……どうして! なんで急に別れようなんて言うんだ!? 俺に問題があるなら直すから! そんなこと言わないでくれよ!!」
必死に追いすがろうとする彼に、しかし麻奈美は申し訳なさそうに首を振る。
「ごめんなさい……ケンくんは悪くないの、ぜんぶ私が悪いの……だから、お願い、もう私のことは忘れて……」
「なんで……意味がわからないよ……麻奈美ちゃん……」
認めたくない現実から目を背けようとする元恋人に、麻奈美は一本のUSBメモリを手渡した。
「なに……これ?」
赤黒い夕焼けに染まった麻奈美は、その問いに答えることなく、踵を返して家の中へと消えてしまった。
失意の中、自分の部屋に戻った彼は、手にしたUSBメモリをパソコンに挿すと、その中に動画データが記録されていることに気づく。
そして彼は、どうしようもなく嫌な予感がしながらも、震える手でその動画を開くのだった。